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おはようございます。

現在日の出前になります。私の真下には富士山の山頂にいる登山客と登山家らが沢山います。彼らの目的は富士山から見る日の出でしょう。と言っても私も同じ目的だけどね。

軽装備過ぎる私はかなり目立つこと間違いなしなので、一応魔法で姿を隠して空中に胡坐をかいております。いやー、いい汗かいたね。家から姿を隠しながら富士山までダッシュって気持ちいいね。格好は中学の体育祭で貰ったTシャツと下は中学の時の体操ズボン。勿論半パンだ。大した汗もかけないこの身体の体力は可笑しい。と我ながら思う。

身体の異常さに笑っていると、下から、わっ!という歓声が聞こえてきた。それと同時に目の前が眩しくなる。

「日の出だ。」

綺麗な雲海の下から眩しいお日様が顔を出す。その光景はとても感動する。今日も平和な日本で平和な一日が始まりそうだ。こういったところを見ると昔の人が太陽を信仰の対象として崇めたのも頷ける。

「おはよう。」

私は異世界で師事してもらった人たちを思い浮かべながらお日様に向かって挨拶をした。そして、私は伸びをしてから富士山を駆け下りた。


********


「ただいまー。」

ドタドタと家の中からかけてくるのは私の家族たちだ。Sランク以上の魔物と言われる従魔達が何故こんなにも足音をたてているかというと、どうやら誰が一番早く私におかえりと言うという競争をしているようだ。そのためクロ、雪子、マリアが互いの足を引っ張りながらこちらに来ているようだ。しかし、大人な久遠は廊下の天井を伝って私の頭に落ちてきた。

「お、ただいま。」

「ぴ。」

可愛いおかえりを言ってくれる久遠は途轍もなく可愛い。思わず抱き着く。

《あー!》

《あぁ…》

「ワフ」

私に抱き着かれている久遠を見てマリア、雪子、クロの順番に残念そうな声を出す。私はそんな従魔達の姿に思わずにんまりとしてしまう。嬉しい。

「フハハ!さぁ、私の腕の中に入ってきなさい!」

その言葉に従魔達がすかさず突っ込んでくる。私は「へへ」と笑いながら抱き締めた。朝から幸せだ。そうだ。今度権三郎も呼ぼうかな。

「じゃあ、ご飯にしようか。あー、腹減ったー。」

《お手伝いできずに申し訳ございません。》

雪子が謝ってくる。多分、自分の主の食事も用意できないことを残念に思っているのだろう。

「んー。別にいいんじゃない?雪子には普段役に立ってもらってるしね。今度家族だけで過ごせる空間とか作ってみる?あ、別に空間じゃなくて島でもいっか。まぁ、時間はかかりそうだけど。好きな家を建てれるって素晴らしいね。」

《マスター…》

「兎に角、お腹減ったからご飯を食べよう。マリアと一緒にお皿出しといて。私は手を洗ってくる。」

《わかりました。》

《はーい!》

私は洗面所で手と顔を洗った。

リビングでは机の上に皿を並べているマリアと雪子がいた。

その光景を見ているだけで何とも幸せな気持ちになる。こう、ぽやぽやと温かい成分が出てきている感じがする。

机の上にドンとサンドイッチが大量に入った皿を置いた。飲み物もポンポン出し手を合わせる。

「今日はサンドイッチね。飲み物は各自自由で。じゃあ、手を合わせて。」

私とマリアだけ手を合わせる。

「いただきます!」

《《いただきます》》

「ガウ」


こうして町田家の朝は始まる。


********


「おはようございます。」

「おう。おはよう。」

誰に挨拶をしているかって?

そりゃ社長に決まってんだろ。あの後も律義に出勤日に朝に迎えに来てくれるんだもんな。運転している山本さんに申し訳なく思うよ。社長こと修は隣でペチャクチャと喋っている。殆どがどうでもいい内容だった。

「今朝のニュースみたか?大手のA菓子会社が倒産したらしいぞ。」

へー

「最近不審者が多いらしいな。特に駅で痴漢が出たらしいぞ。気を付けろよ。」

へー

「この間動物虐待があったらしいぞ。しかも、この近くだ。お前の家族たちも気をつけろよ。」

む、それは許せん。

「この歌手知ってるか?覚醒剤で捕まったってよ。お前もヤクなんかに手ぇ出すなよ。勿論周りも出さないように見張っとけよ。可笑しな言動の奴がいたらすぐに言え。」


と、こんな感じで最近のことをまるで知ったばかりのことを使いたい子供みたいだ。が、ニュースを見ない私なのでこういったことを話してくれることは正直言って助かる。人の話を直接聞いた方が記憶に残るからな。

「社長。着きました。」

「おう。ご苦労。帰りも頼むわ。」

「いってらっしゃいませ。」

山本さんが綺麗な礼をして見送る。うわ、かっけー。なんか、あれだな。バトラーとかめっちゃ似合いそう。そんで家令ハウススチュワードに指導されているところとか想像すると萌えるな。なんかこうグッとくるものがある。

「町田さんもいってっらっしゃいませ。」

「はい。行ってきます。」

今日は雪子達はお留守番だ。というより各々自由行動といったところか。雪子とクロは猫と子犬サイズにマリアと久遠は幻術と擬態で何とかやってくれるだろう。

私は物置をロッカールームに改装した部屋に向かう。廊下を歩いているとムサイ男たちが挨拶をしてくる。まぁ、しかし、この間まで私に反発的だったり、どうでもよかったりした奴が一杯いた。

「……沢山いたはずなんだがなぁ。」

そう思わずぽつりとつぶやいてしまうのは仕方のないことだろう。

何故ならこの間の椿の無双ぶりを見て逆らってはいけない相手だと認識した奴らが全員私に向かって挨拶してくる。それは、この裏社会に身を置く人間として力のある人物には逆らわないということを刷り込まれている本能に近いもので椿を見ているからだ。

ロッカールームに着いた椿は荷物を置いてエプロンを着ける。何故エプロンかというと、仕事をする際基本的に何故か水仕事が多い。そう、何故かだ。書類仕事は基本的にまわってこない運命らしい。悲しいかな。


さて、今日も事務という名の家事を…


ブーブー


ん?この音と振動はスマホか。

「はい、町田です。」

『あ、もしもし、営業部の吉田と言います。』

「はい。吉田さんですね。それで、何の御用でしょうか?」

『実はうちの営業部が厄介な客に引っかかってしまったようで町田さんにサポートとして行ってもらえたらなぁー。と、思っていまして。あ、社長には許可をとってあるんで。』

「営業、ですか。今日も特に用事はないのでいいですよ。」

その厄介な客ってのが面白そうってのもあるけど。

『え、あ、ホントっすか!ありがとうございます!じゃあ、早速今日の13時に一回の入り口で待っててください!車で迎えに行きますんで!ホントありがとうございます!』

「いえ、大丈夫ですよ。」

『助かります!じゃあ、また13時にお願い致します!失礼しました!』


プープープー


本当に嬉しそうだったな。

私は通話の切れたスマホを見る。

しっかし、ここは飽きないかもしれないなぁ。表社会では絶対にこない危険な案件がわんさかと……ふふふ。あー、楽しそう。

私は仕事をこれから少し早く終わらせるという事もなくいつも暇なのでいつも通りにやれば余裕で13時には間に合うだろう。最初のトイレ掃除は久遠にやってもらったけど、それ以降は全て私の手でやっている。それでも誰かが病気になってもらったら衛生管理をしていた私に矛先が向かうのが嫌なので、徹底除菌を心掛けている。菌は熱殺菌が基本でそれでも駄目なら、自分の魔法を使う。やり過ぎだって?失礼な。仕事が丁寧だと言ってほしいね。水回りもぬめりと臭いが酷かったので久遠に掃除してもらってからは生活魔法を発明したくらいだ。ははは。凄いだろう?


********






13時 ビル入り口


腕時計を確認すると13時ジャストだ。

「町田さん。」

横から近付いてくる奴がいるなと思ったらお前が吉田の部下か?

「はい。」

「吉田さんの部下の三石みいしタカトと言います。三石と呼んで下さい。」

「初めまして町田椿と申します。」

三石はこの会社に居たっけ?みたいななよっとした外見の男の子だ。一言で言えば地味だ。私は仲間だと思った。まさか同族でも見つけづらいとは思わなかったが。

「じゃ、じゃあ、説明は移動しながらにします。表に車を停めているのでそれに乗っていきましょう。」

「わかりました。」

私達は表の車に乗り込んだ。車は想像通りの大きい怪しげな雰囲気がプンプンするバンだった。

あからさますぎね?

「運転しているのが、僕の同僚の椎名しいなです。」

「…うす。」

運転席には大きな身体の顔の厳つい男だ。これは無口キャラかな?

「彼はあまり喋らないので気にしないでください。」

「わかりました。」

にしてもこの会社にしてはまともそうな社員だな。

「今から行くのは営業という名のまぁ、取り立てですね。このメンバーで威圧感が出るのかというとそれは椎名が出してくれるので僕にも自然と威圧感があるんですよね。そして、今から行く取り立て先はZ市にあるツブレ荘っていうこれまた縁起の悪い名前に住んでいる男のところですね。名前は犬養いぬかい剛志つよし32歳。フリーターですね。聞こえがいい風に言っていますが、無職の32歳独身男ですね。」

ボロクソだな。

「何が問題だったんですか?」

「そうだなぁ、犬養は幼少期から近所の古武術道場に通っています。しかも、才能があったのかかなりの腕前です。見た目は貧相な平凡な男なんですが、よく見れば極限まで引き絞った身体をしていて、何よりも物怖じしないんですよ。ハッキリ言いますと、椎名よりも腕が立ち、恫喝も脅迫まがいのことも通じないので、圧倒的の強者の町田さんに協力してもらおうということになったんですよ。相手が攻撃してきたらなす術が全くないので怖いんですよねぇ。はははっ。」

開き直って言う事じゃねぇな。

男ならもっとびしっとしろよ。

「そうですか。わかりました。頑張ってみます。」

「お願い致します。」


具体的に何をしたらいいのかよくわかっていないが、相手を見てから考えたらいいだろう。



あと、正直言って事務員(仮)に頼む仕事じゃねぇだろ。こんにゃろう。

********


それから数十分車を走らせて着いたのがその名の通りツブレ荘だ。まじで縁起わりぃな。誰だよこんなの付けたの。ツブレ荘はやはりその名の通り潰れかけのオンボロアパートだ。

「ここです。犬養はこの部屋に住んでいます。」

一階の声の良く通りそうなドアの目の前で三石が言った。

「では、呼びますのでちょっと待っていて下さい。」

そういうと三石はドアの横にある昔ながらのインターホンを押した。

ブーという音が鳴る。が、中からは何も聞こえない。多分寝ているのだろう。中に生命反応がある。

「あれ~?でないな。」


ブーブーブーーーーーー


「おーい、犬養さーん!」

三石がレトロなインターホンを鳴らしながら犬養を呼ぶ。地味で無害そうな男でもこうすると立派な借金の取り立てに見えるな。

すると、中からドタバタと音が聞こえてきた。

「……うるせぇ。」

中から出てきたのは確かに貧相な身体つきに見える見かけの筋肉を絞った男だ。低血圧なのか寝起きの機嫌が最悪だ。顔はそこらにいそうな中年男に見える。実際の年を聞いていてもちょっとした老け顔に見えるな。髪がぼさぼさで目が見えない。時折前髪の隙間から覗く目は油断できない男の目をしている。成程こりゃ強いわけだ。

「朝からなんだ。」

もう昼の2時前なのだが。

「お昼ですよ。2時前です。」

「そうか。俺にとっては朝だ。」

「さっきまで寝てたんですよね?全然でないのでちょっと苛立ちましたよ。おっと、そんなことよりも、早く借金を返してもらえませんかね。こっちだって忙しいんですよ。犬養さんだけに構っている暇はないんです。」

「そうか。じゃあ、帰れ。今回も金は無理だ。」

この犬養も凄いが、この場面が凄いと私は感動している。まるで映画の様ではないか。その現場を体験できるなど凄くワクワク滾るわー。

「それ毎回言っていますよね?さっさと出してくれないと実力行使に出ちゃいますよ。」

「そこのデカ物では俺の相手なんぞ出来ねぇだろうが。」

「あぁ、椎名じゃないですよ。今回は我が社の最強をお連れいたしましたので。」

「は?誰だよ。」

もしかして、この男私に気付いとらんのかい。

「町田さん。」

お、出番か。

私は一歩前に出た。犬養はこちらにやっと気づいたようで驚いている。

「初めまして。町田椿と申します。以後お見知りおきを。」

軽く会釈をする。

「……女か。」

苦虫を嚙み潰したような顔をするが女で何が悪い。

「生物学上そう言われておりますね。」

「理系な返しをありがとうございます。町田さん。」

でしょ。

「で、さっきなんて言ったの?」

「我が社の最強です。」

「これが?」

おいおい。もしかして疑ってんのか?確かに身のこなしに隙は無いが、私の強さを見抜く目はないようだな。あれか、存在が大きすぎて見えないってことかね。

「そうですよ。町田さんは凄いんですよ。いやね、この間社員旅行で大会をやったんです。大会名は忘れたんですけど、うちの会社は腕っ節も良くなきゃいけないんで技術も力の強さも粒ぞろいなんですよ。でもね、この町田さんはその粒ぞろいの屈強な男たちの中の紅一点で圧勝したんですよ。いやー、あの動きは俺にはできないですよ。最後の決勝戦なんか見物でしたね。決勝戦は靴を取られていた町田さんでしたけど、格好良く裸足で圧勝してましたからね。決勝戦の相手は元々我が社で最も強い男と言われていたんですけどね。その人は我が社の重役なんですけど、まるでアクションスターの様な戦い方をするんですけど、力も強くて技術も最高。それを軽々と破った町田さんは晴れて我が社の最強って訳ですよ。」

良く喋るな。

それに、会社の重役が強いってどんな会社よ。

「良く喋る。」

犬養もそう思っていたようだ。

「え?ありがとうございます。」

え、今の誉め言葉じゃなかったでしょ。明らかに。しかも、マジで照れてやがるこの男。三石タカト。恐ろしい男だ。

「……はぁ。まぁ、取り敢えず帰れ。」

犬養がドアを閉めようとするとすかさず三石がドアを掴む。

そして、ドアの開け閉めの攻防戦が……始まったが、三石が案の定力負けしたな。

「いってぇ。指挟んだ。」

三石は素の口調に戻って手をフーフーと息を吹きかけている。

というか、私が来た意味ってある?ちょっと活用方法間違えてんじゃないのかい?

「……三石さん。私、この周辺に用があるので車で送ってもらわなくても結構です。それと、今日はこのまま直帰しますと社長に伝えてください。時間がかかる用事なので。では、お疲れさまでした。」

「へ?え、あ、はい。お疲れさまでした。」

「……うす。」

椎名、君はお疲れぐらい言った方がいいと思うよ。

「では。失礼致します。」


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