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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
最三章~真相~

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三者面談(怖)

「あの、私は相談があると聞き、ここに参りましたが……これはどういう状況でしょうか?」

 デビトさんは部屋に入るなり、面倒くさそうに顔を顰めた。


 無理もない。

 今私たちは、長いテーブルが置かれた食事部屋にいて、私とテオ様が同じ側で座り、その向かいにお父様が座っている。

 そして2人は、ただならぬ形相で厳しく睨み合っている。


 私はいつまた剣を抜きあうのかハラハラが止まらないというのに、お父様の後ろで立っているカイルさんはなんとなく面白がっているようだ。


 私は助けを求めるように、潤んだ目でデビトさんを見た。

 (た、助けて〜〜〜)


 しかしすぐ、隣のテオ様にぐいっと頭の向きを逸らされる。

「ディアナ、そういう表情を他人に見せるな」

「ひ、ひゃい!」

 (威圧を放ったまま言われると、怖い〜〜)


「やれやれ、人騒がせな者は犬猫で充分だというのに」

 デビトさんまで、ため息を吐いた。


 この膠着状態を打破したのは、お父様だった。

「カイル、そちらの魔族は忌子とはどういう関係だ」

「ご覧になった通りの関係ですよ」

 すざましい気迫を放つお父様とは対照的に、カイルさんは冗談めいた口調で返答する。


 この温度差に、より一層焦燥感を覚える。


「どういう経緯でこうなった」

「愚かな人間の王がディアナを森に捨てたところを、俺が拾って可愛がったってだけだ」


 お父様の追問にテオ様は煽るように答える。

 それによって、周りの空気がさらに凍りついた。


 この状況を見て、デビトさんは優雅に座りながら、頭を揺らした。

「やれやれ、これでは埒があきません。この際、私が仕切るので、お互い言いたいことを吐き尽くしてください」

 

「いいですね」とデビトさんは二人に目配せするが、2人とも反応を示さなかった。


 それでもデビトさんは話を進めた。

「まず、ディアナ様は人間の王に追放され、魔族の森に入ったところ、我々の同族に拾われ、魔王城で暮らすことになりました。そこについて言いたいことは?」

「人の捨てた物を拾うのは、行儀悪いんじゃないか」

「森に入った人間は魔族の好きにしていい。そういう協定であろう?大人しく従ってやっているから文句言われる筋合いはないはずだ」


 お互い一歩も譲らないまま、話は進む。


「魔王城で共に暮らすうちに、我々魔族どももディアナ様を酷く気に入り、特に魔王様は彼女を寵愛するようになりました。そして人間の文化を見習い、恋人関係を結んで、今に至ります」

「愚かな王にも感謝しないとな。こんなにいい女を譲ってくれて」

「……気に食わん」


 テオ様はお父様を挑発するが、お父様は反応せず、何かを呟いた。


「何がそんなに気に食わないんだ?捨てたはずの者が可愛がられていることか?それともそれが幸せそうに暮らしていることか?」

 テオ様の煽りが止まらない。

 やがてお父様の額に青筋が現れた。


「気に食わん!なぜその男なんだ!でかい態度しか取れない割に、剣技がまるでなっていないその男が!」


 お父様の怒鳴りに、この場は一瞬静まった。


 聞いた誰もが思うことだろう——

 (そ……そっち!?!?!?!?)


 声を出して突っ込みたいけど、どう見てもそういう雰囲氣ではなかった。


 テオ様だけは、不愉快そうに言い返した。

「は?俺以上ディアナに相応しい男はいないだろう」

「いや、俺は見たぞ!忌子の相手は魔族だということはさておき、魔族の中でも、もっとまともで、素行が良くて、実力もある者かいるはずだ!」


 一瞬、お父様の言葉を処理できなかった。

 予想外なことを指摘された挙句、別人を勧められた。

 お父様の考えが、わからない。


 (そもそもお父様は、誰のことを……)

 素行がいい……お父様が会ったことのある魔族……。

 頭に、一人の姿を浮かんだ。

 (まさか——)


「貴様は誰のことを言っているんだ」

「あの誠実そうで緑髪の、小柄な少年だ!選ぶならあの少年の方がいいだろう!」

 お父様は勢いよくテーブルを叩いた。


 (絶対セロくんのことだわ!)

 心の底から、セロくんがこの場にいなくてよかったと思った。

 なぜなら……隣からすごい圧が……


「冗談でも聞き捨てならんな……俺のどこが、あの召使に敵わないというんだ」

「何もかも足元にも届かん。その少年が兵士と対峙するあの時、兵士の急所を狙いつつ、血を出すことなく無力化して見せた。そこからその少年の誠実さと善良さが伺える。加えて、この俺と撃ち合いになった時も、いい動きを見せていた。より磨けば、さらなる高みを目指せるだろう。バルドにも見習ってもらいたいくらいだ」


 お父様のセロくんを称賛する言葉が止まらない。

 (あの短い対峙の中で、お父様の中での、セロくんの株がとんでもなく上がっている)

 そのすざましい勢いに、私は遠い目で見ることしかできなかった。


「ほう……」

 それを聞いて、テオ様が低い声で唸った。

「そこまでいうなら、直接俺の力を見せてやろう」

「えっ」


 嫌な予感がした。


「デビト、あの召使を呼べ……一度手合わせする」

「は……かしこまりました」

 デビトさんもなんとなく呆れていた。


 私は、祈ることしかできなかった。

 (セロくん……巻き込んでごめんなさい)


 聖堂の外にある広い庭に行き、セロくんは困惑しきっていた。

「あの……僕はなぜ、呼ばれたのでしょうか?」

「まあまあ、リハビリだと思って、しばらく付き合ってやってください」


 デビトさんは一本の剣をセロくんに握らせた。

 セロくんは困惑しながらも、剣をしっかりと握った。


 もう一方で、テオ様は魔法で黒い剣を作り出し、その切れ味を確かめていた。

 私は躊躇いながらも、探るように声をかける。

「テオ様……傷が塞がったばかりなので、しばらく休んだ方が……」

「問題ない。もう痛まない。それにそれくらい、軽い手加減のうちだ」

 完全に火がついたテオ様は、やめる意志がないようだった。


 私は申し訳なくセロくんに目配せした後、邪魔しない位置で見ることにした。

 そこには、いつの間にかレオードさんとアイセルが、面白そうに騒いでいた。


「なかなか愉快なことになっているね」

「頑張れよ!軟弱者!」


 そして向かいのベンチには、お父様が座っていて、そのそばで控えているカイルさん、そして騒ぎを聞きつけたステラとライアンさんも出てきた。

「何の騒ぎですか?中まで届きましたが」

「セロくんと魔王様が剣を持っているけど……何しているの?」

「お前たちも座って見るといい。ま、すぐ勝負がつくと思うが」

「いいぞー!2人とも、頑張れー!」


 テオ様が剣をしっかり掴み、セロくんは戸惑いながらも、剣を構えた。

 その間に、デビトさんは審判のようにルールを読み上げる。

 

「今から2人に、試合をしていただきます。剣が手から離れたか、片方が降伏した時点で試合終了です。なお、魔法を使用したら魔王様が圧勝するため、禁止にします。いいですね?」

「ああ」

「……はい」


 2人が了承し、デビトさんは間に手を出した。

「では……始め!」

 その手が上がった瞬間、2人は地面を蹴った。

お父様は、セロくん激推しです(笑)

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