#3 無駄だったの
大嫌い、大嫌いーー…大嫌い。
◆
儂にとって、お主が全て。
身分などに意味などないわ、この先、ずっと。
チックタク、チックタク…。
「この、ぎょぐだいぎらい゛…ごんな、悲恋歌、ぎぎだぐない…」
ボロボロー…溢れて止まらない、涙。
「きっと、すごい涙なんだろうね」
「う゛っざい゛…うぇ゛ー…」
何も言えず、終えるのなら、この命など必要ないわ!
問題など一つもないわ、あるのならーそれは…
儂の覚悟!
「いい、曲だとー…僕は思うんだけどね」
「あだしは…うっぐ! 大嫌いら‼」
スキ…スキ…スキ…スキ……
吉原・炎上! 吉原・炎上‼
「このAパートより、Bパートの方が、僕はなんとなく好きだなぁ」
教室の扉越しの会話が続く。
「…Bパート」
あちきにとってあんたが全て。
身分など関係なんて、この先、ずっと。
チックタク、チックタク…。
「相手の歌詞のところ、か…」
この曲は、殿と花魁の恋の物語。
いくら想っても叶わない恋。
いたずらに時間だけが流れていくーー死へのカウントダウン。
「君も死んじゃいそうだよね。恋に身を焦がして」
「…死にたい、よ」
高松は三上に、小さく答えた。
「もう、あんなに恋焦がれることなんて、ないよ…」
窓の外を見た。
「お子様だね」
「…いいもん。お子様でも…」
また体育座りをしている膝に顔を埋めた。
「死ぬなら、頂戴よ」
何も変わらず終えるのなら、この命など、必要ないわ!
問題など、一つもないわ、あるのならーーそれは…
あちきの覚悟でありんす!
スキ…スキ…スキ…スキ……
吉原・炎上! 吉原・炎上!
「高松の全て、を」
「…やらないよ。お前なんかになんて」
「振ったのに新垣にあげるの?」
三上の執拗な質問に、意味も分からずに、
「うっせェーー野郎だなァ‼ 消えなッッ!」
ただ、ただ高松も苛立つを抑えられない。
「誰にあげちゃうのかな」
しつこい。
粘着テープみたいだ。
「有留の奴にやろうかな! 全部‼」
有留はいい奴だ。
悪くはない。
ただーー新垣正ではない。
「ぅ…うう゛…あ、ぅあ゛…ッつ‼」
高松自身でも、どうしてだが分からないくらいに、胸の中が新垣で占められている。




