第102話 まだ消えない、あのプラトニックな恋 2
これはチャンスかもしれない。彼女なら、俺がどこを改善すべきか知っているかもしれないし、意見を聞かせてくれるかもしれない。
「……和泉くん、付き合ってる人とかい……」
「優希さん、ちょっと手伝ってくれないか?」
彼女の言葉は俺の言葉に遮られた。
「ごめん、何か言った?」
彼女はすぐに首を振った。
「ううん、気にしないで。大したことじゃないから。何を手伝えばいいの?」
質問する前に、自分が関わっていることは言わないほうがいいと決めた。知り合いの小説の話だということにしよう。うん、それがいい。どう切り出すか、素早く考えないと。
「小説、好きだよな?」
彼女はすぐに顔を赤らめた。まるで隠していたことを見つかったかのように。
「えっと……そうだよ。すごく好き。特にファンタジーが」
間違いなく、これはいい機会だった。聞くなら今しかない。
「知り合いが最近小説を公開したんだけど、どう思うか聞きたいんだ」
彼女の目が輝き始めた。
「うん! 読みたい。新しい小説なら、いつでも読むよ」
その声は予想以上に熱意に満ちていた。
これでもう迷いはなかった。
急いでスマホを取り出した。
「リンクを送るよ、いいか?」
彼女はうなずいて、待ちきれない様子で俺のメッセージを待った。そして送ると、一秒も迷わずに開いた。
「わあ、すごい。二話しかないのに……評価を見てみよう……」
彼女の顔色が急速に青ざめた。それが気になった。でも、すぐに一言を漏らした。
「すごい……たった二話で二千ポイント以上も……」
「え? 二千ポイント以上?!」
どうして四十八時間以内にそんな数字に到達できるんだ?
宣伝も一切していない小説なのに、驚くべきことだった。
優希さんは数秒間、画面を見つめたまま、まだ驚いていた。でも、さらに大きな笑みが浮かんだ。
「すごい。新作なのに……もっと読みたくなるよ」
それはよかった。でも、これだけのポイントを獲得するのにどれだけの読者がついたのか、今更ながら気になってきた……
それ以上何も言わずに、彼女は読み始めた。数分間、目を画面から離さず、ついに安堵のため息をついた。
「ああ……もっと読みたかったのに。次の話はいつ出るの?」
「えっと……今日、次の話を出すと思う。どうだった?」
「間違いなく……すごい。こんなの初めて読んだ。言葉にできない……」
「かなり驚いたみたいだな」
優希さんはとても嬉しそうだった。その笑顔を見て、俺も驚いた。
「うん……とにかくすごい。それしか言えない。あの二話には、たくさんの成長と苦しみと乗り越えがあって、続きを読みたくなるんだよ」
「そうか。気に入ってくれてよかった。感想を伝えておくよ」
よかった。どうやら真希の話はみんなに気に入られている。
部屋に戻ったら、これの請求をしないと。
「どこかのコンテストに応募してみたら? ライトノベルにだってなれるかもしれないよ」
ライトノベル、か……
いや。真希の野心を知っているから、それだけじゃ彼女は満足しないだろう。
彼女の望みはよくわかっている。間違いなく断言できる。
今は、そんな風に言ってもらえただけで十分だった。
「ありがとう、優希さん。そろそろ帰らないと。もう暗くなってきた」
彼女はすぐに理解して、笑顔でうなずいた。
「大したことじゃないよ。ほら、送るね」
「いや、大丈夫。ここまでの道は覚えたから、一人で帰れるよ。でも……せっかくだからお願いしようかな」
うん、最後の瞬間にそう決めた。彼女が送ってくれるなら、それでいい。
「うん、一緒に行こう。何かあったら、私が許さないから」
それ以上何も言わずに、家を出た。
実際のところ、大したことはなかった。ただ、見覚えのある道を見つけるまで一緒に歩けばよかった。少なくとも、そう思っていた。
優希さんはかなり満足そうだった。理由はよくわからなかったけど、気まずい沈黙の中にいるよりは、彼女がそうしているのを見ている方がいいと思った。
しばらく歩いて、ようやく道がわかった。
「ここで大丈夫だよ。ありがとう、優希さん」
「そう? わかった……楽しかったよ」
彼女の顔が少し赤くなり始めた。きっと夕日のせいだろう。
「うん。物語を読んでる時、すごく熱中してたよな。その反応がちょっと面白かった」
「ふふふ、そうだね。でも、面白いなら、気に入ってないふりはできなかったよ。本当に良かった。和泉くんはどんな小説を書くの?」
「えっと……それは秘密。優希さんは? 小説とか書くの?」
一瞬、彼女の目に失望と寂しさが浮かんだ。でも笑顔は消えなかった。
「書くのは得意じゃないんだ。一度挑戦したけど、うまく書けなくて。えへへ」
そうか……小説に詳しいから、書いてるのかと思った。でも、そうじゃなかったみたいだ。
「そっか。でも、批評は上手いんだな。もう一度挑戦してみたら? 初めて書いたのはいつ?」
彼女は真剣にその質問を考えてから答えた。
「最後に書いたのは二年前かな。そうだね……もう一度やってみよう。ありがとう、和泉くん」
そう言って、小さく笑った。何か決心したように。
「次はもっと会いたいな。じゃあね」
「え? あ……うん。またな、優希さん」
それ以上何も言わずに、俺は自分の部屋へ向かった。どうやらここからそんなに遠くないらしい。
あ、そうだ。
「優太によろしく伝えてくれ」
「うん。きっとまた来るのを待ってるよ。いつでも来ていいからね」
「ああ、また」
これで本当にお別れだ。
ただの「またね」。
たぶん明日、学校で会うだろう。
へへへ。
真希が嫉妬しないといいけど。
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