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#2 大事にしたかったの

 ボロボロと、涙が溢れて止まらない。

 それは、普段の高松からは想像できないことだ。


 名門秋月高校での高松の評判はこうだ。


『カッコいい~~!』『写真のモデルにさせてください』


 しかし、それでも高松には勝てない存在があった。

 同じ写真部の部長でもある、本田伊代だ。

 写真の腕も、欲しいものも、全部、持っている彼女。


 絶対に、彼女には勝てない。


「なぁ~~んて、思っているんじゃないの?」


 三上 朝昼アヒルが、高松の心を読むかのように言う。

 目障りで、腹ただしい。

 扉越しからでも、彼のにやけた顔が分かる。

「ぐっすッーー…」

 普段の高松なら。


『うっせ~~よ! カマ野郎がッッ‼』


 などと言い返し、ぶん殴っているのだが。

 失恋の今では、どんなことが起ころうとも、身体が動かない。

 それだけ辛い。


 なんで告白出来なかったんだろうなーー…

 あ゛~~無理だったからかぁ。


 椅子の上で体育座りをする。そして、顔を埋めている。


「ぅう゛う゛う゛……っひん! っふぐぅ~~」

 涙が止まらない。どうにも止まらない。


 分かってたんだぁ、あたしにゃあ、無理だってさ。


「そんなに泣いたら、目が明日、はれぼったくなっちゃうんじゃないの?」

「……ぃ゛い゛も゛ん゛! ぃいの、もぉいいんだッ」

「好きだったんだね。そんなになるほどにさ」

 三上が苦笑交じりに言う。

「ぅううう、っふぅ~~~ぅ゛あ゛っっ」

 ボロボロ。

 そんなとき。

 放送部が、何を血迷ったのかーー不謹慎な曲をかけた。

 このめでたい卒業式に。


 桃色の『吉原炎上』を……。


 世間では、桃色のベストソングは『青春』だった。

 そして、吉原炎上は青春のアルバムのために作られた、一曲だった。

 そこからファンからの熱烈な要望もあり、シングル化したのだ。


 この曲は、桃色自身の体験から生まれたものだ。

 身分違いの恋。

 それを桃色自身しか知らないことで、桃色が語らない限りは、制限ない想像をしてしまう。狙いかもしれないが。


「また。嫌いな曲、だァ……な゛ン゛でッーーい゛っつ゛も゛」


 自分の想い通りにならない。

 この世の中は、理不尽なものばかり。


「君が好きなは、これじゃあないもんね」

 三上が言う。彼は、彼女の趣味を熟ししている。


「……ストーカーぁ~~ぅあ、ぁあ゛あ゛あ゛‼」

「す、ストーカーは、言い過ぎなんじゃないのかなぁ~~やだなぁ~~」

「あんらってあたひいにからむんらよ~~ほおっておひいてよほぅ~~」

 ズビ、ズビ‼


 スキ、スキ、スキ、スキ…


 吉原炎上! 吉原炎上‼


「……ほんろ、このひょふーーやら……ぅ゛ッ!」

 

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