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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第四章~新な世界に~

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初めての外出

 マントを深く頭に被りながら、私とステラはカイルさんとライアンさんの後ろについて行き、一つの建物に入った。私たちの後ろには、同じくマントを羽織って、嬉しそうに歩いていたレオードさんもいた。


 私たちが入った建物は、いくつの住宅の間に挟まれた一軒で、中は仄暗く、灯りは、ところどころに置かれた蝋燭だけだった。

 しかし両側には隙間なく棚が置かれ、その上に石や布、いろんな色をした液体などが並べられていた。

 置かれたものにはこれといった規則性はなく、おそらく自然から取った素材が、適当に置かれているだけだろう。


 そして1番奥にはカウンターが置かれ、その奥に年老いた、人良さそうなおじいさんが座っていた。

「おや、いらっしゃい。好きに見ていってくれ」


 おじいさんは私たちに簡単な挨拶だけ済まし、手に持っていた石を磨いていた。


 ライアンさんはすぐ、棚に並べられた石に視線を向けた。

「ここにある石は純度が高いね」

「お客さんわかってるねー。この村の周辺はあまり開発されていない分、いい素材が残っているのじゃよ——」


 ライアンさんと店長のおじいさんが早速石の話で盛り上がっている側に、私とステラはざっと棚にあるものを見た。

 

「……きれいだね」

「……うん」

 ステラが小声で私に話しかける。


 確かに以前魔王城でセロくんが見せた石ほどではないけど、ここにある石も光を反射して、きれいに輝いて見える。


「おい、カイル。こんなもんがあるぜ!」

「おおー、野生動物の牙か!すげぇなー」


 後ろからレオードさんとカイルさんの、楽しそうに話す声が聞こえる。

 彼らも、そこそこ楽しめているらしい。


 ふと、視線を感じた。

 私は店内を見回した。


 店自体はそう大きくないから、すぐに視線の正体を見つけた。


「じー……」

 カウンターの奥に扉があり、その奥から5、6歳くらいの小さな女の子がこちらをじーっと見つめていた。

 わたしは反射的に、頭上のマントを引っ張った。

 (髪色、見られてないよね……)


「ディアナ、どうしたの?」

 挙動不審な私を見て、ステラは問いかけた。

 私は気づかれないように、ステラに耳打ちする。

「カウンターの奥に……子供がこっちを……」


 ステラは私の言った位置に視線を向けると、すぐにその子供の存在に気づいた。


「……ねえ、あなたはここの子?どうしたの?」

 そして驚くことに、ステラはその子に話しかけた。

「ス、ステラ……」


 私と同じように、呼ばれたあの子も一瞬びっくりして、扉の後ろに隠れた。

 そしてゆっくりと、カウンターから出てきて、私たちに近づいた。


「いっ、いらっしゃいませ、お客様……何か、お探しでしょうか」

 その子は顔を赤くしながら、辿々しく話しかけた。

 ステラは柔らかい笑顔を浮かべた。


「ここにある石がとてもきれいだから、見入っちゃった。他におすすめはある?」

「えっ!……えーと……あっ、こっち」


 ステラに問いかけられたその子は、すごく戸惑ったけど、すぐ何かを思いついたようで、ステラのマントを引っ張った。


 私とステラは、その子についていって、店の片隅にある展示台に来た。


 そこには、縄や石で作った髪飾りやブレスレットなど、いろんなアクセサリーが置かれた。

 

「とても素敵ね」

 ステラが褒めると、女の子は顔をさらに赤らめて、笑いを堪えるように口角が引き攣った。

「——あ、あのね、ここにあるものは、サリーが作ったの!」


 彼女は少し大きな声を出した。緊張してたのか、声が少しうわついていた。

 でもステラは気にせず、その子に話しかけ続けた。

 

「そうなんだ!サリーちゃんって、お友達の名前?」

「えっと……私が、サリーなの」

「じゃあ、ここのアクセサリーはあなたが作ったものなのね!どれが自信作かしら?」


 サリーと名乗ったその子はしばらく考えた。そして展示台に置かれた髪飾りの中から、いくつかを手に持った。

「こ、これっ……おじいちゃんが特に、褒めてくれたの」


 その子の手には、ピンクや黄色のドライフラワーがあしらわれた髪飾りと、白いレースとリボンで飾られた髪飾りがあった。

 ステラはすぐ、リボンの方を手に取った。


 そして彼女は、自分の頭に被っているマントを外した。

「ステラっ!」

 私は慌てて声をかけた。

 彼女は聖女だった。民の前に姿を見せることはほとんどなくても、彼女の姿は絵や新聞を通じて、広く知られているはずだ。

 だから私のようになるべく顔を隠している。


「少しくらい大丈夫よ。それよりこれ、私に似合うかしら?」

 ステラは悪戯をしているような笑顔を浮かべながら、髪飾りを髪に当てた。


 彼女の波打つようなブロンドの髪に、白いリボンはとても似合っていた。


「とても、似合っているけれど……」

「本当ー!じゃあ、こっちは——」


 ステラはもう一つの髪飾りを持ち上げ、私に近づいた。

 気づけば、私のマントも外され、髪が露わになった。

「ちょっと、ステラ——」

「はい!ディアナも似合っているよ!」


 私は反射的に髪を隠そうとするがそれも叶わず、ステラはすぐ、ドライフラワーがあしらわれた髪飾りを私の頭に当てた。

 私は髪色を確認してから、諦めてステラから髪飾りを受け取った。


「きっとステラの方が似合うよ」

「そんなことない!ディアナだって似合っているよ!」


 私たちがお互い、髪飾りを褒めあっていると、また、サリーからの視線を感じた。

「じー……」


 私は少し居心地が悪く、マントを頭に被ろうとした。

 しかしその前に、サリーは依然と顔を赤らめながら、今度は前のめりに話し出した。


「お、お姉ちゃんたち、もしかしてお姫様!」

「「えっ!」」

 私とステラはビクッと、体を弾ませた。


 ステラはあからさまに、サリーから目を逸らした。

「そ、そんなことないよ〜。私たち、どこにでもいる普通の女の子だよ〜」

 普通の女の子は自分を普通と言わない気がするけど、私はとにかく付和するように、頭を縦に振る。


 しかし、サリーの興奮はおさまらなかった。

「でもでも、お姉ちゃんたち、とてもきれい……お姫様みたい!」


 (なんだ、バレたわけじゃないのね……よかった)

 私たちは内心、胸を撫で下ろした。


「サリーどうしたんじゃ?大きな物音が聞こえたのじゃが——」

 サリーの声が大きく響いたようで、ライアンさんと話していたおじいさんは、こちらに来た。


「おじいちゃん!サリーはね、お姉ちゃんたちのセッキャクをしているの!」

「そうかい?えらいね〜」


 おじいさんは、慈愛に満ちた眼差しをサリーに注いだ。

 これが、家族からの愛情なのかと、羨まずにはいられなかった。


 そしておじいさんは、私たちに目を向ける。

「うちの孫娘はどうだい?ちゃんと接客してたかい?」

「ええ!とてもかわいい髪飾りを見せてくれましたよ」

 おじいさんの問いかけに、ステラは意気揚々と、髪飾りを見せた。


「そうかい?それはよかった」

 おじいさんは満足げに頷く。そしてふと、ステラの顔に視線を止めた。

「お嬢ちゃん、なんか見覚えがあるような……」


 私たちはまだ、ビクッと肩を弾ませた。

「き、気のせいじゃないかな……」

 なんとなくステラの頬に冷や汗が流れ落ちてきた気がする。

 こっちまではらはらしてしまう。


 おじいさんの疑わしい眼差しを誤魔化す方法を考えていると、今度はライアンさんの声が聞こえた。

 

「オーナー、お会計お願いできますか?」

「はーい」


 ライアンさんの呼びかけのおかげで、なんとかおじいさんの追求から逃れられた。

 私たちはまだ、安心したように息を吐いた。


「おい、おうじょさ——」

 近づいくるカイルさんの呼びかけに、私たちは思わず体を弾ませた。

 そして私とステラは、同時に両手で彼の口を塞いだ。


 身長差を埋めるように、私たちは少し、踵を上げながら。


「あ、あははは……」

 ステラは誤魔化すように乾いた笑いを出す。


 しかし間に合わなかったようで、サリーは目を輝かせた。

「やっぱりお姉ちゃんたち、おひめさまなんだー」


「チ、チガウヨー」

 期待に満ちた眼差しの前に嘘をつくのか心が痛み、言葉が不自然になってしまった。


「……お嬢ちゃん、お姉さんたちが気になるか?」

 カイルさんはサリーと目を合わせようと、屈んだ。


 サリーはカイルさんが怖く感じたのか、ステラのマントを掴み、その後ろに隠れた。でも、頭は微かに頷いた。


「お姉さんたちはな、ちょっっっっといいどこの姫さんなんだ。でも訳あってお忍びでここに来ているんだ……秘密にできるか?」


 カイルさんは人差し指を口に当てた。そしたらサリーも、両手で口を塞ぎ、激しく頷いた。


「ありがとうな。というわけで姫さまたち?買いたいもんはないか?」


 カイルさんは立ち上がり、私たちに聞いてきた。


「「えっ」」

 私たちは再び、同時に素っ頓狂な声を出した。

 そしたらカイルさんは、私たちの手の平の上に載っている髪飾りに目を向けた。


「おっ!いい髪飾りじゃねぇか。そんじゃ、俺はお金を払ってくるわ」


 彼は私たちが持っていた髪飾りを取り、カウンターに向かった。

「えっ!か、カイルさん、悪いです!」

「そうよ!私たちお金持ってないし——」

「いいって。おじさんは金を持て余しているからな。そんくらい払ってやるよ」

 

 そうして、私たちは購入した商品を持って、お店を後にした。

 店を出ると、サリーが店先で私たちに向かって大きく手を振っていた。


 それが、なんとなく嬉しかった。

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