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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
最三章~真相~

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父親

 私はステラと手を繋ぎ、廊下を歩いていた。

 緊張する気持ちが、歩みを緩めてしまう。


「……やっぱり怖い?」

 ステラは伺うように問いかける。

 私は小さく頷いた。


「お父様は……私には会いたくないでしょう」

「それはっ……ちょっとわからないけど。少なくともお父様は、ディアナを殺すことができなかったでしょう。その理由くらい、問い詰めていいと思うの!」

 ステラは私の手を強く握りしめた。


「部屋にはカイルさんとライアンさんもいるし、いざって時は、私もディアナを守るから!」

 ステラは意気込むように、勢いよく息を吹き出す。

 それがどこか面白くて、私は小さく笑った。

「ふふ……ありがとう、ステラ」


 2人話し込んでいたら、いつのまにか目的の部屋にたどり着いた。

 私は扉の前で、深呼吸をしていた。

 いざ、扉を叩こうとする時、中から話し声が届いた。


「――大体の状況は把握した。礼を言う」

「いえいえ、陛下を助けたのは我々ではないので、礼を言われるようなことは――」

「手当してくれたのは、そなたらだろう……それに、魔族の森で、ステラを守ってくれたのも」


 部屋の中が静かになった。

 でも私もステラも、なんとなく入りづらくて、扉の前で立ちすくんでいた。


「それなのに、すまなかった。そなたらを、罪人扱いしてしまったこと」

「それは……しかし陛下は、表向きだけでも私たちに処罰を下さなければなりませんでした。そうでしょう?」

「そうだな。俺らを罪人扱いするどころか、不自由のないように地下牢じゃなくて、ちょっといい部屋を用意してくれたんだろう?助けに来てくれた魔族たちが言ってたんだぜ、監視がびっくりするくらい緩かったって……です」


 その話に、隣にいるステラがあからさまに胸を撫で下ろしたのを、私は感じた。

 (よかった……酷い扱いはされなかったのね)

 私も密かに安心していた。

 

「……吾にできるのは、それくらいだ。実際どうだったんだ?そなたらの目から見て、魔族は」

「体や力、根本的な価値観は異なりますが、嗜虐心を除いたら話は通じる相手だと感じました」

「俺らは魔王城でかなり世話になったんだぜ。飯はさすがに新鮮なもんが使われることはなかったけど、それなりに美味かったし。寝床もなかなかよかった」

「……そうか」


 まだ沈黙が続いた。

「陛下が聞きたいのは、別のことでは?」

「いや……そなたらの話も、かなり興味深い」

「しかし、もっと知りたいことがあるはずです……王としてではなく、父親として」

「……今更であろう。散々酷なことをステラに強いて、今になって父親など」

「それは、本人たちに確認した方がいいんじゃないか?聖女さん、もう1人の皇女さんを呼びに行っているし、もうすぐ帰ってくるだろう」


 私たちの話に移り、一気に不安が込み上げた。

 思わず、一歩後ずさった。

「ディアナ?」

「やっぱり私……会わない方がいいと思うわ」

「急にどうしたの?ここまで来たでしょう?」

「だって……お父様の娘は、ステラだけ。私が入っても無粋でしょう」


 (父親としての話をする時、ステラの名前だけを口にしていた……つまりそういうことでしょう)

 ステラは一瞬驚いたように目を見開いたけど、すぐ眉を顰めた。

 彼女は私の手を強く引っ張り、扉をノックする。


「ステラです!入りますね!」

「ちょっ、ステラ!」


 扉を開き、ステラは強引に私を部屋に入れた。

「――お父様!」

 ステラの呼ぶ声に反応し、部屋中の視線がこちらへ向いた。


 お父様の青白い顔は、最初こそ平淡としていたけど、私を捉えた瞬間、険しくしかめた。

「ステラ、入室する時はもっと静かに――」

「それよりもお父様、私たちに話すことがあるのではありませんか!」


 お父様の説教を、ステラは勢いよく遮る。

 お父様の顔はますます険しくなっていく。


「外で話を聞いていたのか。行儀が悪いぞ」

「聞こえたのです!話をはぐらかさないでください!言いたいことがあれば私たちに、ディアナに直接話してください」


 お父様は顔を逸らした。

「……忌子に話すことなどない」


 心がチクリと痛んだ。

 でもステラの勢いは止まらない。


「いいえ、あるはずです!この場にいる全員――お父様を含め、命が救われたのはディアナのおかげなのですから。お礼の言葉くらい、口にしたらどうですか!」

 ずけずけと言葉を投げかけるステラに対し、私はハラハラが止まらなかった。


「そんなっ、私は、何もしてないから――」

「――は……」

 私の言葉は、お父様の大きなため息によって遮られた。


 彼はこめかみをで抑えた。

「……気に食わないが、それに関しては事実だ。……希望を言え、一つだけなら叶えてやる」


 未だに目も合わせてくれないお父様に対し、ステラは腹を立てたのか、一歩前に踏み出した。

「だーかーらー、もっと素直にお礼を言ったら――」

「いいの、ステラ」


 私はステラを止め、お父様に近づいた。

「私の願いはただ一つ……アステリアに関する情報を全部教えて欲しい」


 私は、城での光景を思い浮かべた。

 大量の兵士を操り、お父様の剣に力を付与し……気づけば、テオ様は刺されていた。


 当時はただ、絶望に苛まれていた。

 けれど冷静になった今、ぐつぐつと怒りが込み上げてきた。

 (テオ様を……私の大切な存在を傷つけた者は、絶対許さない)

 テオ様を刺した本人であるお父様も、その背後ですべてを操っていたアステリアも――


「貴様でも、そんな顔ができるのだな」

 その一言で、意識が一気に引き戻された。


 ステラも、カイルさんとライアンさんも、少し驚いたような表情を浮かべていた。

 (私は……どんな顔していたのだろう)

 

 お父様と目線を合わせると、さっきまで顰めていた顔が少し緩めていた。

「……この状況に陥った以上、アステリア様に関する情報は開示しようと考えていた。丁度いい、今話そう」


 お父様は記憶を呼び起こすかのように、天井を見上げた。

「思えば、最初にアステリア様の声が聞こえ始めたのは、オフィーリアが亡くなってしばらく経った頃だった」


 ――彼は昔の記憶を、ゆっくりと語り出した。

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