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モーゼ現象を起こした当人?達は飄々とした表情で私達にコンビニの袋を渡してきた。

《主、持ってまいりました。》

《うん。ありがとう。っていうか早く食って試合準備するわ。》

《畏まりました。》

私はコンビニ袋を受け取るなりその中をガサガサと漁り、ツナマヨおにぎりを取り出し綺麗に且つ素早く封を開けて口に詰め込んだ。ぱんぱんに膨れた顔は何処か滑稽だ。口に詰めすぎて少し涙目になっているのは自業自得だろう。急いでペットボトルのお茶でおにぎりを流し込み昼ご飯を食べ終わった。

「急ぎ過ぎだろう。」

「では、準備をしてまいります。」

「あぁ、そこの部屋を使うといい。…おい!誰もあそこの部屋に入るなよ!」

「ありがとうございます。」

外向きの態度を取りながら椿は頭を下げ近くの部屋に入っていく。それを見守る人らは決してあの部屋に入ってはいけないと心に誓う。

《着替えたよー。》

《早いな。》

部屋に入って1分足らずで椿から念話がくる。可能か不可能かで言えば現実的には不可能な時間で着替えたのだろう。まさか着替えでもおかしさを突き付けてくるとは。思わず苦笑いが漏れてしまう。

《換装っていうアイテムボックスの機能があるんだよ。っていうか装備ってどうしたらいい?自作の奴が全部強力過ぎて使えないんですけど。》

《誰かに借りると良いだろう。木刀くらいうちに沢山ある。》

《あー、そうだね。道場やってるくらいだもんな。》

《それよりも自作の強力な武器ってなんだよ。》

《あれだよ、自分にピッタリな武器を作ろうとしてドワーフのおっさんのとこで修行をしてたんだよ。最初は女はくんじゃねぇ!的な感じで追い払われていたんだけど結局折れてくれてね。今では立派な師弟関係だよ。で、練習として木剣を最初に作ってたんだけど、途中から木刀に変えて作ってたんだよ。その最初に作った木剣と木刀は脆すぎて全部壊れちゃって捨ててるんだよね。で、残っている木剣と木刀がこれまた凄くてね。銃弾くらいなら弾けるよ。鉄より強くなっちゃったよ。だからヤヴァイ武器に成り上がったからもう使えない。うん。よっぽどのことがないと人に渡せないよね。》

《……お前は何をしている。》

《まぁ、重めの硬い木刀借りるわ。用意しといて。》

《…わかった。》

確かにそんな武器を生身の弱い人間に化け物みたいな人間に持たせられないと思った。でなければ最悪死人が出る。最小限の被害でも重症だろう。なんだかあいつは手加減ができない人間の様な気がする。


********


そんな失礼なことを思われている当の本人は実は手加減は出来る。が、地球の人間がどれ程の弱さかがわからないので下手に手加減が出来ないのだ。今回の試合は少し調子に乗って提案したのが自分だと言う。それを考えると少し下手をこいてしまったような気がする。まぁ、考えても物事は解決してはくれない。何とかするしかないだろう。異世界にステータスという便利なものはない。勿論神様にでさえもそういったものが凡人に出来ない。というか力を数値化なんて出来ない。魔物は倒せば倒すほど力が上がってきているのが何となくではあるが解る。だが、レベルなどという便利なものもない。自分の力量と敵の力量を照らし合わせて判断して倒すのが定石だ。そして、向こうの子供も多分こちらの大人とタメを張れるくらいには強かったと思う。ある程度レベルを上げて就職するのが向こうの子供の常識だからだ。そして、私は子供の指導などしたことはない。護衛とかしたことはあるけど流石に稽古とかつけたことないもん。まぁ、今回は守勢で10割柔の刀でやったらいいだろう。悩んだ結果そうなった私は部屋を出た。格好はスタイリッシュなフォーマルパンツスーツだ。ヒールを履いて会場に行くと予選が最後なのでざわざわとしている。少し退屈そうな人達が沢山いる。多分代わり映えのない試合に退屈しているのだろう。会場に着いた私は実況の言葉に耳を傾ける。


≪さて休憩終了まであと5分です。トイレに行きたい人は行って下さい。さて、次の試合の注目の出場者の紹介をします。やはり気になるのは今大会の紅一点の町田椿さん。今大会の発案者らしいですよ。≫

≪そうっすね。というか、この人の情報は全くないんすよね。どんな戦闘スタイルかもわからないんす。何処かの道場に通っていたとか全くないんす。だから、ちょっと期待度は高いっすね。≫

≪そうですね。私の手元にあるプロフィールを見てもどんな戦闘スタイルかは書いてありません。まず誰も戦闘しているところを見たことがないそうです。まさに謎の女性ですね。≫

≪ミステリアスっすね。≫


********


≪さて皆さん、予選最後のDブロックです。ではレディィィィィ……ファイトッ!≫


カァァァァァァァンンン!!


コングが五月蝿く鳴る。そして、私に殺到する雑魚共。あ、木刀は敗退した人に借りた。重さとか気にしないことにしたわ。

「嬢ちゃんよ。腕っ節に自信があったんだろうが残念ながらここでは通用しねぇんだ、よ!」









ニヤリ




「かっ、は」

「うん。ばっちりだね。」

勿論力加減がだ。木刀をぎゅっと握り直し()()を向く。当たりは静寂に包まれている。

「かかってきなよ。」

そう言うと現実を受け入れられなかった椿を囲んでいた者たちが油の切れたブリキの様に後ろを向いた。さっきまで目の前にいた人物に。

「さぁ、どうしたんだ?」

あぁ、戦闘狂なところはこっちにきても治せないわー。雑魚相手にでもニヤリと笑ってしまう。後ろを向いた出場者たちは顔を青ざめさせた。勿論恐怖でだ。

「じゃあ、一気に片付けるぞ。」

「なっ!」

宣言をしたあとに誰かが声を出したが既に全員気絶させている。


ドサドサ


数人が次々と倒れていく。勿論私が倒した。どよめきが会場に起こる。ちらりと雪子達を見ると雪子は誇らしげに胸を張って座っている。所謂ドヤ顔だな。まさかシャドウパンサーのドヤ顔が見れるなんてな。人類初じゃね?おっとそんなことよりも警戒をしている雑魚共を片付けなきゃな。

「いっぺんに相手してやる。」

少し魔力を込めて声を発するとちらほらと気絶している奴がいる。

「これに耐える、か。(魔力を持ったCランク冒険者が数人この世界に来たら慎重に制圧したらできそうだな。)」

感心した風に声を発する。(考えていることは相も変わらず物騒だが)立ち姿は片足に体重をかけ肩に木刀を担いでいる。まさに戦闘狂のそれだ。いや、戦闘狂の鏡と言っても過言ではないだろう。まぁ、行き過ぎた戦闘狂は怪我をすると性的に興奮するようになってしまうがな。過去にそういうやつを見たことがある。私はそこまでではないがな。会場が静寂に包まれる。皆が顎が外れるんじゃないかってくらい驚いてくれているのに、ちらり、と才原を見ると何故か頭を抱えている。どうしたんだ?


「ひっ!」「棄権しますっ!」「うわぁぁぁ!」「お、俺もっ!」


正に阿鼻叫喚。いや、まだ血が流れていないだけましか。続々と自ら線の外に出ていく。あ、誰か漏らしたな。やっぱり魔力を込めてたのがいけなかったか。ファイアーボールを2、3回くらい使う魔力量を声に乗せただけなんだけどな。案外脆いな地球人。そして、それでいいのか地球人。まぁ、流石にミサイルとかには異世界人でも対抗は難しいけどね。核爆弾とかでは一国を滅ぼせそうだけど。これが、一般人よりも強い人達かぁ。こっちに魔物が来たらヤバいね。


≪し、試合しゅしゅしゅ、ッ終了ーーーー!!!≫


誰も声を発しなかった。

私は用なしとばかりに退場をした。


主人公の試合にしては短かったですかね?

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