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わたくしと七人の男の子と王子サマ

朝日と共に小鳥が囀り、青々とした葉を茂らせる木々や、どこまでも見通せる透き通った湖がある森の深遠。

故意に辿り着こうとしても自然の迷路に惑わされるような、そんな場所に現在のわたくしは住んでいます。

以前住んでいた場所に比べれば遥かに狭くみすぼらしいところですが、住めば都とは言うもので、初めは戸惑った料理や洗濯等の家事も、服の着替えも今では一人で出来るようになりました。

これも偏に同居人である七人の男の子たちのお陰でございます。

特に赤い服を身につけた怒りっぽい彼と、にこやかに色々教えてくれる彼が居なければ今のわたくしはいませんでした。

元々何事も人任せにするのは好きではなく、幼い頃から自力で色々としてみたいと好奇心だけはあったものですし、意外と才能があったようで、今では料理も洗濯も彼らに誉められる腕前です。

お陰さまで城にいた頃のように滑らかな白い手は失いましたが、かさついた働き者の手も気に入っております。


この家にはわたくし以外にも七人の可愛らしい男の子達が住んでおります。いえ、むしろ彼らの家にわたくしが居候させていただいております。

この森は少々物騒な森ですので、わたくしは外出時には必ず彼らの内の誰かと共に出かけることにしております。

今日はグランビーさんとドクさんが果物を採りに行くのにご一緒してくださるそうで、そろそろ仕事を切り上げたお二人が戻ってくる頃でしょう。

ぼんやりと考えながらテーブルを綺麗に拭いておりますと、前触れなく玄関───と言うよりは単なるドアに近いですけれど───が思い切り激しい音を立てて壁に当たって床に落ちます。

元は一枚の木から出来ていたのですが、最早木片と呼んだほうが良いでしょう。

ぱらぱらと空から舞い落ちる木屑は、雪のように美しく、けれど吸い込むと噎せてしまいます。

さり気無く口元を押さえつつ距離を取ると、とんと背中に何か当たりました。

なんでしょうと小首を傾げつつ振り替えれば、肩ほどまでしか身長がない、眼鏡と笑顔がトレードマークのドクさんの姿。

しかしその笑顔から心持ち無視できない迫力が滲み出ている気がして、わたくしは同じく笑顔を返しつつ体を強張らせました。



「おう、白雪!いつまでとろとろテーブル拭いてやがるんだ!?ふざけんなよ、このどん亀女が!」



背後からドクさんに支えられるようにして立っているわたくしに、いつの間に正面に居たのか、性格と同じで苛烈な赤髪のグランビーさんが眉を吊り上げて怒鳴ってらっしゃいます。

ドクさんと種類は違えど、こちらも整った顔をしているのに、いえ、だからこそ無駄に迫力があります。

慣れない当初は何度も身が竦み涙を零したものですが、一人で泣いている時にふと横を見るといつも林檎の差し入れがあり、それがグランビーさんからのものだとドクさんに教えていただいてから恐ろしさはなくなりました。

少し口は悪くて乱暴で乱雑で性格が過激ですが、グランビーさんはなんだかんだで鈍いわたくしを見捨てたりしないいい人です。

彼もドクさんと同じくわたくしの肩ほどまでの身長しかありませんが、それは他の男の子たちも共通で、何故かぴったり同じ大きさをされています。

理由はそうしないと色々と都合が悪いからと仰っていましたが、わたくしは都合で身長の高さを変えられるとしたら凄いと思います。

ですが彼らでしたら一概にありえないと言い切れませんので、いつか見せてくださいませとドクさんにはお願いしてあります。



「グランビー、お雪さんはあなたが無駄に暴れるせいで出るゴミを片付けるので忙しいのです。私が手伝って扉だったものを片付ける間に、さっさと玄関を新調してきなさい」

「何で俺が!」

「あ・な・た・が壊したんでしょう?」

「っ・・・!クソ、俺は負けたわけじゃねぇ!俺がいねぇ間に白雪に何かしたら、ぶっ飛ばすぞ、腐れドク!」



つり上がり気味の瞳は、気のせいでなければ薄い膜が張っているように見えました。

しかしそれが零れ落ちる前に、グランビーさんは踵を返して森の中に戻っていかれます。

あっという間に見えなくなった姿は、流石に素早いものであります。

消えていくグランビーさんを見送っていると、隣に並んだドクさんが仕方ないとばかりに首を竦めて仰いました。



「下品ですねぇ、本当に。お雪さん、彼の言葉は左から右へと流してくださってよろしいですからね。グランビーが新しい玄関を調達している間に、私たちはさっさと木屑を片付けましょう。果物が沢山生えているいい場所を見つけたんです。今から行けば時間にも余裕がありますし、好きなものを選べますよ」

「はい」



いつも笑みの形に細められた瞳をうっすらと開けたドクさんに、コクリと一つ頷きます。

遠くからグランビーさんのものと思える雄叫びが響いて、今日も平和ですと思わず笑みが零れました。

*白雪・・・とある城の元お姫様。若干天然だが美貌は折り紙付き。その美貌ゆえに母に暗殺されそうになったところを、猟師に救われる。しかし置き去りにされた不思議の森がどんな不思議があってもおかしくない魑魅魍魎の住む森であることも、同居人の男の子達が実は成人男性で元暗殺者達というのも知らない、ギリギリのラインを上手く生きている運のいい子。


*グランビー・・・赤髪吊り目で口が悪い男の子。けれど白雪は過激な照れ屋と認識している。成人モードでは身長193cmで82kgの巨漢。ドクに言わせると子供モードの方が精神年齢に釣り合いが取れている、素直になれないお年頃の男の子。筋肉を活かした鈍器を操る。


*ドク・・・眼鏡の奥でいつも微笑んでいる男の子。成人モードでは身長175cmで中肉中背だが、年齢は最年長。マッドサイエンティストで実はもっとも怒らせてはいけない人の一人。白雪のことは『お雪さん』と呼び可愛がっている。いずれはお嫁さんにでもしようかと目論み中で、男の子たちから要注意とマークされている最中。

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