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あのあと屋敷に戻り、予選の表を見に行った。

予選はA、B、C、Dとブロックで分けられており、私はDブロックだった。試合はお昼休憩の後だった。皆がどんなレベルなのか気になったので、予選は見ることにした。今はAブロックの20人が整備された土の上で対峙している。道場でやるのかと思ったら違った。どうやら直径30メートルの円の中で戦うようだ。これが庭って広くない?しかも、整備されていて細かな石がない。このフィールドはなかなかに楽だな。

ルールはシンプルで、武器は審査に通って許可が出たものだ。無手も勿論OKだ。服もなんでもOK。円の外に出るか気絶したら敗退。致命傷等、いたぶると審判が止めて親子の縁を切るんだと。で、1ブロック2人だけが本戦に進める。本戦はトーナメント戦で適当にくじで決まるらしい。本戦の制限時間は20分。シードも二つあるらしいが、本戦の時に発表するらしい。ざっと説明するとこんなもんだ。

「才原さん。一緒に観ませんか?」

「そうしようか。なら、こっちにこい。」

才原はそう言って、私を特等席に座らせる。周りには意外にも幹部たちがいない。不思議に思った私は才原の耳に顔を寄せて聞いた。

「なんで一人?」

「お前が来ると思ったからだ。」

「普通に喋れるように?」

「まぁ、どこで誰が聞いているかも分らんがな。」

「ありがとう。」

素直に感謝すると、才原は好々爺を彷彿とさせる笑顔を私に向ける。雪子達は各々が好きな場所で観戦するようだ。空気を読んでくれたのかな?人間より凄いなうちの子。

「始まるようだぞ。」

才原が準備の整った試合会場を見て言った。

適当にそこら辺に各々御座を持ってきて座るのかと思っていたが、これは意外だった。学校の運動会みたいにレジャーシートが敷かれていて、皆そこで座って見ている。一番見やすいところは基本的に幹部の人達が陣取っている。あ、完徹さんがいる。いぶし銀だね。はぁぁん!って声が出そうだよ。キャラじゃないし、鳥肌が立ちそうだから意地でもやらないけど。何故かスピーカーがあって、解説?と実況をやるんだと思う。五月蝿そうだけどな。ってか、この屋敷のどこからスピーカーとマイクが出てくる。


≪レディースアンドジェントルメン!いよいよ男の熱い拳大会が始まるぜ!実況をやるこの私はスケと呼んで下さい!解説をするのはカクゥゥ!≫

≪カクっす。≫

パクリじゃね?しかも、キャラが………。

≪予選Aブロックの出場者は20名。最後の2人になるまで戦ってくれよ!≫

≪個人的にはDブロックが楽しみっすね。≫

≪あ、俺も。≫

≪やっぱり今大会唯一の紅一点の町田椿さんが気になるっすね。≫

≪そうですねー。なんでも、今大会の発案者だとか。≫

≪そうなんすか?≫

≪いやー、若が言ってたんで。詳しくは知らないけど、その町田椿さんが言ってたとしか。≫

≪女の子がこれを発案するとか、意外と男気があったり?≫

≪私は才原組長と二人でよく行動をしているので、ちょっと謎多き女性ですね。≫

≪マジっすか。≫

≪マジっす。≫

緩いな!なんだこの司会!実況の奴、俺と私でぐちゃぐちゃだぞ!キャラが脆いな!

≪お、選手達が入場してきました!≫

出場選手の入ってくる方を見やると、私は固まった。

何故か。それは、出場選手が全員戦闘に不向きな格好をしていたからだ。

ある人は、ニッカポッカと腹に晒しを巻いて木刀を片手に威圧的に入場

ある人は、ふんどしと足袋だけを着て誇らしげに入場

ある人は、まだマシ?なのか分からないけど、剣道着をフル装備で入場

ある人は、孫〇空の格好で入場

ある人は、作務衣にメリケンサックで入場

ある人は、スーツ姿にトンファーを持って入場

ある人は、ブルー〇リーの格好とヌンチャクを持って入場

これは、固まったのは私だけではなかったようで、隣の才原を見るとやはり固まっていた。

ギギギ、と油の切れたブリキの人形のように才原の方を向くと、才原も油の切れたブリキの人形のようにこちらを向いていた。よく見ると、口元がひくひくしている。

「よく、組が潰れなかったな。は、ははは。」

「俺も不思議だ。っは、ははは。」

最早乾いた笑いしか出てこない。真面目にやる気があるのか。もしかして、気合で行けると思っているのか。なんか、出場選手の方から「ホチャァァァァァ!」って聞こえてくるけど。遠目に雪子達も出場選手の方を見て固まっている。

「「阿呆だな。」」

二人の声が重なる。

真面目な格好の奴がいない。痛い目にあいたいのか。よくわからない。

「椿。」

才原がそう言って私の肩にゆっくりとした動作で手を置く。

「な、何。」

「……………叩きのめせ。」

「……わかった。」

才原の顔は覚悟を決めた男の顔だった。


こうして、半ばコスプレ大会の様な武闘大会が始まったのであった。

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