28話 グレイの過去
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
ミネルバが震える腕でアリスをぎゅっと抱きしめる。
「……バカ……! 無茶しないで……!」
普段は男言葉の彼女が、涙声で妹の頭を撫でていると、とうとう耐えきれずに、ポロポロとミネルバの頬を涙が伝う。
「お姉ちゃん……痛いよ……」
アリスが弱々しく笑いながら、ミネルバの鎧に顔を埋める。
クリスがそっと二人に毛布をかけ、グレイと視線を交わす。
「……グレイ、私たち……強くなれた?」
グレイが頷き、村の復興を始める人々を見渡す。
「ああ。もう……俺一人じゃない」
夕日が四人を包み、絆の深まりを静かに祝福する。
村を救った事で、この日は一泊することになり、その夜、クリスがふとグレイに訪ねた。
「何だか、今日のグレイはいつになく熱くなってたような⋯? 何かあったの?」
グレイはおもむろに口を開いた。
「⋯俺は元々は孤児でな。孤児院で育ったんだ。だが、10歳くらいの頃、その孤児院が盗賊団に襲われた」
クリスは、ゴクッと息を呑む。
「皆が次々と殺される中、俺は盗賊の剣を奪い、無我夢中で戦った。気がついたら、盗賊達を皆殺しにしていた」
アリスが震える。
「その後、俺は盗賊団に追われる身になり、追手を倒しても倒しても、奴等はしつこく追ってきた。そして剣が折れ、俺は追い詰められた。その時、ヨーバ様に救われた」
ミネルバは、ヨーバの名を聞き
「剣聖ヨーバ様か⋯?」
「そうだ⋯俺はヨーバ様に剣を教わった。しかし、そのヨーバ様も10年ほど前に病で亡くなり⋯その後、用心棒をするなりして金を稼いだが⋯納める鞘が見つからずにいた⋯が⋯」
グレイは、クリスに跪いた。
「私の剣は、アローラ様に捧げます。あなたが私の剣を納めて下さい」
「……グレイ……」
クリスの瞳に涙が光り、震える手を差し出す。
「……そんな……悲しい過去を……」
ミネルバが深く頭を下げ、鎧がきしむ音を立てる。
「姫……我々も……ずっと……」
アリスが泣きじゃくりながら、クリスの裾に触れる。
「アローラ姫……お願いします……」
クリスが三人の頭にそっと手を置き、声を震わせる。
「……いいのよ……立って……!」
月明かりが四人を照らし、深い静寂が訪れる。
「私は……あなたたちを……絶対に……!」
四人の運命が強く結ばれ、夜明けの光が差し込む。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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