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さてと、何処まで話そうかな。弟子たちは将来あれになってもらうけど、無関係の人間にねぇ、どうしよっかなぁ。
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椿が自室でダラダラしながらポテチを貪っている時、会場では第六戦目が行われようとしていた。
≪第六戦目は田中颯太対山田大和です!≫
≪おお、田中さんっすか。楽しみっすね。やっぱりあのアクションスターみたいな動きが実戦で出来るってなかなかっすよね。それに対して影の薄さを利用した戦い方の山田さんは忍者みたいで恰好良いっす。どちらも男の憧れる戦い方っす。≫
≪そうですね。そうすると、この試合は体術戦になりそうですね。≫
≪そうっすねー。実に楽しみっす。≫
≪おおっと!そろそろ時間が迫ってまいりました!それでは……
レディィィィィ…ファイトッ!≫
カァァァァァァァンンン!!
「ふっ!」
「…っ」
田中が最初に前傾姿勢のまま突っ込んでいった。それに対抗して山田も鋭く息をしながら前に飛び出す。田中が突きを放つと山田はその伸び切った腕を掴んで背負い投げをした。決まったかと思うと、田中はその体躯に見合わず身軽な動きでそのまま地に着地する。田中が肘打ちをすると山田が身を翻して躱す。
ジャリ
と、両者の足音がする。今度は山田が攻め入る。木の小刀で相手の鳩尾を的確に狙った攻撃だ。田中はひょいひょいと躱す。そして、手でいなす。
パシッ パンッ パンッ パンッ
時に地面に転がり、アクロバティックな動きで観戦者たちを魅入らせる。時折聞こえる音は肌を打つ音。
田中は中年だが、実戦でも戦える猛者だ。
「やるな、あ!」
「…っ!」
度々言葉を交えながら体術戦を強いる。
それにしても、こいつ喋らねぇな。しかし、体術は俺と張り合えるくらいに上手い。だが、これでもあの町田さんには勝てねぇんだよな。こう、ビジョンっつうもんが浮かばねぇんだよ。まず、あの人の負けるビジョンすら浮かばねぇ。浮かんだら浮かんだで怖いけどな。それに、不思議なのがあのペットたちと才原組長だな。ペットは人間並みの知能かそれ以上だな。多分俺よりも断然賢い。それと才原組長だが、今朝会ったら矢鱈と動きが良くなってんじゃねぇかよ。何か怪しい薬でも飲んだんか(←正解)と思って周りに聞きまくったが、昨晩町田さんと飲み明かしたってんだからよ。俺はまさか町田さんとあの才原組長がただならぬ関係かと思ってしまったぜ。しかし、町田さんは老け専なのか?なかなか他人には喋れねぇ好みだと思ったがよぉ。流石に才原組長を狙うのはやめといた方がいいんじゃねぇかと思うんだがな。
と、半分正解半分盛大な間違いをしていた。田中は考えている余裕があったが、実は山田には全く余裕がなかった。それは覆せない経験の差でもあった。そして、田中は思考を打ち止めると、山田との勝負に決着をつけた。
「うぉぅらっ!!」
「っがはっ!!」
体術の途中でフェイントとして放っていた鳩尾へのパンチを強くすると、フェイントだと思っていたパンチに防御が疎かになっていた山田はまともにくらってしまった。
「げほっ、」
「どうする?」
勿論この場でのこの言葉は降参するかしないかの問いである。
「げほっごほっ、はぁ、はぁ、はぁ、降参、する。」
現在山田の顔の前には田中の武骨な大きな拳がある。これはもう降参というしかない。山田の息も切れ切れで先程のパンチもなかなか効いている。
「わかった。おい!降参するってよ!」
田中は実況に向けてそう叫んだ。
≪山田選手降参です!試合終了~~~~~~~!!!!!≫
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今度田中のおっさんに体術教えてもらおうかな。一応自分に制限を着けてやらないとだけど。
それにしても、
「……ポッキーがうめぇ。」
勘違いしそうになるが、椿は離れにいる。そこでコンビニで爆買いしたお菓子を貪って試合風景を置いてきた魔道具で観戦している。
じゃがりこの昔のCMでやっていたあのリズムでポッキーを貪る。
「……悩ましい。」
椿はいつも以上に真剣な表情で考え出す。
「入るぞ。」
「……うん。」
スッ
障子が開けられると、才原が入ってきた。才原はいつも以上に真剣な表情の椿を見て何かあったのかと気を引き締めた。
「どうした?」
真剣な表情、真剣な声で才原は椿に聞いた。
「…結構な問題だと思うんだよねぇ。」
「……お前がそういうなんてな。で、何があったんだ?」
「うん。実は、
スナック菓子ってめっちゃ歯に埋まって、しかも、舌でとろうとしたら、舌がめっちゃ攣るんだよ。これって、結構な問題だと思うんだよね。」
「…」
聞いた俺が馬鹿だった。
真剣な椿はレアだが、それでも阿呆なのは変わらなかった。そして、くだらない。くだらないことを真剣な表情で考えることこそが椿クオリティだ。
「……くだらんことを真剣な表情で考えるな。それと些末すぎる問題だろうが。」
「問題だよ!歯を磨きたくないのに歯を磨かなくちゃいけなくなるんだよ!これは死活問題だよ!」
「いや、そんなことよりお前次試合だろうが。」
「…」
まぁ、確かにくだらないことだとは1ミクロンだけそう思ってはいた。
「それより雪子達は?」
「えー、この家がつまんないから送還した。」
「そうかん?」
「送るに帰還の還だよ。還したってこと。不自然にならないようにレプリカあるから大丈夫だって。まぁ、久遠はここにいるけど。」
椿は自分の右腕を見せながら言う。そこには久遠が腕輪の様になって椿の腕についていた。
「見られた時はどうするんだ?」
「擬態出来るから、腕輪に擬態してもらう。」
「なるほどな。」
「っと、忘れそうになってたけど、試合だったな。口ゆすいでから行くわ。」
「俺も一緒に行こう。」
「おうよっと。」
声を出しながら座布団から腰を上げる。
「待っている。」
「……うん。」
机の上で自分で入れた緑茶を啜りながら才原は言う。着物姿且つおじいちゃんだから、めっちゃ似合うことこの上ない。そして、それを言うとキレはしないが呆れそうなので自重する。
洗面所に向かって歯をシャコシャコ磨く。飛び散った水滴やらは久遠に掃除してもらう。カビが生えないように使用後の歯ブラシを久遠に綺麗にしてもらって《無限収納》にしまう。今に戻ると案の定、才原は机の上に置いてあった魔道具をいじっていた。というか、先程録画しておいた田中対山田の試合を見ていた。緑茶啜りながら。その姿はさながらテレビを観ながらまったりするおじいちゃんのよう。っていうか、魔道具いじれるんだ。何気に凄いぞ、おい。
「む。どうした?」
決着がついたようだ。無言で突っ立っている私を訝し気に見ながら才原が言う。
「いや、うちの夫は何気に凄いなと。」
そう、お忘れでしょうが、この方は夫です。
「そうか?まぁ、そんなことよりもこやつのことが気になるんだがな。」
ん?どいつのこと?
「誰の事?」
「まぁ、良いわ。さぁ、行くぞ。そうだ、雪子達もここに残しておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだね。もしものことがあったらねぇ。」
「お前のもしもが怖いわ。」
「えー。」
えー、と言いながら雪子達を召喚していく。
《あるじー。》
《マリアはしたないですよ。》
「ガウ。」
マリア、雪子、クロというメンバーはいつもながらに濃い。クロも忠犬だけど、それよりも雪子が忠犬?具合を上回っているんだよね。
「うん。レプリカは消しといたから、ここで見張りをお願いね。」
《わかったー。》
《Yes,my lord.》
し、しびれるぅぅぅぅぅぅ!!!
雪子の気の利いた台詞に悶絶している私を見て才原がドン引いている。
「…行くぞ。」
「うん。行こうか。才原くん。」
「気持ちが悪いぞ。」
「今は主様やっているんだよ。才原くん。」
「才原くんやめい。」
「ははは。何を言っているんだい?才原くん。」
「…もはやいじめだ。」
じゃれ合い?ながら廊下を並んで歩いていく二人を見て主従たちは遠い目をしていたという。
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《おふざけはここまでにして、宿題のことなんだが、》
《え、あ、あぁ~。しゅ、宿題ね。あれね。そうそう、あれ。》
念話で会話していたのはいいが、明らかに忘れていた椿に向けて才原は呆れた目線を送る。色々高スペックなのに、脳みそは置いてけぼりなのかと。
《その、自分の魔力の色を見ろってことだろう?俺は自分の魔力に触れたことがないからできないに決まっているだろう?だから、ちょっとだけでもヒントを貰えないかと思ってな。》
《あぁ、忘れてたわ。んじゃ、お手。》
椿が手を出したが才原は怪訝そうな顔でその手を見下ろすのみで動こうとはしない。やはり、漫画の様に素直にお手はしてくれないか。
「ん。」
椿は才原の手をガシッと掴みその乱暴さに似合わず魔力を丁寧に流していった。椿の魔力は温かくそして、何処か清々しい気持ちになる。そして、椿の魔力がまるで風の谷の大きなダンゴムシの様に自分の体内で触手の様なものをどんどん奥につっこんでっているのがわかる。ただ、不快感は全くないので無抵抗に受け入れる。そして、明確には言えないが自分の最深部に着いた触手たちは自分の何かに触れて引っ張っていくではないか。そして、自分の何かは椿の魔力の触手にするするっと毛糸の糸の様に引っ張られていく。その感覚は何とも言えない感覚で、強いて言うならば第二の右手の様なものだ。そして、椿の魔力の触手は自分の身体の外にでるあとちょっとのところで才原の魔力を手放した。
「さぁ、これで感覚は掴んだ。後は自力でどうぞ。」
椿は茫然とする才原を放置して、スタスタと廊下を歩き進んで行った。
取り残された才原は未だに心ここにあらずといった様子で廊下ですれ違う男たちが全員頭の上に?マークを浮かべて、取り敢えず会釈だけして過ぎ去っていった。
「……これは。」
何とも言えないその感情に才原は眉をしかめた。
「兎に角。やるしかないか……」
才原はどこか覚悟したような顔をして会場を目指して歩いた。




