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おー、長いなこの渡殿。にしても、あいつボンボンだとは思ってたけど、マジのボンボンつうか、坊って感じだな。取り敢えず山本さんにどこにいるかメッセージを適当に送った。この後の用事とか何をするのとか聞いていないからな。お、返事はやーい。
≪町田さんは冒険していて下さい。≫
これは、………………軽い拒否の返事か?それとも、普段頑張ってくれているから、仕切らなくてもいいよーって感じのやつか?まぁ、いいや私も冒険をしたくなるような家に連れてこられたからな。
「行くか。」
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幹部っぽい人とは生憎すれ違っていないが、厳ついおっさん達とは沢山すれ違っている。こっちをめっちゃ見てくるけど。特にマリアとかマリアとかマリアとか。そんなにサルが好きなの?
「立派だー。」
お屋敷に関してはこういった感想しか持てない。異世界でもっとデカいの見ているし、こういう規模の屋敷をいくつかぶっ壊したこともあるから、あの時は清々しかったなーと思い出したくらいだな。多分、組長さんはそんなことを思ってほしくないだろうな~。この規模の屋敷って、もういいわー、って思った時に丁度全部壊れているから丁度いいサイズなんだよな。
何か、破壊魔みたいで駄目だな。取り敢えず、人の集まっている多そうなところにいこーっと。お、こっちは熱が籠ってて人が多いから、こっちが台所じゃね?
そう思い、タッターと軽い足取りでその熱の発生源のところに向かった。
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ドスの利いた怒号が聞こえてきた。何か、食堂とかうどん屋さんの厨房みたいな感じだな。
うお、良い匂い。何だろう。
私はフラフラと月に導かれる蛾の様に匂いを辿っていった。
「うおっ!」
あぶねー。角から来るのに注意を向けてなかった。もっと、索敵の精度を上げるために集中しなきゃな。世界最強の名折れだな。んー、よしよし。整った整った。
《主、どうかしましたか?》
《いんやー、何でもないよ。ちょっと集中切らしてちゃっただけ。》
《そうですか。安心しました。では。》
雪子が私の気配を敏感に感じ取ったらしい。驚いたからな。そりゃ、心配されて当然か。
「三番おわりぃー!!!」
ん?台所から聞こえてきたな。何か面白そうだな。
早速台所に向かい始めた。引き戸からそろりと顔だけ覗くとそこは台所ではなく、厨房だった。
「台所じゃねぇな。」
ん?後ろから夫人?奥様でいっか。そう、奥様が近づいてきた。私は驚かされる前に振り向くと案の定私を驚かそうとしていた奥様が驚いていた。
「あ、先ほどぶりです。」
私は驚いている奥様を無視して会釈した。
「椿ちゃんこそどうしたの?」
おぉ、驚かそうとしていたことは言わないのか。
「山本さんに何か出来ることをって聞きましたところ、冒険でもしてください。と返事を返されましたので、冒険をしております。」
「そうだったの。ふふふ。確かにこの屋敷は冒険におあつらえ向きね。」
「立派な御屋敷ですからね。」
「あら、ありがとう。」
可愛らしく微笑んでから「じゃあ、またね。」と用事があるようなので去っていった。咎められなかったということはOKということだな。じゃあ次はここより人の集まっているところか。
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ん?こっち方面に何か動きが激しい生命反応があるな。見てみたいから行くか。多分、今回の大会の試合会場となるところかな?結構広いみたいだし、多分道場かな。いいね。今のうちに下見と流派を吸収しときますか。
ってか、遠いな。歩きも面倒だけど、走るのは駄目だな。我慢していくか。5分はかかりそうな廊下だな。おい。遠すぎるだろう。ねぇ、マリア。
《んー?ぶら下がるところが少ないから、襲撃にあったら大変だねー。》
《まぁ、確かにマリアはちょっと大変かもね。でも、ちょっとした出っ張りはあるみたいだから大丈夫でしょ。》
《あー、そうだねー。ねぇ、主ー。》
《んー?》
《マリアも遊ぶー。》
《夜ね。》
《はーい。》
《防音魔法とマリアの幻覚魔法もいるからマリアは大活躍だね。》
《わーい!》
《人間の動きを見ていたらいいんじゃない?動きをわかってたら大分楽だと思うよ。》
《うん!見るー!》
《……可愛いな。》
全くうちの子は素直で可愛い子が多いなー。飼い主が危ない変態親父になりそうだわ。
お、着いたー。
《主、着いたー!》
「開けちゃっていいのかな?」
中からセイヤッとか野太い声が聞こえてきてるけど。やってんなー。
「どうぞ。お客さん。」
すると、中から50代のおっさんの声が聞こえてきた。渋くてなかなかいいワイルドボイスで私は好きだよ。ってか、さっきの呟き聞こえてたっていうか。この人なら集中してた中で聞こえたって感じかな。
「失礼します。」
私は粗相のないように久遠に足を綺麗にしてもらってから引き戸を開けた。
「見学か?」
「はい。宜しいでしょうか?」
「構わん。」
あ、格好良い。この人好きだな。
《主ー。マリアもいいのー?》
ほんとだ。
「すみません。道場に入らせていただく前にこの子も入っていいでしょうか?」
引き戸のすぐそばで腕を組んで仁王立ちしていたおじさんは私の方を首だけ動かして確認した。年の重ねた皺が悪く言うと不愛想な顔を更に強面にした感じだ。でも、超好み。かっけー。ちょっと、頬に熱が上がるのがわかる。マジ格好良い。好きだわー。
「邪魔をしなければ構わん。」
あ、この人動物好きだな。いいね。ギャップ萌えだよ。マリアを見た瞬間目元がちょっとだけ緩められたからな。よっぽど好きなんだろうな。今度雪子達を紹介しようかな?
「失礼します。」
私は一礼して道場に入った。
渋いおじ様の隣に立って自己紹介を簡潔にした。
「初めまして、町田椿と申します。桜木組経営の〇×金融会社に今月から勤めております。宜しくお願い致します。」
「黒田完徹だ。桜組の幹部をやっている。」
名前までもが格好良い!いいね!そのボイスで名前を囁かれたい!
「で、……」
あ、名前か。
「椿と呼んでください。」
「で、椿はどうしてここに来た。」
ミッションクリア!私は心の中でほくそ笑んだ。
「たまたまです。山本さんに何もしなくてもいいから冒険でもして下さい。と言われましたので。」
「そうか。」
完徹さんはそう言ったっきり話さなくなった。
あぁ、でも格好良いから話さないほうが尚いいな。
********
「終了!」
完徹さんが息を吸って大声を出す準備をしていたので私は大声をいきなり出されても驚かなかった。マリアもだけど。でも、大声もいいな。ぐへへ。
《弱ーい。》
こら、マリアそんなこと言わない。
《あのおじさん弱いよー。でも、一番強ーい。わけわかんなーい。》
でしょうね。普通の人間の中では強いほうだけど、私らに比べたら弱いでしょうよ。あ、解散らしいね。ぞろぞろ道場から出て行ったぞ。こっちに会釈をしてくるので私は会釈をし返した。
でも、完徹さんは道場の真ん中にまだいるな。何してんの?
「椿。」
「はい。」
「私と組み手をやるか?」
うおおおおおおお!
って、やりたいし。合法的に完徹さんのあっちやこっちを触れるから本当はやりたくて仕方がないけど!
「遠慮しておきます。多分ですが、明日に大会が控えておりますので。」
「そうか。」
あぁ、落ち込んじゃった。どうしよう。えええ、どうしよう。
《主ー。戦わないのー?》
と、マリアが聞いてきた。マリア?あ、マリアだ!
「黒田様。」
「黒田でいい。」
「では、黒田さん。この後、私の家族を紹介したいのですが宜しいですか?」
最初から完徹さん呼びは図々しいからな!
「む、そうか。」
おぉ!好感触だな。いけるぞ!椿!
「わかった。汗を拭いてから向かおう。こっちだ。」
「はい。」
完徹さんは少し柔らかい雰囲気を出して、道場から出る。私も完徹さんの後を追って出た。完徹さんはどこに向かっているのかよくわからんが、しっかりとした足取りなので自室に向かうのだろうか。やはり5分くらいしたあと、完徹さんはある障子の前で止まった。
「ここで待っていろ。」
わざわざ振り返りそう言った。
《マリア!ここだ!》
「キキィー!」
とどめのマリアだ!(なんか、アニメの題名っぽいな。)
「ふっ。」
完徹さんは微笑みという名の核爆弾を落としてから、マリアをひと撫でし障子を閉めた。
「ぐふっ。」
格好良い。やっぱり、ギャップがたまらん!笑いも堪えられん!
椿は静かに崩れ落ち、口元を手で抑えてエアー吐血をした。そして、マリアはつぶれないように椿の肩に素早く乗った。
《主ー。どうしたのー?》
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5分もすると完徹さんは作務衣に着替えて出てきた。
何でそんなに格好良いのに着替えてくんのー!
椿の頭は半分は既に完徹に侵されていた。
「行くぞ。」
「はい。こちらです。」
すると、マリアが完徹さんに飛びついた。実はこれは椿の完徹さんちょっと籠絡作戦の一環だ。あの5分の間に恐ろしいことを考えたものだ。
完徹さんはマリアに飛びつかれると素早くマリアが落ちないように両腕で支えた。また、マリアを触ったことで雰囲気も少し柔らかくなった。そして、椿は萌えでどうしようかと最近の悩みにいれた。
「マリア!」
椿は焦ったような声を出す。勿論演技だ。
「構わん。取り敢えず行くぞ。」
「すみません。」
私は眼福な場面と後ろで完徹さんがマリアを優しく撫でている気配を感じて心の中でガッツポーズした。我が人生に一生の悔いなし!とまで心の中で叫んでいた。
また、広い屋敷の中をグルグル歩いたところで渡殿を渡り、離れの縁側に移動すると雪子達が縁側の方に整列して待っていた。
《主。お帰りなさいませ。》
「ただいま。」
雪子からの念話でのお帰りに私は返事をした。
「黒田さん。私の家族たちとその友達たちです。黒豹の雪子と白狼のクロです。そして、黒田さんにしがみついているのがマリアです。」
「初めましてだな。」
いいえ、雪子は知っています。
「がう。」
「ガウ!」
「黒田さん。私の家族らは人の言葉を理解するので、話しかけても大丈夫です。噛みもしませんし。」
「わかった。」
私は持ってきた大きい布を縁側に広げた。
「何をするんだ?」
「雪子達の足を拭きます。雪子おいで。」
「がう。」
雪子はのっそりとその巨体を寝そべらせた。
「いいな。」
ぼそりと完徹さんが呟いた。いや、マネして飼わないでくださいね。この子達と違って臭いですから。
イケおじ登場です。




