第4話 過去最強
"重撃"使いの大沢隆志が互いに被害届を出さなかったため、俺に前科がつくことはなかった。
しかし、先に殴ったのは大沢であるということを俺が主張しなかったため、厳重注意を受けることに。
そして、翌朝になった。時刻を確認すると、午前九時。
ちょうどいい時間なので、ダンジョンに向かう。
「入場料五千円、頂戴いたします」
受付では入場料がとられる。
この西野ダンジョンは、ダンジョンとなる前の土地を持っていたのが合代不動産という会社だったため、合代不動産によって運営されている。
「武器の貸し出しはいかがなさいますか?」
「いらないです」
ここで貸し出しを希望する場合、追加で一万円徴収される。初心者は武器の破損を起こしやすいためだ。
俺はマイ剣を持っているので必要ない。
「さて、今日も受付は突破」
なるべく顔出しをせずにダンジョン配信者スレイヤー配信を行っているが、いつバレるか不安で仕方がない。今度仮面とか買おうかな。
「さてさて、今日も目ぼしい配信者を探しますか!」
ダンジョン内は暗く、人も少ない。こういう場所でないとリア充狩りなんてできない。
「たいしたことない機材のやつは無視」
配信始めたてのひよっこであることが多く、弱いものいじめは俺の趣味ではない。
主な判断基準は、ゴ〇プロであるか否か、自撮り棒だとして機種が高性能のアイ〇ォンかどうかと、固有能力の派手さ。
周囲を見渡す。魔力を目に多めに集めることで、全体的に視力が上がる。
「お、いい感じのいるじゃん」
派手な固有能力を使っている。機材も、おそらく最新のア〇フォン
遠目に見る限りでは、固有能力は炎系。
「たぶん"火炎放出"とかだろうな。上位系の固有能力にしては出力が低い。っていうか、ダンジョンで火使うなよ。一酸化炭素中毒怖いだろ」
固有能力にはもちろん良し悪しがある。炎系の能力は派手であり火力も高いので、当たりの部類だ。
「さーて、どう調理しようか」
剣を構える。足に魔力を集中させ、一気に踏み込み。
配信者の手持ちカメラに肉薄する。
配信者は、咄嗟に反対側の手に持つ剣で防いだ。
「防ぐか、やるな」
俺の最高速の初撃にもかかわらず、片手で受け止める。
「何者だ」
「ダンジョン配信者スレイヤー。伝わらないだろ」
「最近話題のやつか、厄介だ。西野に潜っていることはわかっていたのに」
……俺の足取りを、把握している。
優秀な配信者だ、きっとリア充に違いない。
「配信はここで終わりだ。カメラ持って配信者スレイヤーとやるのはリスクが高すぎる」
カメラに向かって告げて、彼は配信を終了した。
「リア充め。許さない!」
「そうか。――返り討ちにしてやる」
踏み込み。先に動いたのは俺!
しかし、両手で剣を持った彼の膂力は強く、弾き返され、逆に吹き飛ばされる。壁に背中を強打。
「超強いじゃねえか……」
「だらだらするな。こちらから行こうか?」
「勘弁」
最高速の攻撃でも通らない。受けられる前提なら、"神威"のように一撃特化の攻撃をする必要があるか。
最悪、剣を捨ててさらに速度を上げるか。
「一撃必殺だ」
全魔力を、上半身に!
渾身の振り下ろし攻撃は、しかし速度が足りず回避される。
「その筋力と速度――魔力強化だけでそれなら、ダンジョン適性抜群だな」
ダンジョンでは、いつ危険に襲われるかわからない。
そのため、遠距離攻撃よりも近接の実力の方が重要視される傾向にある。
「来ないなら、"火炎放出"で焼いてもかまわない」
「お前も固有能力開示かよ。メジャーすぎだろ」
「これは固有能力強化のためではない。お前には、そのくらいのハンデが必要だろう」
偉そうな物言いのくせして、実力が伴っているから何も言えない。
「仕方ない、剣捨てるか」
俺は床に剣を放り投げる。
剣は結構値が張るし、魔拳流の技は誰彼構わず見せたいものではないが……。
「命の危機だ」
これまで戦った中で、最強の相手。
剣《油断》は捨てた。
拳《本気》に賭けよう。




