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ポーカーフェイスを装いながらも内心激しく動揺している。
傍から見ると会社のトップの隣で脚と腕を組んで偉そうにパイプ椅子に座る新人だ。だが、誰もこちらに注目はしていないのでそれはいい。
そして、新事実があのおっさんが幹部だということ。私はそんな上司にさん付けで呼ばれ、挙句敬意を払われている。そして、昨日は運転をしてもらった。これは、由々しき事態だ。気に食わない社員が出ても可笑しくない。あの会社だから、匕首で闇討ちされそう。うん、あり得る。
あのおっさんをさして尊敬していなくとも、下っ端の新人が粋がってんじゃねぇよ。ぐらいはありそうだな。それと、おっさん以外の幹部を見たのは初めてだな。
柏木仙太郎は50代前半の見目で、右目に大きな傷跡があり髪の毛はオールバックだ。少々白髪が混じっているが、清潔感はある。180㎝弱の身長で姿勢は武人のそれだ。
黛義信は軽薄そうな印象を受けるが、ニコニコ笑っている顔はなかなかに侮れない。そして、足運びは諜報部のそれで、この男が組の情報元だという事がわかる。気が利いて頭の回転も速そうだけど、学力的な面ではそうでもなさそうだ。
で、田中颯太通称”おっさん”は多分営業兼電話対応を統括する人なんだろう。私がいない時に恫喝と言っていいほどの電話対応をしているのでそうなのだろう。ってか、意外とこの会社儲かっているのかな。って思っている。かなりの社員数だし、金融屋やるんだったら資金力だっているし、元々金を持っていたのかなーって思っている。あ、営業は柏木仙太郎だと思う。部下を統括するのにも長けていて、勤勉だ。見た目のわりに根が真面目だと思う。
それより…
「ねぇ、あの三人の得意武器とか知らない?」
「見ればわかる。」
「面倒なんでしょ。まぁ、いいけど。っていうか、カチコミ?の時の争い方って基本ドンパチだから殴り合いは古風且つ非効率的だからそういうの無いよね。」
「そうだな。お前達みたいな非常識の塊ならどんな武器でも対抗できるだろうが、基本そうだな。それに、そんなにドンパチやるもんじゃない。」
「と言いつつ、やってるんでしょ?寧ろ対抗勢力とどうやって争ってんの?って聞きたいわ。」
「最近は平和な方だな。あるとしたら、匕首で一刺しって感じだな。」
「おいおい。結構平和で効率的だな。」
「お前だけだそんな意見が出るのは。」
「いやー、ロケットミサイルなら面白そうだね。」
「どこから調達する?」
「………………手作り?」
「…」
才原はこれ以上脱線したくないと思った。恐ろしいことを聞きそうな気がする。そして、その判断は正しかったと後に知る。
≪—————————では、皆さん準備は宜しいですね。レディィィィィ………ファイトッ!!≫
カァァァァァァァンンン!!
いつの間にか実況席が喋り倒していたらしい。聞いていなかった。
会場を見ると全員黙って見ているが、さっきまでの試合とは異なり「おぉぉ…」等の声がちらほらと聞こえる。
三王は潰し合うのではなく、最初は三手に別れたようだ。じわじわ潰していくつもりのようだ。
柏木は木刀片手に剛8割柔2割の刀術で応戦している。力技だけでなく力を受け流すところは受け流す。木刀だとあまり実践的でない様な気がする。柏木は大剣とか持ってみたらいいんじゃないかな。意外と才能がある気がする。あの木刀だって人をぶっ飛ばしているくせに折れない頑丈さがある。多分一番重くて一番頑丈なものなのだろう。その気迫に周りが怖気づいている。
そして、黛は素手で応戦している。多分普段は暗器とかを使うのだろう。でも、刃を潰した暗器でも流石にこの大会では勝てない。で、体術も出来るからそれで対応しているのだろう。こいつは完全に柔だな。人の体重と力の法則を目一杯利用して人に人をぶつけることで撃破できている。でも、こいつは情報収集や暗殺者の様な目立ってはいけない人間としては失格だな。
そして、気になるおっさんはというと、意外と強い。やはり周りからは侮られていたようで、こいつならいけると皆ニヤニヤしていた。その体躯と見目に似合わず意外とスピード系の戦い方の様だ。そして、ジャッキーチェンの様な戦い方をしている。カンフー系か?うん、意外と好きだね。ジャッキーチェンの戦いってなんか憧れるじゃん?今は周りの物がないからあれだけど、相手の服も利用するその戦い方がなんかエンターテイメントチックでいいなぁ。今度やってみようかなぁ。
「おっさんの戦闘方法いいね。」
「誰だ。」
ちょっと険のある声だ。
「いや、カンフー系って憧れるじゃん?やってみたいなぁーっと思ってね。今度チンピラを大量に釣って練習してみようかなぁ。」
「………やめとけ。」
止められた。
「ねぇ、正体不明の治安維持者って面白くない?おまけに清掃活動までするんだよ?ふはは。」
「俺を巻き込むなよ。」
「何を言っているのさ。君はあの薬を飲んだ時から巻き込まれているのさ。」
「………サツの厄介にはなるなよ。」
「衣装どうしよっかなぁ。」
心底呆れているようで、溜息が聞こえてくるがそんなの知ったこっちゃねえな。どうせなら格好良い格好がいいなぁ。真っ黒の軍服を着て仮面でも着けとこっかな。うん。格好良いね。
≪終了ーーーー!予選Cブロック勝者は柏木仙太郎!田中颯太!黛は最後の最後に二人の力に押し負けた様です!さぁ、次はいよいよ予選最後のDブロック!楽しみです!≫
≪いやー、まさか田中さんが勝つとは思わなかったっす。強いとは聞いていたんすけど、どんな戦い方なのか全く知られていなくて噂は所詮噂って感じで信じていなかったんすよね。≫
≪そうですね。俺も聞いたことはありましたけど、男が憧れる様な戦い方でしたね。見直しました。≫
こいつら何気に失礼だな。
と自分のことを棚上げして呆れる。
≪さて、このまま進めていきたいですけど、ここでトイレ休憩に入ります。20分後には選手たちは集まって下さい。≫
どうやらここで休憩を入れるようだ。食いながら待つか。戦闘服はどうしようかな。一応バリエーションもたしてるけど。
《雪子ー、めしー。》
《わかりました。》
《今何処?》
《離れです。》
《そうか。待ってるよー。》
《はい。》
どうやら離れでダラダラ過ごしていたようだ。
才原はこの会話を傍聴しているのでいちいち言う必要はない。
そんなことより
「戦闘服どうしたらいい?」
「何がある?」
お、意外に食いついてきたな。
「えっとね。忍者とか軍服とかゴスロリかな。」
「……………まともなやつはないのか。」
「ゴスロリって私みたいに身長低い奴が着て戦闘するとめっちゃ怖いんだよ。それで持ってる。あ、メイド服とかどう?」
「論外だ。」
「あとは、ガチで戦闘するときに着るやつかな。」
「それはどんなのだ。」
おいおい、結構食い気味だなこのじじい。
「真っ白のワンピースに胸当てだけ。武器は刀かなぁ。自分で作ったんだよ?凄くない?」
「そうか。それはやめとけ。それとあのスーツでいいだろう。最高の素材で作っているんだろう?」
「そうだねぇ。うん。それでいっか。今から作務衣でも作って着たら良いと思ったけどそれにするわ。」
「ちょっと待て、今から着くろうと思っていたのか?」
「うん。魔法使えば一発でしょ。それと、縫うんじゃなくて、こう、繋げるから千切れる心配もなしなんだよ。」
「今度買おう。」
指と指をくっつける仕草をすると才原が食い気味に言ってきた。
「お、おう。」
取り敢えず戦闘服は決まった。SPとか先鋭みたいだから良いね。で、武器はやっぱり木刀かなぁ。軽めの奴に付与でもつけとけばいいでしょ。ここは壊さないのがいいからね。
《主。》
雪子達が来たようだ。
雪子達が通るとモーゼの様に道が開く。




