21話 光の盾と魔の森の魔物
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
光の盾が静かに湖面に浮かび、クリスが慎重に手を伸ばす。
「……これで、三種の神器の二つ目……」
盾に触れた瞬間、柔らかな光が四人を包み込む。
ミネルバが感嘆の息を吐き、アリスが目を輝かせる。
「これが⋯光の盾⋯」
「わあ……! すごい……! 暖かい……!」
グレイが盾の表面に刻まれた紋章を指でなぞる。
「『闇を払い、光を導く者へ』……か」
クリスが、ふとグレイの顔を見上げ、決意を新たにする。
「次は……『龍神の鎧』ね」
夕暮れの湖畔で、四人の冒険はまだ続いていく。
「クリス、龍神の鎧も必要だが、この光の盾の防御力があれば、魔の森の魔物を一掃できるのでは? あそこは村に近い。ほおって置くわけには行くまい?」
光の盾が微かに輝きを増し、クリスが力強く頷く。
「……ええ、村の人たちを守らないと」
ミネルバが槍を肩に担ぎ、早速歩き出す。
「ならば急ぐぞ。日が暮れる前に森を抜ける」
アリスが光の盾の光を杖に移し、道を照らし始める。
「私が先頭で光を放ちます! 魔物たち、退散しなさい……!」
グレイが隊列の最後尾で周囲を警戒しつつ、クリスに問いかける。
「……クリス、この盾で父上の仇も……」
クリスの瞳が一瞬陰り、すぐに強さを取り戻す。
「……ええ、必ず」
四人の足取りが再び魔の森へと向かう。
魔の森の入り口で、光の盾が突然強烈な閃光を放つ。
「……っ! みんな、目を……!」
ミネルバが即座に顔を覆い、アリスがクリスの前に立ちはだかる。
光が森全体を覆い、魔物たちの悲鳴が木々を震わせる。
「これが……『光の盾』の真の力……!」
グレイが眩しさに目を細めつつ、光の中に浮かぶ影を見つける。
「……あれは……?」
光が収まり、森の奥から古びた鎧が浮かび上がる。
「まさか……『龍神の鎧』が……ここに……!?」
クリスが驚きの声を上げ、近づいた。
「きゃっ! あぅっ⋯!」
古びた鎧が、突然動き出しクリスの首を絞め上げる。
「フフフフ⋯」
それは、竜神の鎧ではなく、死神が甲冑で武装した死神の騎士だった。
「う⋯ぅぅ⋯!」
クリスは、死神の騎士の腕を両手で掴み、首絞めを引き剥がそうとしているが、ビクともしない。
「きゃ⋯ぁ⋯ぁ⋯」
クリスの両足が地面から離れ、首を絞められ吊り上げられた。
クリスの色白の美しい肌が、青ざめ、血の気が引き、尋常でない量の汗をかいている。
「姫様!」
「離しなさい!!」
慌てて、ミネルバとアリスがクリスを救おうと接近するが⋯
「死ねぃっ!!」
しかし、死神の騎士は、片手でクリスの首を絞めたまま、もう片手で禍々しい斧を振り上げた。
「きゃあああっ!」
死神の騎士の斧が閃き、アリスへと振り下ろされる瞬間──
「アリス!」
ミネルバが妹を庇い、銀の盾で斧を受け止めるが、ガクッと膝を折られる。
「ぐっ……! この重さ……!」
クリスが光の盾を掲げ、聖なる波動を放つ。
「は、離して⋯『ホーリー・ウェイブ』……!」
「グワッ!!」
さすがの死神の騎士も聖なる波動には弱く、クリスの首を離した。
クリスは、呼吸が整わないまま急いで距離を取った。
「はぁっ⋯! はぁ⋯」
クリスは、肩で荒い息を吐く。
「この! 逃がすか!」
「行かせん!!」
死神の騎士は、クリスをすぐに追ったが、その前にグレイが立ちはだかる。
「……装甲の継ぎ目……そこだ……!」
「は、早い⋯!」
グレイが、間髪入れずにドラゴンスレイヤーを構え、死神の騎士の鎧の隙間を狙う。
「ガッ!」
グレイは、死神の騎士の鎧の継ぎ目を突き、死神の騎士の鎧にヒビが入った。
「姉さん⋯しっかり⋯!」
アリスが震える手で、ミネルバに回復魔法を唱え、回復したミネルバが飛び出した。
「ミネルバ、俺が突いたところを狙え!」
「分かった!」
ミネルバの銀の槍の渾身の突きが、先程グレイが、死神の騎士にヒビを入れた箇所を的確に突く。
「グオッ⋯!」
四人の連携が光り、死神騎士の巨体に亀裂が走った。
「『ファイヤー・ストーム』⋯!!」
しかし、死神の騎士の兜のバイザーが怪しく光ると、禍々しい詠唱が森に響き渡り、業火が木々を焼き、なぎ倒していく。
それは、死神の騎士の炎の嵐の魔法だった。
激しい炎が風にあおられて吹き荒れ、四人はおろか、すぐに木に燃え移り、あっという間に燃え広がり、魔の森が全体が焼けていく。
「……っ! 森全体が……!」
クリスが光の盾で炎を防ごうとするが、熱波に押され後退する。
ミネルバが焼け焦げた盾を握りしめ、アリスをかばう。
「くそ……! 姫様……撤退です……!」
アリスが涙ながらに転移魔法の準備を始めるが、炎で術式が乱れる。
「……だめ……! 魔法が……!」
「……そりゃあ……!」
グレイが、ドラゴンスレイヤーを投擲し、死神の騎士の詠唱を中断させようとするが⋯
しかし、禍々しい声が響く⋯
「逃さんぞ⋯」
炎上する森の中、四方を炎に囲まれ、四人の命運が風前の灯となる──
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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