37
短めです。
≪さてさてお次は、浅草次郎対田中颯太!≫
≪いやー、これは田中さんの勝ちっしょ。≫
≪同感です。≫
ひでーなこいつら。めっちゃ酷評じゃねぇか。………まぁ、事実だけど。
≪ジャッキー〇ェンばりのカンフーがとても魅力的な田中さんの戦闘スタイルですが、浅草さんが、ねぇ?≫
≪そうっすね。ハッキリ言って浅草さんは雑魚っすね。≫
浅草次郎がガーンという感じでショックを受けている。って、あれ?浅草次郎って組にいるとは思えないほどに威圧感がないなよなよした男の子と言う感じの草食系男子だ。可笑しい?借金で組に入ったのか?というか、こいつ馬鹿にされたのに言い返さないって男の風上にも置けないな。んじゃ、こいつも私の計画に巻き込んじゃおっと。
≪今大会は棄権はよっぽどの理由がない限りないですからね。ご愁傷さまです。≫
≪そうっすね。≫
≪さて、そろそろお時間です。それではレディィィィィ…ファイトッ!≫
カァァァァァァァンンン!!
「ぐはぁっ!!!」
はい気絶ー。
浅草次郎は開始後に瞬殺された。
弱いな。だが、それはそれで成り上がり後が楽しみだね。
≪瞬殺でしたね。≫
≪そうっすね。予想通りっすね。≫
≪予定調和ですね。≫
≪そうっすねー。≫
予定調和ってお前言いたかっただけだろう。
と、椿は半目で実況を聞いていた。
********
浅草次郎が運ばれた場所はただの個室だった。がそれが可笑しかった。気絶した面々は別の大部屋でまとめて寝かされるのだが、浅草次郎だけは個室だった。
「うっ。」
お腹に力を入れると痛い。多分早めに気絶させようと思ってなんだろうが、腹を見ると拳大の大きなあおたんが出来ていた。
「はぁ~。」
少し薄暗い個室の中で自分の溜息が大きく聞こえる。廊下からは何故か何も聞こえない。今頃バタバタしている筈なのに。
「なんでだろう?」
不思議に思い、ゆっくりと起き上がる。
「いつつ。」
少し動くだけでも痛い。当分普通の生活が出来なさそうだ。
タンタンタン
誰かの歩く足音が廊下から聞こえてきた。こっちに近付いているようだ。
「えっ?」
思わず声を出してしまったのは仕方がないだろう。何故ならその足音の主が障子の向こう側にシルエットがあるからだ。
「…入るぞ。」
「え、あ、は、はい。どうぞ。」
思わず許可を出すと障子がスッと開いた。逆光で見えづらいがよくよく目を凝らして見る。そして、その正体がわかると浅草次郎は目を見開いた。下っ端の自分の部屋にくるはずもないその人物に顔から血の気が引いていく。何か自分は粗相をしたのだろうか?そう思わずにはいられないほどにその人物が自分に会いにくる理由が思い当たらない。自分の目の前に座る人物に目をやると鋭い視線が自分を射抜く。思わず身体が跳ねてしまう。
「落ち着け。お前は粗相も何もしていないし、お咎めなどない。」
「へ?」
では何をここにしに来たのだろうか?だが、人間違えでもなさそうな感じだ。どういうことだ?
「お前は強くなりたいか?」
「?」
「聞いている。」
「え、は、はい。」
「絶対か?」
「絶対、ですか。」
「そうだ。」
どうしよう。部屋に入ってくるなり突然この質問をしてくる?この人の意図がわからない。
「ちょ、ちょっと宜しいでしょうか?」
そう言って控えめに挙手をする。
「何だ?」
先程から変わらない声で言ってくるので多分気分を害してはいない。
そう思って気丈に振舞う。
「その、自分が何をしても強くなれるとは思えません。でも、強くなれるならなりたいです。」
「…そうか。だが、こう保障しよう、絶対に強くなれる。と。」
どういうことだ?
「えっと、結局どういうことですか?自分は一応ここの道場に通っていますが…。何か特別な特訓メニューをさせられるのでしょうか?」
少々不敬な気もするがここは聞かなければいけない様な気がする。
「そろそろ来るはずだ。」
「は?」
思わず素が出てしまった。が、やっぱり気分が害した様子はない。
想像よりおおらかなのかな?
スッといつの間にか障子が開く音がした。その音の発生源へ目を向けるとパンツスーツ姿の背の小さい女性がいた。そして、その女性はあの町田椿だった。
「入るよ。」
「ああ。」
え。
そのままスタスタと才原組長の隣に行き、どかりと隣に腰を下ろした。
というか、胡坐をかいている。
「話は聞いたの?」
「そうだが、というか、お前、了承してもしなくとも絶対に強制参加だろう。」
「あ、バレた?」
「行動が解ってきただけだ。」
え、タメ口!?
「そんなにわかりやすい?」
「ああ。たまに突拍子もないことをする時は予想が出来ないがな。」
「でしょうね。」
「自分で肯定するな。」
「えー。」
え、え、ええええええええええええええええ!!!
「ねぇ、浅草次郎の目がこぼれちゃうから目の下に手のお皿を置いておいたら?」
「誰の手を置く。」
「いや、お前の。」
「それを言うのはお前だけだ。」
「流石に目玉単体を生で手にするのは嫌だから。」
「想像の容易い気持ちの悪い冗談を言うな。」
「持ったことあるし。」
「……やめろ。」
才原はそれを想像してしまって頭を抱えた。
「おーい。浅草次郎。目が乾くよ?」
「話を進めようとは思わんのか?」
「思ってるよ?」
……
「ええええええええええええええええ!!!」
屋敷の中に浅草次郎の声は
響かない。




