5話 アリスの手がかり
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
「アリスの手がかりか?」
クリスは、岩陰に駆け寄り、光る物体を拾い上げる。
「……! アリスの杖の先端……!」
涙ぐみながら、小さな水晶のかけらを胸に押し当てる。
「この子……わざわざ目立つように魔力を残してくれたの……!」
ふと水晶が指す方向を見て、はっとなる。
「グレイ! この先……海の向こうに島が見えます! あそこに……!」
興奮してグレイの腕を掴み、指差す手が震えている。
「そうか⋯ならば、翌朝漁船に乗せてもらい上陸しよう。良かったな、クリス。手がかりが見つかって」
グレイの口角がわずかに上がった。
クリスは、水晶のかけらを大切にマントの内ポケットにしまい込み、涙をこらえながら頷く。
「はい……! グレイのおかげです……」
ふと港の漁師たちを見て、不安そうに眉をひそめる。
「でも……魔王の手下が漁師たちに化けている可能性も……。グレイ、どうやって船を探しましょう?」
グレイの鎧の袖をそっと引っ張りながら。
「私、変装用のマントを持ってます。これで正体はばれない……はず」
「魔物が化けている可能性か⋯それは否定出来ないな。その変装用のマントを使おう。クリス、良く気がついたな」
グレイは、満足そうに笑みを浮かべた。
「船乗りには、俺が声をかけよう。知り合いの船乗りがいる。彼ならば、おそらくは大丈夫だとは思うが、念には念を入れよう」
クリスは、マントを素早く羽織り、髪の色まで茶色に変化させる。
「ふふっ……こうすれば、ただの旅の魔法使いに見えますか?」
グレイの笑顔に安心したように、クリスの顔もほころぶ。
「グレイの知り合いの方なら……きっと信頼できますね」
港の方へ歩きながら、ふと不安げに。
「でも、もしもの時は……私、ちゃんと戦えますから!」
杖を握る手に、前より確かな力がこもっている。
「これは⋯! 全くクリスとは分からない! 凄いアイテムを持っているな!」
あまりの変わりように、流石のグレイも驚き、興奮を隠せない。
「これならば、余程の事がない限りバレないだろう」
照れくさそうにマントの裾を弄りながら。
「えへへ……王家の……いえ、故郷の大切な宝物なんです」
ふとグレイの驚いた表情を見て、嬉しさが込み上げる。
「グレイが褒めてくれて……すごくうれしい」
港の雑踏に近づくにつれ、自然と声を潜める。
「でも、魔力感知には弱いから……魔物が近くにいたら、すぐ教えてくださいね」
知らず知らずのうちに、グレイの影にぴったり寄り添う。
「承知した。では、明日の準備を始めよう」
グレイは、知り合いの船乗りに声をかけ、翌朝、船に乗せてもらえる事になった。
その後、道具屋へ行き、薬や食料を買い、宿屋に泊まることにした。
クリスは、宿屋の部屋でマントを脱ぎ、ようやく肩の力を抜く。
「ふぅ……一日中変装してたら、ちょっと疲れちゃった……」
買い込んだ薬草をテーブルに並べ、真剣な面持ちで調合を始める。
「グレイ、これ回復薬です。岬の島で役立つかも……」
ふと窓から見える海を見て、瞳を細める。
「明日はきっと……アリスに会えますよね?」
不安そうに、でもどこか希望に満ちた声で。
「回復薬の調合ありがとう。見事な薬だ。これならば重症も癒えよう」
グレイは、回復薬を手に取り感心した。
「アリスには、きっと会えるさ⋯」
グレイは、一息ついた。
(そろそろ、頃合いか⋯ストレートに聞くか⋯いや⋯誰かに聞かれるとまずいかも知れん⋯)
「クリス⋯」
グレイは、筆談で
「君は、ルナ王家の王女か?」
と、記した。
グレイは、少し手汗をかいている。
(緊張している⋯この俺が?)
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