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【嘘……私の体力低すぎ?!】王立騎士学校の魔法使い  作者: 仁科異邦


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授業は難解だ


 自己紹介が終われば、さっそく過酷な剣術の授業が始まる……と怯えていた私だったが、幸いなことに(?)今週一週間は、徹底的な『座学』から始まるらしい。


 剣術の実技授業は来週からだという。

 少しだけ寿命が延びた気分だった。


 しかし、Aクラスの座学は、決して甘いものではなかった。

 Aクラスの生徒は、将来の騎士団を牽引する幹部候補生である。


 そのため、一般的な生徒が学ぶような基礎的な精神論だけでなく、高度な軍事戦術論、兵站管理、地形把握など、より専門的で実践的な内容が初日から叩き込まれるのだ。


「――このように、大規模部隊の展開においては、前線の維持以上に『補給線』の確保が最重要課題となる。各小隊への伝令網を途切れさせず、全体の士気を保つための……」


 白髭を蓄えた厳格そうな戦術学の教師が、黒板に複雑な陣形図を描きながら熱弁を振るっている。


 私は必死にノートをとろうと食らいついていたが、ものの五分で脳がショートした。

(わ、わからない……。専門用語が多すぎて、完全に異国の言語にしか聞こえない……!)


『遊撃部隊の機動的運用』だの、『局地戦における包囲殲滅陣形』だの、剣すらまともに振れない私にとって、それは全く想像もつかない別世界の概念だった。


 周囲を見ると、カトレアさんやマリアさんはもちろん、他の生徒たちも真剣な眼差しで教師の言葉を一言一句逃さまいとノートに書き留めている。


 私一人だけが、完全に置いてけぼりを食らっていた。

(だめだ、もう脳みそが受け付けない……。あーあ、これが『魔法学』の授業だったら、もっと楽しく聞けるのになぁ……)


 私はペンを握ったまま、すっかり馬耳東風状態になり、窓の外の雲を眺めながら現実逃避を始めていた。


 カレン先生に教わった魔法の基礎理論は、すごく難しかったけれど、パズルのピースが組み合わさるようで面白かった。


 『魔力を細分化して、大気中のエーテルに干渉させる』とか、『術式の基盤を安定させるために、魔力の供給ラインを保つ』とか……。


「……あれ?」

 私はふと、窓の外から黒板へと視線を戻した。 老教師が書いた『部隊の配置図』と『補給線の繋がり』を示す図解。


 それを見て、私の頭の中で、ある一つの閃きが走った。

(これ……魔法の『術式展開図』に、そっくりじゃない?)


 私は目を見開いた。

 もし、この『前線の騎士たち』を『放出した魔力』に置き換えてみたらどうだろう。


 そして、後ろから物資を届ける『補給線』を、術者の体内から送り出される『魔力供給ライン』に置き換える。


 『伝令網』は、術式をコントロールするための『意識の連結』だ。


(大規模な部隊(魔法)を展開するには、前線(効果範囲)だけを広げてもダメで、後ろからの補給(魔力供給)が途切れたら崩壊(霧散)する……。

あ、これ、カレン先生が言ってた『大規模魔法は魔力の供給過多になると術式が破綻する』って理論と全く同じだ!!)


 自分でも驚くほどのスピードで、黒板の難解な戦術図が、私の頭の中で『魔法理論』へと自動的に翻訳されていく。


 全く理解できなかった異国の言語が、突然、母国語のようにスラスラと頭の中に入ってきたのだ。


「なるほど、なるほど……! そういうことか!」

 私は急に目を輝かせ、無我夢中でノートにペンを走らせ始めた。


『部隊Aの孤立を防ぐためには、後方支援Bからの継続的な……』という戦術論を、『火球(部隊A)の威力を維持するためには、内なる魔力(後方支援B)の継続的なパス確保が必須』という風に、自分なりの解釈を交えながら書き留めていく。


 教卓からその様子を見ていた老教師は、最初からずっと虚無の顔をして窓の外を見ていた落ちこぼれ(私)が、突然何かに憑かれたように猛烈な勢いでノートを取り始めたのを見て、小さく目を丸くしていた。


(ほう。初日のこの高度な内容を、あの猛烈なスピードで理解し、独自の考察まで書き加えているのか……。

なるほど、さすがはティラミス家の令嬢。

ただの不真面目な生徒かと思ったが、その頭脳は本物のようだな)


 またしても、教師陣の間に強烈な誤解の種が蒔かれた瞬間であったが、魔法理論の応用でテンションが上がっている私は、そんなことには全く気付いていなかった。

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