第105話 誕生日の朝と、集まった仲間たち
真希はそういうことにすごく敏感だった。こんなに長く一緒にいて、もう俺のことをよくわかっているのも当然だ。
そういえば……
「ところで、投稿の方はどうなった? まさか忘れてないよな?」
なぜか、真希は冷や汗をかき始めた。その表情の小さな変化が、ますます彼女を怪しく見せた。
「まさか……」
彼女はもう気づいていた。どうやら、自分のやったことに今さらながら気づいたらしい。
「……あなたを驚かせるのに夢中で、忘れちゃった、へへへ……」
どうやらそれが彼女を少し落ち込ませたようだった。ならば、空気を変えるために何かしないと。
何も言わずに、そっと彼女の髪を撫でた。
「気にするな。今日やればいいだろ?」
真希はゆっくりとうなずいたけど、ベッドから起き上がる気配はなかった。
「朝ごはん、作ってやろうか?」
「そうだね。もう遅くなってるし」
何かを思い出したように、彼女は急いでベッドから起き上がった。振り返らずに、まっすぐドアの方へ歩いていった。
その急な態度の変化に少し戸惑った。でも、俺の腹は別のことを優先していた。
きっとまた小説のことを考えすぎたんだろう。そして、どうやら俺も今日はやることがたくさんありそうだ。
ベッドから起きて、部屋を出た。
真希はもうエプロンをつけて、髪を一つにまとめていた。
両親の家にいた時も、一緒に住み始めてからも気づいたことがある。彼女はご機嫌な時に、ああやって髪をまとめるんだ。
そして今日は、間違いなくその日の一つだった。
彼女に近づく前に、テーブルの上に置いてあったスマホが鳴った。
母さんからの電話だった。実は、彼女から電話をもらうのは初めてだった。
真希を見て、電話に出た。出てもいいか確認するかのように。
[もしもし、慧翔。今日はどう?]
[うん。よく眠れたよ。温かい枕の隣で]
俺が何を言っているのかわかるのは真希だけだった。その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔は真っ赤になった。
[それはよかった。二人がどんどん仲良くなってるようで嬉しいわ。また近いうちに遊びに来てね。次の休み、待ってるから]
その口調はとても明るくて、もしかしたらもっと関係が進むことを望んでいるのかもしれないと思った。直接は言わないけど。何しろ、彼女にとって真希はもう娘みたいなものだったから。
[そうするよ。実は明日、真希の家に行くんだ。ちょっと緊張してる……彼女の父親に気に入ってもらえるかどうか]
[お母さんは?]
[彼女? 彼女は……真希をちゃんと守れって言ってたよ。もうずいぶん前だけど]
まだ正式に付き合っていることを伝えていなかった。明日話すべきだろう。
真希を見た。
彼女は戸惑った表情でこちらを見ていた。無理もない、何も話していなかったから。
電話が終わったら、説明を求められるだろう。
[それはよかった。じゃあ、彼女の父親のこと、頑張ってね。あなたなら気持ちを伝えられるはずよ]
[……うん。今からネガティブに考えても仕方ないし]
[その意気よ! じゃあ、また後で]
[うん。父さんと真夜によろしく伝えて]
[もちろん。それと、慧翔。十六歳のお誕生日おめでとう]
母さん……
やっぱり知ってたんだ。
[ありがとう、母さん]
* * *
「一葉さんと何を話してたの? それに、私の母さんのことも聞こえたけど」
案の定、真希は母さんとの会話をよく聞いていた。
今は朝ごはんを食べている。しばらく前から聞くタイミングを待っていたようだ。どうやら今がその時だと決めたらしい。
「うん……いろいろ話したよ。君のことを聞かれたし、次の休みに遊びに来てほしいって言ってた」
真希はいつも以上に誇らしげに微笑んだ。
「当然でしょ。私の方があなたより好かれてるんだから。ふふふ〜」
なぜか、それが少し引っかかった。
何しろ、俺は彼女の息子なんだから。
でも同時に、母さんはただ俺たちを少し後押ししたいだけなんだろうと確信していた。
まあ、このままでいてくれるなら、それで満足だと思う。
時間は穏やかに過ぎていった。しばらくして、チャイムが鳴った。
出ようかと思ったけど、真希が先に立った。まるで誰かが来るのを待っていたかのように。
まさか……
彼女がドアを開けると、予想通り、聞き覚えのある二人の声が聞こえてきた。
「じょじょじょ〜〜、お誕生日の人に会いに来たよ。ね、坂本さん?」
その声はドアの向こうから聞こえた。実際、予想はしていたけど、どうしてこんなことになったのかは皆目見当がつかなかった。
「雨宮と坂本さん? 間違いないよな?」
二人は一瞬黙り込んだ。でも、その代わりに、後ろから腕が回された。
その感触には覚えがあった。
念のため振り返ると、そこに彼女がいた。
「真夜?! なんでここにいるんだ?」
彼女は驚いたようだった。俺が今言ったことが、まったく予想外だったかのように。
「慧翔くん、彼女が何日か泊まりたいって言うから、いいよって言ったの」
「お兄ちゃん! おはよう、お誕生日おめでとう!」
彼女は俺をぎゅっと抱きしめて、離す気配がなかった。頬をすり寄せながら。
「離せよ、窒息する」
「やだ、にゃ〜〜」
真希はそんな俺たちを見て、少し笑っていた。精神的に大人で、何をすべきかわかっている人の、あの落ち着いた空気だった。だから何も文句は言わなかった。でも、招待客はあと二人いた。
「へえ……君が和泉くんの妹さんか……」
その口調は少し驚いているようだった。まるで玄関で見つけたかのように。
「やっぱり思ってたよ。すごく似てる。いや、本当に瓜二つだね」
そこまで大げさに言わなくても……
「そうだね、雨宮くん。本当に似てるよ」
坂本さんまで?
くそっ……どうやら今日は誰にも逆らえないようだ。
ん?
「そのケーキは? まさか……」
「そう! みんなで食べようと思って……あ、お誕生日おめでとう、和泉くん!」
最後の部分はかなり急に付け足したように聞こえた……まあいい。
今は何もないよりマシだ。来てくれたことに感謝すべきだろう。
「来てくれてありがとう。来ると思ってたよ」
二人は顔を見合わせた。一人は俺の予感に首を振った。
「和泉、お誕生日おめでとう。いい経験をたくさんするといいな。それと、俺にも彼女ができたって祝福してほしい」
「え?」
なぜか、全員が坂本さんの方を向いた。彼女が何か知っている可能性があるかのように。でも、彼女も初めて聞いたかのように驚いていた。
「で、どんな子なんだ? どこにいる? まさか紹介しないなんて言わないよな?」
真希が雨宮の宣言にすぐ反応した。でも彼はいつもの誇らしげな笑みを浮かべただけだった。
「くくくく……彼女はこの世界の人間じゃない。別の世界の住人なんだ」
その答えで、すぐにピンときた。最近ライトノベルを読みすぎて、どうやらフィクションのヒロインを彼女候補だと思い始めたらしい。
全員が同じ結論に達したかはわからないけど、その話題はなかったことのように無視することにした。
「それで、真昼ちゃん、材料は持ってきた?」
それは真希の小さな呟きで、かすかにしか聞こえなかった。でも、坂本さんに向けて言っているのは明らかだったから、無視することにした。
「おい、無視するなよ!」
雨宮が叫んだけど、誰の注意も引かなかった。そう、また無視された。そして、ソファに倒れ込んで、敗北の表情を浮かべていた。
もしかしたら……相手をしてやってもいいかもしれない。




