任務前のオマケ
イズは、ルシナとの模擬戦を終えた後、シャワーを浴びていた。
両手で魔法を扱う、そんな事は人知を超えた神業だ。そんな光景を間近で見てしまったため、動揺を隠す事ができなかった。
シャワーを額から頬、首筋から体へと流れるように浴びた。そして髪はシャンプーで、体をボディソープで洗った。
自分は汗をかくと気になってしまうので、時間があればこうしてシャワーを浴びることを心がけている。
余談だが、最近肩こりが酷い。原因をあげればきりがないのだが、自分で揉んでもまたすぐに凝ってしまう。
体を流し終え、タオルで体の水分を拭き取った。頭はちゃんと乾かさないとボサボサになってしまうので、丁寧に乾かす。
まだ頭は濡れているが、体を先に拭き取り私服に着替えた。
髪を乾かすために作られた魔法がある。これは大変便利で、左手から熱風を出し、右手に櫛を持って髪を乾かす方法だ。
ハイド本部の地下室には仮眠室がある。男女別でわけられており、シャワールームもある。
今イズがいるのは、シャワールームの隣にある脱衣所だ。ここは洗面所と兼用している。
脱衣所を出て通路を歩いていると、いつも無表情のライザーとすれ違った。
「―ねぇ…」
イズが声をかけた。
ライザーは歩みを止め、少し間を置いてから―
「…なんだ」
「あーー…そこいいー」
「チッ…」
イズはライザーに肩を揉んでもらっていた。
あの後無理矢理お願いし、こうして揉んでもらっている。
「今舌打ちしたでしょ?」
「……」
無視。
「なんで無視するのー」
「……黙ってろ…」
そうこの男はいつも無視してくる。任務の時や仕事関係の事ならば自分から声をかけてくるが、そうでないときは基本無視だ。
肩揉みをしてくれているが、これも
『肩痛くて明日の任務全うできなそうだわー』
と言うと、無言で応じてくれる。万が一任務に支障が出ては困るからなのか、ただの優しさなのか…
いや後者は無いな、絶対に。
それにしてもこの男はマッサージ店を経営できるのではないかと思うくらいに、解すのが上手い。
いやマッサージだけでは無く、何でもこなしてしまう。それこそ本当に上手に。
普段ニヤケる事など一切しないイズだが、あまりの気持ちよさにニヤけてしまう。
「――そういえば…」
ニヤケていた顔をいつも通りに戻した。
その切り替えにライザーも気づき、口を開いた。
「なんだ…」
「ルシナがね、両手で魔術を使ったわ…」
「―――――」
イズの言ったことは、流石のライザーでも驚いたらしい。少しだけ表情にでていた。
「どういうことだ…」
「どういう事も何も、言った通りよ。応用魔法を両手で放ったの。最初は普通に左手だけで力が足りていなかった…。そしたら右手を突き出してもう一度詠唱したわ。そしたら右手からも…」
「わかった…」
ライザーはマッサージを中止し、考え込んでいるようだった。
「あと20分お願いーー」
「……」
結局その倍の40分マッサージした。




