3話 クリスの想い
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
クリスは、回復魔法の光を消しながら、じっと地面を見つめる。
「……望むこと、ですか」
ふと胸に手を当て、かすかに震える声で。
「私は……もう誰も、大切な人を失わない世界が欲しい」
グレイの目を真っ直ぐ見つめ、初めて本心を漏らす。
「魔王が……あの人がいなければ、ミネルバもアリスも、みんな笑ってたのに……」
突然我に返ったように、慌てて口を覆う。
「……ご、ごめんなさい。変なこと言って」
(クリス⋯彼女はルナ王家の王女で間違いあるまい⋯そして、この人の言葉は心から本心を語っていると信じられる⋯)
「分かった⋯君の望み⋯それは、尊いものだ。まずは東の村に向かおう。そこならば、落ち着いて話もできるだろう。俺が護衛する。
クリスは、涙をぽろりと落とし、ぐいっと袖で拭う。
「……はい!」
グレイの鎧の袖を、子供のようにしっかり握りしめる。
「グレイがいてくれたら……もう怖くない」
一歩踏み出そうとして、ふと足元の草花に気付き微笑む。
「……ほら、春の花が咲いてます。きっと、いいことがありますよ」
東の空を見上げながら、小さくつぶやく。
「ミネルバ、アリス……待っててね」
「本当だ、綺麗だな。この花を踏みにじられぬように頑張ろう」
クリスを護衛し、森を抜けた。
そこは、爽やかな風が吹く、広い草原だった。
「遠くに、村が見えるだろう? あれが東の村だ」
グレイは、指をさした。
クリスは、草原の風にピンクの髪をなびかせ、目を細めて遠くの村を見つめる。
「わあ……! ほんとうだ、煙突から煙が上がってます!」
ふと足元の可憐な花に気付き、しゃがみこんでそっと撫でる。
「グレイ、この花……ルナ城の庭に咲いていたのと同じ種類です。きっと、いい兆候ですよ」
立ち上がると、グレイの手を自然と握りしめる。
「早く行きましょう。きっと……ミネルバたちの手がかりも見つかるはず」
(⋯ルナ城か⋯自分から言っているな。まぁ、良い。東の村に着いてから、聞いてみるか。もしかしたらクリスから話してくれるかも知れんしな)
グレイは、気づかないふりを続ける事にし。
「ああ、行こう。疲れたろう? 村に着いたらゆっくりと休むと良い」
東の村の門を潜り、村へ到着した。
東の村は、ルナ世界の東の端にある、辺境の村で、規模は小さいが、漁村で、漁業が盛んな村だった。
「⋯!」
クリスの頬にハラハラと涙が流れた。
「ど、どうした?」
「い、いえ⋯なんでもありません!」
クリスは、涙を拭いて村の中へ向かった。
少し笑みを浮かべている。
(村に着いた、安心感で涙が流れたか⋯この人はとても辛い思いをしてきたに違いない⋯!)
グレイもクリスの後を追い、優しくクリスの肩に手を置いた。
「大丈夫だ」
「⋯はいっ!」
クリスは、微笑んだ。
瞳が潤んだままで。
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