SS 魔王の告白
最後のSSです!
やっとイチャイチャ回です!
これは、ディアナとステラがブレスレット作りに勤しんだ後の出来事。
ディアナはテオの存在をすっかり忘れ、夜にステラと一緒寝室に戻ろうとした。しかしディアナの寝室の前には、テオが陣取っていた。
テオの姿を認識した瞬間、ディアナの体は強張った。
「……遅かったな」
テオは恐ろしいほど無表情で、仄暗いオーラを発していた。
ディアナの頬に冷や汗が伝った。
ステラはディアナの腕を引き寄せる。
「別にいいでしょう。私とディアナは家族なんだから」
空気が一層冷たくなった気がする。
ディアナはただテオの様子を伺えながら、突っ立っていることしか出来なかった。
テオはディアナの手を掴み、無理矢理ステラから引き剥がす。
「ディアナを返してもらうぞ、人間の聖女」
「え、ちょ――」
ステラが反応する間もなく、テオはディアナを部屋に押し込み、部屋の前に強力な結界を張った。
2人きりになった空間で、ディアナは必死に言葉を探した。
(どう説明すれば……わざと放置したのではないのです!!)
「申し開きがあれば聞こう」
テオは不機嫌さを全面的に出した。そのオーラに圧倒され、ディアナは益々焦りを感じた。
「わざとではないのです!ステラが何かを悩んでいる様子だから、励まそうと――」
「ふーん」
ディアナの言い分に納得していない様子のテオは、ディアナの手を取った。自分はベッドに座り、ディアナを逃がさないように抱き寄せ、向かい合わせになる。
(テオの顔が近い〜〜!)
ディアナは動揺を必死に抑えるが、顔がみるみる赤くなっていく。
逃げようとも、力強い手にしっかりと固定され、身動きが取れない。
「あの、テオ様……?」
恐る恐るテオの目を覗き込む。
その瞳は逃がす気のない熱を帯びていた。
「お前の特別は、俺だろう」
テオは有無言わせぬように、ディアナを抱く力を強める。
「あの聖女ではない、俺を優先しろ」
その言葉はあまりにも真っ直ぐで、ディアナは返事に戸惑った。
「えっと、それは――」
「できないのか……恋人なんだろう?」
ディアナが言い淀んでいるのを見て、テオはさらに迫る。
「こっ!?テオ様は、恋人というものを勘違いしていると思います!」
「どういうことだ?」
ディアナは言い訳をしているかのように、早口になっていく。
「恋人というのは、確かに特別の存在ですが、それは好き合っている相手なことで――」
「好きとはなんだ」
いきなり哲学じみた質問をされ、ディアナは言葉がおぼつかなくなっていく。
「好きとは、その……相手にドキドキしたり……触れたいと思ったり……」
(なんか、ステラの言葉を繰り返しているだけな気がする)
「ドキドキ……」
「テオ様は、私を相手にドキドキしたことが、あるのですか?」
ディアナはやけになり、とんでもない言葉を口にした。
(テオ様はいつも余裕そうだから、答えは決まって――)
「お前といて、動悸が激しくなったことは……ある」
この時、テオの頭に浮かんだのは、まさにディアナに"特別"と言われた時の記憶だった。
その時のテオは、間違いなく初めて動悸が異常に激しくなり、妙な気分になっていた。
予想外の返答に、ディアナの頭は真っ白になった。
(ある……アル……あれ?何の話だったっけ?)
「お前に触れたいというのも、常に思っているし、触れている。あと、あの聖女は安心感も言っていたな、それもある。お前の力が原因なのかはわからんがな」
テオの怒涛の告白に、ディアナは処理が間に合わず、パンク寸前である。
「お前はどうなんだ?俺といる時、動悸が激しくなることはあるか?」
テオに質問を返され、ディアナの停止した頭が再び回り出した。
「わ、たしは……私も、あります」
それはもう、テオと比べられないほどに。
真っ直ぐな眼差しを向けられた時も、割れ物のように触れてくる時も、いきなり抱き上げられた時も。
(あれ?もしかして私、全部当てはまっている?)
彼女は今更気づいたのである、自分は自分の言葉に特大ブーメランが刺さっていることを。
どきめきはもちろん、テオに優しい言葉を投げかけられた時は安心感を覚えるし、触れたい……かどうかはわからないけど、触れられることに嫌悪感は感じない。
「もしかして私、テオ様のこと……好き?」
愛情をあまり感じたことがないディアナは、この感情の正体に確信を持てずにいた。それでも、思わず出た言葉に、案外しっくりきていた。
それを自覚してしまったディアナは、恥ずかしさに耐えきれず両手で表情を隠そうとしたが、テオはすぐその手を掴んだ。
「じゃあ、やはり恋人でいいな」
「そう……かも?」
「なら、お前はあの聖女じゃなく、もっと俺を優先しろ」
話題がいつのまにか最初に振り戻した。しかしディアナにはすでに、それを突き返す理由を失っていた。
「わ、かりました」
テオはやっと満足し、ディアナを抱く力を緩めるが、まだ手放そうとしない。
「あと、恋人というのは、何をするものだ?」
「えっ!?えーと、手を繋いたり」
テオはディアナも指に、自分の指を絡める。
「それから?」
「抱き合ったり」
「もうしている」
「……く、口付け――」
テオはディアナの頭を引き寄せ、唇を重ねた。
「ん……っ」
数秒で離れ、テオは小さく呟いた。
「これは……悪くないな」
もう一度唇を重ね、今度は音を立てながら、舌を滑り込ませ、ディアナの舌を絡め取る。
「んっ……んん……はっ」
その熱に、ディアナの目はとろんと濡れ、恍惚とした表情を見せた。
「これは、癖になりそうだ」
緩めたはずの手に再び力が入り、テオはまだ顔を近づけた。
「ま、待ってください、息が――」
「無理だ、もっとお前をよこせ」
その夜、テオは満足するまで、何度も口付けを重ね、唇のみならず、頬、首筋、耳など、いろんなところに口付けを落とした。
そして正式に恋人となったことで、魔王テオの溺愛は、再び加速した。




