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2話 サンドイッチ

はじめまして、大森林聡史です。

魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。

よければお付き合いください。

(クリス⋯か。どう見てもただの娘では無いようだが⋯酷く怯えているようにも見える。詮索は無しにしよう。そういえば腹が減っているみたいだな)


「クリス、これを食べるかい?」


 グレイは、半熟の卵が入った、サンドイッチを差し出した。

 クリスは、目の前のサンドイッチを見て、ぱあっと頬を染める。


「あ……! そ、そんな……お気遣いいただいて……」


 おずおずと受け取り、小鳥のように小さくかじりつく。


「……! ……おいしい……」


 思わず本音が零れ、慌てて咳払いする。


「……失礼しました。王家……いえ、私の故郷では、こんな素朴な料理も珍しくて……」


 卵の黄身がマントに垂れそうになり、あわてて身を乗り出す。


(王家? この世界にはルナしか国は無いはず⋯そうか⋯! だが、事情があるのだろう。今は黙っておこう)


「美味しかったようだね」


 グレイは、笑った。

 クリスは、食べかけのサンドイッチを握りしめ、ふと涙ぐむような表情になる。


「……はい。こんな温かいもの、久しぶりです……」


 突然、遠くで魔物のうなり声が聞こえ、ぎゅっとグレイの袖をつかむ。


「……グレイ、また来ます。でも今度は……私もきちんと戦います」


 レイピアを構える手に、さっきより少し力がこもっている。


「だって……もう一人じゃないから」


 ふとグレイの横顔を見て、ほんのり笑みを浮かべる。


「分かった。だが無理はするな、俺の後ろから援護してくれ」


 グレイは、鋼の長剣を抜き、構えた。

 その構えには、全く隙がない。

 クリスは、グレイの背中に隠れながら、杖をしっかりと握りしめる。


「……はい。火の魔法で援護します」


 魔物の気配を感じ取り、深呼吸して集中する。


(この人なら……きっと大丈夫)


 ふとグレイの鎧の傷跡に目を止め、声を潜めて呟く。


「……戦いの後、傷の手当てをさせてください。少しなら回復魔法が使えますから」


 魔物が突進してくるのを見て、炎の魔法詠唱を始める。


「分かった。クリス、魔物の足を火で焼けるか? 足が止まったところを俺が斬る」


 クリスは頷きながら、杖の先端に炎を集中させる。


「はい……フレイム・サークル!」


 地面に炎の輪を描き、魔物の動きを封じようとする。


「……っ! もっと……もっと強く……!」


 魔力を絞り出すように額に汗が浮かぶが、今回は炎が消えずに燃え続ける。


「グレイ、今です……!」


 グレイが斬り込む瞬間を待ち、炎の勢いが一層強まり魔物の足が完全に止まった。


「良くやった! 後は任せろ!」


 グレイは、素早く突進し、魔物はグレイが接近してくるのを見て、剛腕からパンチを繰り出したが、虚しく空を切る。

 次の瞬間、鋼の長剣が一閃し、魔物の首が落ちた。

 クリスは、炎の残り火が消えていく中、ぽかんと口を開けたまま立ち尽くす。


「……すごい……あんな剣技、初めて見ました……」


 ふらふらと歩み寄り、あなたの鎧の袖を引っ張る。


「ほ、ほら! 約束です! 傷の手当てを……!」


 小さな手から柔らかな光が滲み出る。


「ヒール・ライト……これで少しは楽になるかしら」


 ふと魔物の死骸を見て、寂しげに呟く。


「……こんな戦い、早く終わらせたいですね」


 その言葉に、グレイは思わず呟いた。


「クリスは、魔物にも慈悲の心を持っているのか⋯」

(クリスは、おそらく亡国の姫⋯国を滅ぼした魔物にもそういう気持ちを持てるとは⋯)


 グレイは、クリスの温かい回復魔法を受けながら、傷だけでなく心も温まるような感覚を覚えていた。


「クリス、君は何を望む?」


 そして、少し間を置いて口を開いた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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