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わたくしと七人の男の子と王子サマ2

光を反射する小川のせせらぎを聞きながら、溢れんばかりの花を眺めるのは、とても目に優しい光景でございます。

しかしながら悪戯に命を摘むことはありません。

お城で暮らしている間から思っていましたが、花の命は短くて、切り落とした命はなお儚いものです。

わたくしは地面に根ざしている花を好みましたが、母は豪奢な花を部屋に飾るのを好みました。

様々な薫りが入り混じり、目にも痛い色彩の室内は最後まで慣れることはありませんでしたが、私が居なくなっても変わらないのでしょうか。

もう二度と足を踏み入れたくもありませんけれど、母の顔を思い浮かべれば懐かしさも感じます。

健気に太陽に向かって真っ白な花弁を開かせた花に指先を触れてみれば、シルクよりも滑らかな感触が伝わりました。

思わず微笑みが浮かんでしまい、噛んでも殺しても止まりません。

この場にグランビーさんがいらしたら、とうに雷が落ちていたに違いありませんが、今日の私の同行者には怒声を上げる場面など想像出来ないスリーピーさんとドーピーさんしかいらっしゃりませんので穏やかに時は過ぎていきます。



「ねぇ白雪~、ドクに頼まれていた植物はぁ、これでよかったんだっけぇ?」

「はい、そうでございます。わたくしの記憶する特徴と酷似しておりますので、多分それで間違いはないかと存じます」

「白雪の記憶力はぁ、ドクのお墨付きだもんね~。ドクが知識においてぇ、誰かを認めるなんて滅多にないしぃ、白雪がこれって言うならぁ、これで決定だよ~。ねぇ、プー」

「zzzzzzzzz」


プーとはドーピーさんがスリーピーさんにつけたあだ名にございます。

わたくし、始めはこの『プー』は、スリーピーさんの名前の最後の『ピー』の部分が訛ったからかと信じておりましたが、先日ドーピーさん本人から否定されました。

ドーピーさん曰く、この『プー』は、凄く大きい鼻ちょうちんをぷーぷーしていたから『プー』なのだそうです。

わたくしはスリーピーさんとお会いしてから初めて鼻ちょうちんなるものを目にしましたが、確かにあれは名前につけたくなるほど見事なものでした。

同じ黒髪でも、くるりとした巻き髪のわたくしと違い、スリーピーさんの黒髪はすっとした真っ直ぐで艶やかなものです。

一本一本にキューティクルが行き届いておりまして、女として羨ましいほどでございます。

長い前髪でお顔が隠れてしまっておりますが、その下の素顔は綺麗と格好いいの狭間で揺れ動く麗しきご尊顔です。

美醜で言えば、ドーピーさんも負けておりません。

おっとりとした雰囲気に似合う緩やかな天然パーマの前髪の部分をクリップで留めて、まろい頬を淡く染めつつお話しになる様子は、男の子にしか見えないのに可愛いの一言です。



「プー、プ~?起きてよぉ。お手伝いをちゃんとしないとぉ、夕飯はお預けなんだよぉ」

「zzzzzzzzz」

「ねえってばぁ。グランビーが怒ってぇ、僕たちのご飯も食べちゃうよぉ」

「zzzzzzzzz」



眠るスリーピーさんに必死にドーピーさんが呼びかけるのですが、余程深い眠りに陥ってらっしゃるのか、一向に目覚める気配がございません。

わたくしが知る限り、彼は食事とトイレとお風呂以外で起きているためしがないのですが、ちゃんと仕事は出来ているのでしょうか。

ドクさんが問題ないと仰っていたので問題はないと思うのですけれど、きびきび働いている姿が想像できなくて、思わず首を傾げるばかりです。



「白雪からもぉ、言ってよぉ。僕たちぃ、このままじゃぁ、連帯責任なんだからぁ」



間延びした口調ながらもどこか必死な眼差しに、わたくしは眠るスリーピーさんへと距離を詰めます。

花に埋もれて眠る姿は、とても絵になっております。ここにスケッチブックがございましたら、すぐに筆を執っていましたでしょう。

しかしわたくしにあるのは、ドクさんに手渡された篭のみで、絵を描きとめる術はございません。

仕方なく心の一ページに書き留めることにして、スリーピーさんの体に手を添えて軽く揺すりました。



「起きてくださいまし、スリーピーさん」

「・・・ん・・・朝?」

「いえ、もう夕方でございます。ドクさんのお仕事を早く終わらせないと夕食に間に合いません」

「それって、・・・困る?」

「はい。お仕事が出来なければ、わたくしたちは三人ともご飯がいただけません。わたくし、お腹が空きましし、残りはあと少しなので一緒に頑張りましょう」

「ん・・・わかった」



漸く目を覚ましたスリーピーさんは、のっそりと体を起こすと周りを見渡されました。

もう間もなくすれば、太陽は西日へと変わり空は茜色に染まるでしょう。

スリーピーさんに釣られて空を見上げていますと、ふと呆れ交じりの声が聞こえます。



「プーをぉ、こんなにあっさり動かせるのってぇ、きっと白雪だけだねぇ」

「ん・・・でもお互い様。俺が寝てる間、ドーピーは独占タイム」

「うん、そうだねぇ。だから僕はぁ、君と一緒に行動するの嫌いじゃないよぉ」

「ん」



仲良く会話しながら手を動かす男の子達は、わたくしより余程頼りになるのに可愛く感じます。

彼らに負けないように頑張らなくてはと気合を入れて、わたくしも花畑に混じる植物を探しを再開いたしました。

*ドーピー・・・おっとりとしてるようで、存外にちゃっかりしてる男の子。顔は普通に男の子なのだが、どこか雰囲気が可愛く、本人もそれを意識している。成人男性になれば178cmと意外と長身で、口調と裏腹に機敏な体技を得意とする。



*スリーピー・・・黒髪黒目で一日のほとんどを眠っている。一度寝ると滅多に起きず、隣でグランビーが怒鳴るくらいでは駄目。ドクが薬を使って人体実験をしようとしたら起きるが、逆に言えばそれくらい危機的状況でなければ眠り続ける。例外として白雪から起こされると、何故かすんなりと目覚めれるらしい。成人モードでは178cm。二挺銃の使い手。

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