↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/47

44

遅くなって大変申し訳ございません。



チリンチリン


美容室の扉から出てきたのは汚い無精ひげの無くなった小綺麗な男だ。掻けばフケが飛んできそうなぼさぼさの不清潔な髪ではなく、さっぱりとした髪形の艶やかな茶髪の男だ。


そう、まごうことなき犬養である。


おい、さっぱりし過ぎだろう。シンプルなジーパンと白いブラウスの組み合わせが渋い顔をしても格好いい男の犬養にマッチしている。

整えたらイケメンって少女漫画みたいな男だな。

「さっぱりしましたね。あと、これをお渡ししておきます。つけた方が宜しいかと。」

私はサングラスを渡した。

「は?」

「眩しいでしょう?目の色素が薄いですから紫外線に弱かったりするはずです。」

「お、おぉ、あ、ありがとよ。」

「では、行きますよ。」

「何処に行くんだ?」

「言ったじゃないですか、スーパーですよ。」

「わかった。」

ん?やけに素直だな。

椿は歩き始めた。その横をサングラスをかけた犬養が歩く。

っくそ。イケメンだな。おい。

目は鋭く、鼻がスッと通っておりより顔がシャープな印象を受ける。これはモテるな。この顔を晒せば金儲け出来そうだな。女はコバエのように集ってきそうだしな。面倒くさそうだな。まぁ、でも、私に振り回されているところは原点だなぁ。逆に()()()()()をしてくれたら好みだな。でも、こいつが()()()()()をしそうにないしな。期待するだけ無駄だな。

「おい、今失礼なことを考えなかったか?」

「さぁ、気のせいでしょう。」

こいつ、エスパーか?

「ふん。そうだ、今日の昼飯はなんだ?」

「そうですね。取り敢えず、犬養さんの料理スキルを上げていただきます。みそ汁くらいは作れますよね?」

「料理は出来る。」

「そうですか。そういえば、昨日さくじつの洗濯物を仕舞ったのは犬養さんですか?」

「俺だが。」

間も空いていない。やましいことは何もないな。というよりも、この男、生活能力は主婦並み高いはずだ。なのに、だ。

「そうですか。あ、そうそう、お昼ご飯の話でしたね。おかずはスーパーの特売とかのものでしょうか。特に決まっていませんね。懐に余裕があるのならば毎日何を食べてもいいと思いますが。」

「わかった。」

まぁ、雪子の調査次第だな。まぁ、不思議生物にこの世界が勝てるとは思えないがな。索敵、探索、情報収集諸々はうちの雪子の得意分野であり、最大の武器だ。その道のエリートだ。

「足りないものが多いので、アパートと行き来しますが、宜しいですね?」

「それは、いいが、それは効率が悪い。レンタルするぞ。」

「何をですか?」

「車だろうが。」

「免許証なんて持っていたんですか?」

「財布に入っている。」

財布持ってきてんだ。ガチの手ぶらかと思ってたわ。

「わかりました。では、お言葉に甘えてレンタルしに行きましょう。で、何処にあるんですか?」

「こっちだ。」

そう言って犬養は迷いのない足取りで前を先導し始めた。


********


シャンパンゴールドの軽自動車を隣で軽快に走らせている犬養は世の女の子が見たらキュンキュンすることだろう。が、椿は生憎そんな感性は持ち合わせていないのだ。そんなことよりも車に久々に乗ったなーと考えているくらいだ。後部座席ではクロが寝て、雪子が周りの状態の察知と犬養が椿に何かしないか見張っている。車に初めて乗った時は雪子は唖然とクロはキャッキャはしゃいでいた。しかし、二人の印象はこうだろう。クロは馬がいなくとも動く揺れのない馬車の様な未知の物にはしゃぎ、雪子はこちらの文明度に唖然としている。といったところか。普段車の影に潜ったり追ったりするだけで、乗ったことがなかったのだ。まぁ、そちらのほうが唖然とする人が多いだろう。しかし、それも一瞬のことで自分たちが普通に走るよりも遅い乗り物なので結局揺れのない馬車としか思っていないだろう。

「でだ。スーパーっつったらこっちだよな。あそこのSスーパーだろ?」

「犬養さんの家の最寄りのスーパーでいいですよ。何を売っているかわかったらいいので。」

「わかった。」

犬養はそう言ってハンドルを切った。




後ろでは雪子が目を爛々と光らせているが。



********



うーん。普通のスーパーだな。特別何かが安いわけじゃない。まぁ、少しだけ品がいいかな。

「あ、これですね。あとこれも。」

私はポンポコカートに商品を買うものを入れていった。私の家では全く必要でないものも入れていく。まぁ、うちは魔法と久遠がいるからな。

洗剤とか、一応G殺しとか。あとは、犬養が頻繁に掃除をしなさそうなので、奇跡的に売ってあった銅の排水溝の蓋を買った。お金は犬養に払ってもらう。それと、そのお金を借金に当てろと思ってしまうのは私だけかな?

「おい。もうよくないか?」

「そうですね。これくらいでいいでしょう。」

食材はあまり買っていない。

私が作ったおかず共がいるからな。冷蔵庫も一人暮らしの小さいものだったからそこまで入らないだろう。

取り敢えず冷蔵庫には卵、醤油、焼肉のたれ、ごましゃぶ、マーガリン、マヨネーズがあればいいのだ。卵は茹でても良し生でも良し焼いても良しの万能な食糧なのだ。ご飯と卵と醤油があれば一応炭水化物とタンパク質は取れるのでエネルギー源にはなるのだ。腹持ちがいいのも卵の利点だ。焼肉のたれはご飯が寂しい時にかけると美味い。ただそれだけだ。ごましゃぶはドレッシングにも使えるし、サラダにかけても美味しいのだ。私の選んだ以外のごましゃぶはなんかやたらと甘かったりするのでお勧めはしない。マーガリンはパンにぬってもいいし、油代わりにも使えるからだ。マヨネーズは言わずもがな。

「あとは、食パンとか。食べないですか?」

「パンか。食うな。」

食うのって朝だよな?

「じゃあ、これで会計に行きましょう。」

こいつってうちに借金しているクセに何気に金もってんだよなぁ。


会計を済ませた後、さっさと袋に詰め込みアパートに戻った。


*******



アパートのドアを開けると雪子とクロがお座りをして玄関で待っていた。

あかん、可愛い。

この世界を容易に滅ぼせるくらいの強さなんだが、そんなんあっても滅茶苦茶可愛い。

椿の能面が一気にデレっとした、だらしない顔になりそれを見ていた犬養は気味の悪そうな顔をしている。

「クロ、雪子良い子にしてたか?」

「にゃー」

《おかえりなさいませ。この部屋は調査済みです。なんならその男の素性も全て調べております。》

さっすが雪子。

念話で得意げにさらりと暴露された内容はえげつないものだが、情報を手に入れるだけなので私達にとってはただの日常に過ぎない。

「ワン!」

うん。

クロはまだ戦闘要員かなぁ?

「おい、狭いんだからさっさと入れ。」

「すみません。」

私はあ、やべ。と思い、靴を脱いでさっさと部屋に上がった。


雪子は主に対する犬養の態度にイラっとし睨んでいる。


私は買ったものをどんどん仕舞っていく。

この家ヤバいくらい物がないので、こいつどうやって今まで生きてきたんだよと思ったくらいだ。ま、それも、雪子の報告を聞いたらわかることだが。

「おい。これはどうする?」

てめぇの家なんだから自分でどうにかしろよ。

と、思った私は何も悪くない筈。

「柔軟剤は液漏れするとベタベタするので、新聞紙を敷いたプラのアレにその他諸々と一緒に入れてください。」

私は適当に買っておいたプラスチックのカゴを指さしながら言った。

犬養は「その他諸々?」と?マークを頭の上に浮かべながら一応納得したのか作業に戻った。


「はぁ~」

マジでおめぇの家だろ。

ってか、こいつの金の出処がどこだよ。

マジで謎だわ。

《崇高なる我が主にこの様なことをさせておいて………許せん》

おいおい、雪子さんや思いが強すぎて念話じゃなくてスピリチュアルパス(スピリチュアルパスとは従魔契約で結んだ魂との繋がりだ)から思考が駄々洩れですぜ。

《おー、雪子さんや?》

《あ、主!?な、何用でしょうか?》

動揺し過ぎ。

《思考が駄々洩れですぜ》

《な!も、申し訳》

《あー、いいって。言いたいことはめっちゃわかるから。で、報告を聞きたいんだけど?》

私は作業をしながら聞くことにした。

結構買ったので時間がかかるのだ。開封したりするのでな。

《畏まりました。では、報告を致します。》











私は雪子の報告を聞きながら作業をしていた手を思わず止めた。

その時の椿の顔はいつもの無表情ではなく、どこか冷酷さを秘めた顔をしていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。