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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
最三章~真相~

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早すぎる再会

 路地裏に転移した私たちは、すぐに城へ向かって歩き出した。

 私は進みながら、あたりを見回していた。

 (城外の街って、こんな風景だったのね)

 思えば私は、城の部屋にほぼ閉じ込められ、遠目からも街を眺める機会すらなかった。

 だからこそ、新鮮な風景に、わずかに心が躍った。

 

 髪色を変えたおかげか、道中は特に塞がれることはなく、順調だった。

 強いて言えば、道行く女性はほとんど、顔を赤らめながらチラチラとテオ様たちを覗き見ていた。

 (やっぱり客観的に見て、テオ様たちはかっこいいよね)

 にやけそうになるのを堪えながら、不自然に口元が緩んでいるのを隠すように、私はマントで顔を覆った。


 やがて城の近くの路地裏にたどり着き、そこには兵士数名が厳重に扉を守っていた。

 (そういえば入る段取りは決めたけど、肝心な入り方は考えてなかった!)

 デビトさんの様子を伺うと、彼はテオ様に目線を送っていた。

 

「……気絶させますか?」

「ああ、お前が――」

「その必要はない」


 アイセルは2人の会話に割り込んだ。

「正々堂々入ればいいのさ」

 止める間もなく、アイセルは路地裏を出て、堂々と城門へ近づいた。


「アっ――」

 慌ててアイセルを呼び戻そうとするも、テオ様に手を覆われた。

 意図が分からず混乱しながらアイセルを見つめると、彼の周りに白い霧が漂い始めた。


 そこで私はやっと、彼の意図に気付いた。


 彼は兵士たちの前に立ち、まるで何かを命じるかのように手を動かした。

 そしたら兵士たちは一礼をし、城門を開けた。


「……行くぞ」

 テオ様は私に隠蔽魔法をかけ、私達は早足で城門を通った。

 

 そして人通りの少ない片隅に入り、テオ様たちは隠蔽魔法を解除した。


「魔力温存のため、必要な時のみ、隠蔽魔法を使いましょう」

 私は息を殺しながら、記憶を頼りに人が少ない道を案内した。

 その間、アイセルはわずかな幻覚魔法を放出し、気配を薄めてくれていた。


 私が先頭を歩き、厨房近くまでたどり着いた時、かすかな話し声が曲がり先から聞こえてきた。

 私達はすぐ、壁に沿って身を隠した。


「皇女様のお食事を届けてくるわ」

「帰ってきてから、あまり食べてくれなくなったでしょう?今度は食べてくれればいいけど」


 少し覗き込むと、2人の侍女が話していた。


「しょうがないわよ。勇者様に攫われ、無理矢理壁の向こうに連れて行かれたもの。ショックだったに違いないわ。生きて帰ってくれただけ、喜ぶべきよ」

「それもそうね……勇者にもがっかりよ。率直で心優しい方だと思っていたのに、皇女を攫うなんで!」


 2人の会話に、頭は混乱してきた。

 (どういうこと?なんでバルドがステラを攫ったことになっているの?!)

 さらに、彼女たちは驚きの現実を語った。


「勇者様とその仲間は今、地下牢に閉じ込められているわよね」

「ええ……処刑したくとも、壁の向こうで生き延びたから、どう処罰すべきか分からず、放置しているらしいわ」


 その言葉を聞き、思わず息を深く飲み込む。

 (バルドたちが、閉じ込められている?!)

 頭が混乱して、立ち尽くしていると、いきなりテオ様に後ろから口を覆われ、抱き寄せられた。

「っ!」


 侍女たちの会話が終わったらしく、1人の足音がこちらに近づいてきた。

 (そうだった!ステラの部屋はこの廊下の先に――)

 足音が大きくなっていくにつれて、心臓の音が強くなる。


 やがて侍女の姿が視界に入った。

 彼女は頭を左右に振り、道を確認した。

 ――目が合った瞬間、体が跳ね上がりそうになった。


 しかし、彼女は私達に気づくことはなく、ステラの部屋がある方へ進んだ。

 やがて姿が見えないくらい遠ざかったらのを確認し、テオ様は放してくれた。


「ありがとうございます。先へ進めましょう」

 しかしテオ様は廊下の先を見つめ、少し考え込んでいた。

「……デビト、駄犬と勇者らの状況を確認して来い」

「かしこまりました」


 デビトさんとレオードさんはすぐ来た道を引き返した。


「テオ様、どうされましたか?」

 バルドたちに無関心だったテオ様の行動に疑問を覚え、思わず質問を投げかけた。

「いや……気になったことがあっただけた。行くぞ」


 テオ様は言い淀むも、何事もないように侍女の向かった方向へ歩き出す。

 私たちは、その後ろについて行った。


 ステラの部屋の前にたどり着き、食事を届け終わった侍女が引き返したのを静かに見送った後、私は慎重に部屋のドアノブを回す。


 ゆっくり扉を開き、中を覗き込む。

 大きなベッドの上で、ステラは膝を抱えながら頭を埋めていた。

 

「ステラ……?」

 驚かせないように小声で呼びかける、彼女はゆっくり頭をこちらに向けた。

「……ディアナ?」


 彼女の目は空洞と化していたが、私を捉えた瞬間、少し光を宿した。

「ディアナ……なんで、ここに?……これは夢?」

 

 私はベッドに近づき、彼女の頬を両手で包む。

「夢じゃないよ」

「えっ……だって、ディアナは魔王城に……」

「ステラのことが心配で、来ちゃった」


 夢じゃないことを認識できたか、ステラの目に、涙が募っていった。

「……ディアナ……ディアナ」

 ステラはぎゅっと、私の腰にしがみつけた。

 私は彼女を慰めるために、背中をさすった。


「どうしよう……私、もう……どうすればいいのか……」

「どうしたの?ゆっくりでいいから、話して」


 彼女は鼻をかみ、嗚咽しながら、言葉を絞り出した。

「私……もう聖女じゃないんだって……もう、力も使えないの」

「……えっ」

 その一言に、私は動きを止めた。


「力が……使えない?」

 ステラは小さい頃から、聖女の力を身に宿して、聖女として育てられてきた。

 訓練が辛いと言いながらも、ステラは妥協せずに頑張って使いこなせてきた。

 それを……いきなり使えなくなった?


「これはどういう――」

「あらあら、感動的な再会を邪魔しちゃったかしら〜」


 私の言葉は、知らない人の声に遮られた。

 その声を辿ると、テオ様たちのそのさらに後ろに、見知らぬ女性が立っていた。

 ――水鏡で見た、あの女性だ。


「っ!」

 テオ様は驚いたかのように後退り、魔法をいつでも使えるように構えた。

 セロくんも急いで体を構えた。

 アイセルはなぜか恍惚とした表情で彼女を見つめている。


「貴様……何者だ――」

「ふーん、あなたがステラちゃんが愛してやまない、あのお姉様なのね」


 目の前でテオ様は威圧感を放ちながら睨んでいるというのに、まるでそれが目に入らないかのように、彼女は私に近づいてきた。


「これ以上ディアナに近づくな――」

「邪魔だから、黙っててくれる?」


 その女性がテオ様を睨みつけた瞬間、その間に光の玉が浮かび上がり、テオ様を襲った。

「っ!」

 テオ様はすぐ黒い玉を作り出し、それを光の玉にぶつける。

 2つの玉は相殺し合い、強い風圧が生まれた。


「貴様、何者だ」

 テオ様は風圧に耐えながら、その女性を睨む。

 しかし彼女は、テオ様を無視していた。


 彼女は、私の前で歩みを止めた。

 ステラは私の服を強く掴んだ。

 私はステラを後ろに隠し、彼女を見定める。

「……」

「ステラちゃんの片割れね……まったく似ていないわね。どちらかというと、あの女に――」

「あなたは誰ですか?」


 テオ様の威圧に影響されず、攻撃を相殺させるほどの力を持っていることから、只者ではないことは明らかだ。

「私はアステリア。ねえ、あなたなのでしょう……私のかわいいステラちゃんをたぶらかしたの」


 彼女は柔らかい笑みを浮かべながらも、その瞳は鋭くギラついていた。

「あなたのような悪い子には、とっておきなお仕置きを与えてあげる♡」

 彼女は一歩後ずさる。

 そしたら、私の足元から強い光が溢れ出した。


「ディアナ!!」

「ディアナ様!!」

 状況を把握する間もなく、私の視界は光に染まった。

 次の瞬間、私は王座の前にいた。

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