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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
最終章~真相~

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別れの日

 デビトさんがメイリーから情報を引き出したと報告を受け、魔王城にいる全員で情報共有すべく、会議室に集まっていた。

「あの人間の発言によると、魔王城から逃げ出した後、しばらくは森で彷徨っていたようです。ライアンのおっしゃった通り、ブローチのおかげで最初の数時間ほどはなんともなかったようですが、すぐに息が苦しくなって、体が重くなったと述べていました」


 まさに私が瘴気に侵された時と同じだ。

「体の奥に何かが蠢いている感覚もあり、酷く魘されたものの、ディアナ様たちへの憎しみに駆られ、なんとか生きながらえようと、身を隠せる場所で休まれたそうです……次に目を覚ました時には、なぜか体が透けていて、無意識に気配を消す魔法を使いこなせるようになっていました」

 一通り手にしているメモを読み上げ、デビトさんはテオ様を見やる。


「おそらく、犬があの人間の気配を見つけられなかったのは、人間から魔族に変わる過程で気配が変わったのか、彼女の使う魔法が原因かと」

「……原因は瘴気か」

 テオ様の呟きに、誰もが戸惑う。


 にわかには信じられないけど、メイリーの話からして、そう考えるしかなかった。

「確かに、瘴気が原因である可能性は高いでしょう。魔族はそもそも瘴気に一定の免疫を持つ生き物。なら、人間から魔族に変化する過程に瘴気が関与していてもおかしくありません」

 デビトはさらに自分の考えを述べた。

「この現象は間違いなく、魔族の生まれや生態に深く関わってくると思われます。詳しく研究する価値はあるかと」


 ここでライアンが手を上げた。

「僕も同意見ですが、実際に調べるとなると、考えなければならない課題が多すぎます」

 彼は紙とペンを取り出し、スラスラと書き始めた。


『1.そもそも瘴気はなんなのか

 2.人間が魔族に変化するための条件はなんなのか

 3.変化の過程で瘴気はどう関わってくるのか

 4.この瘴気を浄化することができる聖女の力はなんなのか

 5.魔族はなぜ瘴気に免疫を持つのか

 6.魔族が瘴気の影響を受けた場合、それはなぜなのか

 7.魔女が魔族の力を抑えられることも関係しているのか……』


 瘴気を調べるとなると、考えられる課題は山積みだ。しかしそのどれもが、瘴気を研究する前提でしか答えを出せない。

 つまり、一番の問題は――


「どうやって瘴気を採取するのか」

 ライアンさんは、はっきりと言い放った。


 誰もが頭を抱え、考える素振りを見せた。

「うーん、容器に入れるとか?」

「瘴気は気体なので、容器を使っても高濃度のものを採取できません」

 ステラは悩みながら提案するが、あっけなくライアンに却下された。


「魔族の血を調べるのは?」

「魔族は免疫があっても、瘴気そのものを取り込んでいるわけではありません。いずれ調べることになりますが、根本的な解決策には繋がりません」

 バルドもなんとか案を絞り出したのか、やはり却下された。


「思ったのだけどさ、聖女さんの浄化の力を貯める装置を作れたなら、逆に瘴気を貯める装置も作れるんじゃないか?」

 カイルさんは手を組み、ライアンさんを見やる。


「瘴気を貯める装置……確かに検討する余地があるかもしれません」

 ライアンさんは立ち上がった。

「装置の作成は僭越ながら僕が担当しますが、どちらにせよ我々人間は瘴気に長く接触することができないので、研究自体は魔族の方々に任せることになります」


 ライアンさんはポケットからブレスレットを取り出し、私の前に置いた。

「ちょうどディアナ様に依頼された通信用魔導具が完成しました。石に軽く魔力を流し、話しかければ、声がステラ様の持つブレスレットに届きます。何かあればこれで知らせ合いましょう」

 私はムーンストーンが繋がれたそのブレスレットを、大切に手に通す。


 (これで、離れてもステラの声が聞ける)

「ありがとうございます。大切に使います」

 私は感謝の気持ちを伝えるべく、柔らかい微笑みを浮かべた。

 ライアンさんは一礼し、席に戻った。


 そしてバルドは咳払いをし、私に視線を向ける。

「ディアナ様、僕たちは装置が完成次第、国に戻ります。瘴気の研究について力になれることは少ないですが、微力ながら聖女と魔女、そして勇者について、城で調べてみたいと思います」

「ええ……寂しくなるけど、みんなにもやるべきことがありますものね」

 目の奥が微かにジーンとなったけど、この場だけはなんとか耐える。


「はい……短い間ですが、ディアナ様の元気なお姿が見られて、心より嬉しく思っております」

 いつも硬く表情を引き締めていたバルドが、一瞬だけ柔らかくなった。


 そしてすぐまた、険しい表情に戻り、テオ様を睨む。

「……ディアナ様を傷つけるようなことはするな」

「貴様に言われる筋合いはない」

 テオ様はぐいっと、私の肩を抱き寄せる。

「俺以上に、ディアナを守れる存在はいない」


 その一言に、気恥ずかしさを覚えながらも、心の奥が温かさで満ちていく。

 (過去も、今も、私を大切にしてくれる存在はいる……それに気づけたのは、きっとテオ様のおかげね)

 微かな幸せを噛み締め、私たちは残りわずかな日々を大切に過ごした。


 そして一週間ほど経ち、ステラたちは魔王城を発った。

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