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うわー、恥ずかしいな。あの、深夜テンションみたいなの。


「美味しい?」


『ゆかり』の女将さんが美ボイスで聞いてくる。


「美味しいです。」


笑顔で言うと女将さんは頬をポッと色っぽく染めた。


「災難やったね。攫われるなんて。」


茶番劇ですけどね。


「そうですね。でも、何が何だかわからずに捕まって脱出したんで、ピンときませんね。あ、唐揚げ2人前お願いします。」

「はい。」


着物姿の女将さんは相も変わらずエロい。大将、よく捕まえたな。


「山本さんは食べないんですか?」

「お酒は遠慮しときます。」

「お酒()ですよね。じゃあ、あとでくる唐揚げ食べましょう。これら全部社長のおごりですよね?」

「そうですが」

「じゃあ、遠慮せずに食べましょう。あ、大将!」

「何だ!」

「魔王の一つ上あるでしょ!」

「あるよ!」

「それお願い!」


私は魔王の1ランク上のお酒を頼んだ。


「ですが」

「私しか食べていないのって凄く申し訳ないんですよ。」

「それにしては遠慮がありませんが。」

「気のせいです。」

「そうですか。」

「山本さんはご結婚は?」

「していません。それが何か?」


よし、姓を変えるチャンスありだね。良家のお嬢様とかだったら尚いい。


「いえ、ただの話題作りです。」

「そうですか。では、町田さんはどうなんですか?」

「いませんね。」

「そうですか。」


それから沈黙。数分経ったところで山本さんが喋りだした。


「若とか。」

「は。」

「若をどう思いますか?」

「えー、」

「どんなのでも構いません。」


どんなのって。この人何言ってんの?


「そうですね。背が高くて、誰から見ても容姿は整っていて格好良いと思います。それに、社長としての能力も高いと思います。部下思いで、私が頼んだことも大体了承していただけますし。」

「そうですか。」


この人本当に何を思っていても表情が動かないからわかんねぇ。凄いな。異世界スペックの化け物でも表情が動いていないのが解るとか。普通もうちょっと動くよ?


「恋愛対象としてどうですか?」









































































































私だから吹き出さなかったけど、普通の人だったら「ぶふーーー!!」って吹き出す場面だよ。代わりに沈黙がきたけど。


「そうですね。ありうるかもしれませんね。」


だけど、異世界諸々があるからなー。取り敢えずそんな返事でいいか。顔は良いし、力は私が鍛え上げればいいでしょ。そういう薬も持ってるし。危なくないよ?


「そうですか。」


この人さっきから質問してんのに、そうですかって。


「すみません。若は女の人に対してはかなり慎重なので町田さんには今までと比べるとかなり良好だったもので。」


ねぇ、そういう話は地味子にしちゃいけないよ。


「そうだったんですか。でも、私は地味ですし。絶対に対象外ですよ。」

「そんなことはっ」

「唐揚げでーす。」


女将さんナイスタイミング!ってか、そこでタイミング計ってたの知ってるよ。


「おぉー、美味しそうですね。」

「少し冷ましといたけど、揚げたてだから中はまだ熱いわ。」

「そうですか、はい、山本さんどうぞ。」

「話を聞いていましたか?」


そりゃ聞いてるに決まっているだろ。


「聞いていましたよ。出来立てですってね。」

「だから、熱いんですよね。」

「美味しいんですよ。2人前あるので遠慮なさらず、どうぞ。」

「そうですよ。美味しいんですよ?」


女将さん援護射撃ナイス。私は心の中でサムズアップをした。


「わかりました。いただきます。」


山本イッたー!丁寧に手を合わせて唐揚げを一口でイッたー!山本さんは一人我慢大会でもやってるのか?


「うっ。」


女将さんは水を山本さんに渡した。山本さんはプルプルしながらも水を受け取り一気に飲んだ。因みに私はというとちょっとずつ唐揚げをハフハフしながら食べてます。おいしゅうございます。


「美味しいですね。」

「そうですね。」

「ふふ、嬉しいわ。」


山本さん、我慢大会では優勝したのかな?


********



社長が来たときに私は『大魔王』を飲んでいた。前回より遥かに度数の高いお酒に私は普通に酔っていた。


「おぉー、しゃちょさんですね。おつかれさまですぅー。」

「出来上がってんな。」

「飲ませましたから。」


山本さんめ根に持ってんな。


「お前どんだけ飲み食いしてんだよ。太るぞ。」


そういいながら社長さんは私の隣の席に座った。


「ブーブー。大丈夫れすよ。私毎日富士山をダッシュで駆け上がってますから。」

「はははは!お前それ何の冗談だよ。」

「冗談じゃないれす。」


私は至極真面目なのに。


「何飲みますか?流石に酒に強くとも、『大魔王』は私も酔いますれす。」

「ビールで。」

「つまんないれすね。そうだ!勝負しませんか?」


私はバレたくないのに墓穴を掘っていった。


「勝負?急に何の話だ。」


そういって社長はビールをごくごく飲んでいる。


「社員さんと私のガチンコ勝負れす。」

「何を賭けるんだ?」

「賭けなんて……あー、れも、それもいいれすね。シンプルに相手の言うことを一つ聞くとかどうれすか?」

「そうだな。それでいいのかもな。で、何で勝負をするんだ?あ、ゆかりさん適当に持ってきて。」

「はーい。」


そりゃあれだろ、ひひひ


「ガチンコれすよ。」

「だから何の?」

「拳のれす。」


私はそう言って拳同士を突き合せた。


「それは、お前が不利だろ。」

「えー、私これでも負けなしなのに。あ、師匠になら旅をする前にボロクソに負けていましたれすよ。でも、それからは師匠と戦っても負けなしれす。」

「旅って。まぁ、いいんじゃねぇの?」

「あ、そうだ!社員旅行に行きましょう!この頃なんかドタバタしている気がするんれすよね。」

「お前雇われて1週間も経ってねぇだろうが。」

「そして、その時にーガチンコ熱い男の拳大会をするんれすー。」

「だけど、それもいいかもな。なぁ、山本?」

「ええ、そうですが、町田さんが」

「ん?」


椿は喋るだけ喋って寝ていた。


「おい、これどうするよ。」

「仕方がないですね。」

「そうだな。じゃあ、やまも」

「社長が送ってください。」

「はぁ!?」

「社長が送ってください。」

「二度も言わんでもわかるわ!あと、そこはお前で何とかしろよ!」

「何言っているんですか、若の部下じゃないですか。町田さん言ってましたよ。」

「なんて?」

「社長は部下思いで、大変素晴らしい。社長の中の社長だと。」


言ってません。


「はぁ?なんだそれ。兎に角俺は連れて」


バシャバシャ


店の扉を叩く音がした。


「ん?」

「あら?どちら様?すみません。今日は貸し切りなんです。」


バシャバシャ


「おい、シルエットが可笑しいぞ。」


扉の向こうは真っ黒な塊しかない。


「若、お願いします。」

「山本、お前結構ビビりだよな。」

「はい。命には変えられませんから。」

「ちっ。わぁったよ。開けるぞ。」


ちょっとドキドキしながら開ける。


ガラガラ


「がう。」


ピシャン


「おい、ここは日本でサファリパー〇とかじゃねぇよな?俺そんなに酒を飲んでたっけ?」

「ビール1杯半も飲んでいませんが、それに酔うには少なすぎますね。」

「そうだよな。なら、あれは現実だが。」


修はもう一度開けた。


「がう。」


ガラッ


修は恐る恐る力を緩めると今度は腕を尻尾で掴まれた。


「うおっ!何だよ!」


少しの酒でも酔っているようだ。


「がう。」


黒豹は顔を上げて首元にある筒の中身を見ろ!と態度で示してきた。


「だからなんだよ!」


そんなことには社長は気付かない。だが、内心ドッキドキの社長さん。


「がう!」


黒豹はちょっと苛立ったようで強引に腕を引っ張り首にある筒に修の手を触れさせた。


「ん?何だこれ」

「がう。」

「開けろってか?わかったよ。」


今日の修はちょっと素直。


「ってか、どうやって開けるんだよ。」


修は筒の開け方がわからず四苦八苦している。周りが何も言えずに立ち竦んでいると。


「ガウ!」


また別の獣の声が聞こえた。


「また誰だよ!」


修は自棄になって周りを見ると、見事な白い狼がこちらに走ってきた。


「誰だ!猛獣使いは!」

「がううう。」

「ガルルルルゥ。」


どうやら狼と豹は仲間の様だ。


「キキィー!」


自分も忘れるな!とばかりにニホンザルが鳴いた。


「なんだ?おい!サル!」

「キキー?」

「そうだ!お前だ!これの開け方を知っているか?」

「がう!」


豹が駄目だ!とサルに吠える。


「キィ。」


サルは狼の毛皮に埋もれた。


「うー、暗くて見えん。ゆかりさん!」

「はい!」

「店の中にこいつら入れてもいいか?」

「えぇ!どうぞどうぞ!」


女将は茫然としていたのを修に呼ばれて我に返った。修は店の中にひくと猛獣達が店に入ってくる。こうして明るいところで見るとなかなかにデカい。


「がう。」


とひと吠えし、女将さんに頭を下げた。女将さんは何が何だかよくわかっていないふうにお辞儀をし返した。


「がう!」


黒豹はまた仲間達にひと吠えした。


「クゥーン。」

「キキー。」


狼とサルはそれにびくっとし、女将さんに向かって頭を下げた。また女将さんも頭を下げる。


「お、お構いなく?」


女将さんはもうよくわかっていない。


「がう。」


黒豹は修にひと吠え。首を晒す。


「あ、あぁ。わかった。」


修は急いでその首にある筒を取りに行った。


「ん?んん?おい、山本。俺は無理だ。こんな小さいベルトを取るなんて器用なことはできない。」

「そうですか。では、失礼します。」

「がう。」


修は山本にバトンタッチした。


「これはなかなか。」


山本はそう言いいとも簡単にベルトを外してその中身を抜いた。


「これは」


山本は中身の紙を抜いて読むと一言漏らす。


「何が書いてあるんだ?」


修は後ろから覗き込み見る。


「こちらです。」


紙にはボールペンで書いてあった。


『町田椿を迎えに来た。』


と。


「がう。」

「「「「はぁ!?」」」」


猛獣使いは椿だった。


黙っていた大将もつい声を荒げてしまった。全員が寝ている椿に注目した。


「うー。」

「キキー」


サルは椿の冷めたいくつかめの唐揚げを隣で頬張っている。


「がう。」

「クゥーン。」


猛獣たちは椿に群がり椅子から降ろそうとするが、コップなどを絶妙に避けて寝ているのでずらしにくい。


「がう。」


黒豹は尻尾でとった皿を女将に突き出す。


「え、あ、うん。ありがとうね。」

「がう。」

「キキー」

「キューン」


残念狼は無理だ。


皿を豹とサルで下げているという可笑しな光景が広がっていた。サルは途中でつまみ食いしているが。それから、我に返った男たちで椿の抱え込んでいる一升瓶を取り上げ、だらんとした体を豹とサルが上手く運んで狼の背に乗せた。それからどこから出したかわからないベルトをつけろと山本にお願い?し、椿は見事に狼に括り付けられていた。それでも尚起きない椿に全員が「こいつ大物」だなという感想をこぼした。


「はぁー、重労働のあとに重労働かよ。」

「そうですね。」

「がう。」

「キキー」

「ガウ。」


猛獣たちはひと吠えし店を出て行った。


「今度、椿ちゃんのおうちに押しかけようかしら。」


それすんの?と女将以外の全員が思った。


********


その後の猛獣たち、いや、雪子達はクロの幻覚魔法をマリアが解き、真っ黒な集団になったところでマリアは雪子に乗り、クロと雪子は影に潜り家に帰った。


因みに朝に目を覚ました椿はどうやって帰ったか記憶になかったのを不思議に思っていた。

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