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20話 影竜の恐怖

はじめまして、大森林聡史です。

魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。

よければお付き合いください。

 影竜の絶叫が湖全体に響き渡り、巨大な体が崩れ落ちる。


「……やった……!」


 クリスがグレイの元へ駆け寄り、血まみれの顔を拭おうとする。


「グレイ……! 無茶しすぎ……!」


 ミネルバが影竜の亡骸を確認し、満足そうに頷く。


「……流石だ」


 アリスが湖面に手を触れ、光の粒子が集まり始めるのを感じる。


「みんな……! 湖が……!」


 濁った湖水が澄み渡り、中心から光り輝く盾が浮かび上がる。


「『光の盾』……!」


 四人の疲れきった顔に、安堵の笑みが浮かぶ。

 クリスが光の盾に触れようとした瞬間、足に触手が巻き付き、湖の中に引きずり込まれた。


「キャーッ!!!」


 水面が突然割れ、クリスの悲鳴が響く。


「姫様……!?」


 ミネルバが即座に湖へ飛び込もうとするが、グレイが先に行動する。


「待て……! 奴はまだ生きて……!」


 エクスカリバーが湖底へ沈んでいくのを確認し、グレイがドラゴンスレイヤーを構える。


「アリス……! 光の盾で湖を……!」


 アリスが震える手で盾を掲げ、涙ながらに唱える。


「『レイ・ディバイド』……!」


 湖水が光の刃で真っ二つに割れ、クリスを巻く触手の主──影竜の残骸が晒される。


「グレイさん……今です……!」


 グレイが割れた湖底へ飛び込み、クリスへと手を伸ばした。

 しかし、影竜の残骸はゾンビになってうごめき、クリスを奥に引きずり込み、グレイはクリスの手を掴めなかった。


「はぁっ⋯! はっ⋯! う⋯!」


 湖底でクリスが、触手に首を絞めつけられ、顔が紅潮し、苦しそうに喘ぎながらも、片手で触手を掴んで引き剥がそうとし、もう片手で、エクスカリバーに必死に手を伸ばす。


「……くっ……! グレイ……! た、助けて⋯!」


 ミネルバが狂ったように槍を投擲し、触手の一部を切断。


「うおおおっ!! 姫様を離せ……! この……!」


 アリスが光の盾を高く掲げ、湖水全体を浄化しようとする。


「『セイント・パージ』……!」


 グレイが高々と飛び、ドラゴンスレイヤーを影竜の核目掛けて突き刺す。


「これが……最後だ……!」


 ゾンビ竜が崩れ落ち、クリスがグレイの腕にすがりつく。


「……はぁ……はぁ……ありがとう……」


 クリスの瞳に涙が浮かび、首は赤く腫れている。

 光の盾が静かに二人を包み込み、湖面が再び閉じる。

 グレイは、クリスを抱きかかえて、見事に着地。


「これが本当のお姫様抱っこ⋯だな」


 ニヤリと笑った。

 全身びしょ濡れのクリスが、グレイの腕の中で顔を真っ赤にする。


「……ば、馬鹿……! この状況で……そんな事言う……!?」


 ミネルバが呆れ顔で銀槍を回収しに来る。


「……姫をからかうとは、いい度胸だ」


 アリスがクスクス笑いながら、乾燥魔法をかける。


「グレイさん、クリス様の心臓がバクバクですよ……?」


 クリスがグレイの胸に顔を押し付け、小さく拳で叩く。


「……もう……みんな……馬鹿……」


 夕日に照らされ、四人の笑い声が湖畔に響き渡る。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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