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ダンジョン配信者スレイヤー、配信妨害していたらダンジョン攻略ギルドで最上級攻略者に推薦されてしまう……  作者: ナナシリア


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第3話 ダンジョン外暴力はシンプル暴行

 ――鋭い魔力の感覚。固有能力が近くで発動された。


 闇討ちかな?


 周囲を見渡す。


 闇に紛れて拳を振りかざす男と、目が合った。


 慌ててバックステップ。


「魔力ってすごいよな、目に見えないのにこんなに気配が濃い」


「風とかもそうだろ」


「確かに。でもやっぱり魔力は、そういう自然現象に比べて異端だよな。修練次第で自由自在に操れるし」


「……」


「カメラつけてもいい? 闇討ちなんて滅多にされないからさ、動画にしたいんだ」


「殺すッ!」


 どうやらカメラはつけさせてもらえないみたいだった。


 俺に接近するその動きは、決して速くない。ひらりと身をかわす。


「遅いな。固有能力使ってそれ?」


「俺の術式は、"重撃"。効果は、打撃の威力強化。速度には関与していない」


「術式って言うタイプなのか。呪術廻〇読みすぎ」


 固有能力は、リスクをつけることで効果が向上する。


 彼は、自ら固有能力を開示するというリスクを背負うことで、固有能力の強化を行っているのだろう。


 〇術廻戦の「縛り」みたいなものだ。

 まったく、この世界にダンジョンを作った神様は、よっぽど呪〇廻戦が好きなのか。


「当たらなきゃ意味ないぞ」


 またも、直進。


 俺が同様に身をかわすと、彼は細かいステップを踏んだ。打撃が当たる。


「正面からぶつけようか」


 右手に魔力をありったけ。


 ついでに、今後数分間の「魔力を使わない」という制約。


「呪力がっ……!?」


 対面の男が、見るからに目を見開くから面白い。


「魔拳流奥義"神威カムイ"」


 濃密な魔力が拳の一部分に集中され、黄金色を帯びているように見える。濃い魔力が神々しい色に発光するから、この名がつけられた。


 俺は、拳撃を繰り出す。


 拳が男の腹を貫く。


「徒手空拳で俺に挑むのは、早すぎだ」


 返答は吐血。


「……やりすぎた」


 相手は固有能力による能力強化を施していた。素手で殴りあっても勝機は薄かった。


 だが、「縛り」を活用することで、固有能力を使わずとも相手の打撃に対応可能。


 リスクを背負うことで強化できるのは固有能力だと言ったな、あれは嘘だ。固有能力以外でも、あらゆる能力が強化できる。


「よくも、よくも俺の弟を……!」


 俺は即座にカメラを取り出し、再生ボタンを押す。


「君、俺のこと殺すつもりだったよね」


「もちろんだ、弟の仇だぞ……」


 正当防衛、成立。


「なんとか、助かった……」


 俺は呟く。


 それは、カメラに向かって不安をアピールするためであり、犯罪者にならずに済んだという安堵。


「救急車呼ばないと」


 腹を貫いただけだから、当たり所によっては生きられるかもしれない。そうすれば、俺が重罪を背負うリスクも減る。


 カメラを切って、警察と救急に電話。


「救急車が到着するまで、五分くらい耐えてくれ」


「死んでも耐えるさ」


「死んだら意味ないだろ」


 俺は捻くれているし、ジャ〇プよりもなろう系を読むから、冷笑系になってしまった……。


「さっき、何をした。呪力出力の割に筋力が明らかにおかしい」


 こいつは腹に穴が開いてるのによく喋れるよな。


「手の内を明かすわけない……って言いたいところだけど、お腹やっちゃったしお詫びに答えよう。俺がしたのは、強いリスクを背負うということ」


「どんなリスクなんだ?」


「いくつも重ねてるんだが、まずは一つ、あの瞬間拳以外の魔力をすべて捨てた。そうすることで、攻撃を受けて大ダメージを食らうリスクを背負った」


 ダンジョンに日常的に潜る人間は、無意識のうちに全身を魔力で覆うようになる。その防御を捨てるというリスクを背負い、攻撃力を大幅に向上させた。


 また、魔力による速度などの身体強化全般もすべて拳以外は捨てている。


「次に、今後数分間魔力を使わないというリスク。これは説明するまでもない、大きなリスクだ」


「まだあるのか?」


「もちろん。俺が最後に背負ったリスクは、『魔拳流』」


「は?」


「俺の技を、流派として名づけることで、手の内がバレるリスクを背負ったんだ」


「無名流派なんだから、ノーリスクだろ」


「それが違うんだな。結局は俺の意識が大きく反映される。俺からしたら、いつ『魔拳流』が有名になって手の内が多くの人間の周知のものになるかわからん。この状況が、大きなリスクになっているんだ」


 屁理屈のようだが、ダンジョン関連のものは人類が思っているよりも「自分自身」の主観が反映される。


 俺は、魔拳流のポテンシャルを信じている。いつかこの技が有名になることを。


「お前、術式は?」


「明かさない。俺にとって固有能力は奥の手だ。そこまで明かすのはリスクが大きすぎる。余裕で勝てる相手にすることじゃない」


 ゆっくり話していると、大きなサイレンの音が聞こえる。救急車の方が先に到着したみたいだった。


「俺、正当防衛ってことでいいよな?」


「ああ。弟の敵討ちに失敗して、その上罪から逃れようなどという恥を背負うつもりはない」


「……お前、すごい奴だな」


 この潔さ。俺には持てない。


 それに、固有能力も悪くない。

 見栄えする能力ではないが、ダンジョン適性の高い固有能力だ。


「そうか?」


「そうだ、かっこいいぞ」

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