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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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SS 犬派?猫派?

 この日、ディアナは1人自室で読書を楽しんでいた。

 その太ももに、アイセルは猫の姿で寝転がっていた。

「にゃ〜♡」


 アイセルはかわいく鳴き、どうにかしてディアナの気を引こうとした。

 それでもディアナの目は本から離すことがなく、空いた片手でアイセルの頭を軽く撫でるだけだった。

 それだけでも満足したのか、アイセルは喉をゴロゴロさせていた。


 しばらくゆったりとした時間を過ごしていると、部屋の外からバタバタと走る音が近づいた。

 足音は部屋の前で止み、扉が勢いよく開かれた。

「ディアナ!俺のブラッシングをしてくれ!」

 レオードは動物用の櫛を手にし、目をキラキラさせていた。

 

 ディアナはしおりを本に挟み、レオードに目を向けた。

「レオードさん、突然どうしたのですか?」

「実は最近換毛期でな、あちこちむずむずするから、ブラッシングしてもらいたい」

「そうなのですね。したことないのですが、私でよければお手伝いします」

 ディアナは柔らかい笑顔を浮かべた。

 それを見て、レオードはさらに目を輝かせた。


 そして彼は櫛をディアナに渡し、自分は狼の姿になった。

「グゥー〜」

 尻尾をパタパタと振らせながら、ディアナを待つ。


 ディアナはレオードの毛並みを優しく撫でた後、ゆっくり櫛を通す。

 その気持ちの良さに、レオードは徐々にくつろぎ、腹を上に転がった。

 

「やれやれ、節操のない犬ですね。やすやす腹を見せるなんて。ディアナ、尻尾の毛をとかす時は力を強くした方が気持ちいいよ」

「そうなの?」

 アイセルに言われた通りに、ディアナは少し力を込めて尻尾の毛を解く。

「キャン!!」

 そしたらレオードは痛みのあまり、体が跳ね上がった。


「ガルガル……」

 レオードは唸らせながら、アイセルを睨む。

 当の本人はいい気味と言わんばかり、舌を出して知らんぷりをする。

「ご、ごめんなさい。力が強すぎましたか?」

「ディアナが謝ることないよ。それくらいで音を上げるこの犬が弱すぎるだけ」


 レオードはこれ以上我慢ならない様子で、すぐ人型に戻った。

「なんだと、このくそ猫!!」

「ディアナ、見た?こんな乱暴な犬に近いちゃダメだよ〜」

「は!?喧嘩売ってんのか、丁度だ!表出ろ!」

「野蛮な犬に使う時間はないから、喧嘩したいなら他あたって」


 煽り言葉をペラペラと口にするアイセルに対し、レオードは衝動に任せて突っかかる。

 (け、喧嘩!?どうしよう、どう止めれば――)


「ねえ、ディアナはこんな乱暴な犬なんかより、僕とゆったり過ごしたいよね」

「そんなことねえ!お前みてえなくそ気持ち悪い猫より、俺と一緒の方が楽しいだろう」

 ディアナがパニックに陥ると、なぜか2人の注意がディアナに移った。


「どうなんだ、ディアナ」

「僕だよね、ディアナ」

「え、えーと……」

 (誰か助けて!!!)


 コンコン。

 この時、ノックの音が鳴った。

「ディアナ様?お見せしたいものがありますが――」

 セロは控えめに扉を開き、中を覗き込んだ。

 レオードとアイセルが面と向かっていて、その間にディアナが何やら戸惑っている。

「レオード様、何をしたのですか?」

「俺じゃねえよ!」

 セロはジーと疑うような目をレオードに向ける。

 そしたらディアナはまるで救世主でもあったかのように、セロの元へ駆け込む。

「セロくん!見てほしいものがあるでしょう、行こう!」

 そしてセロはディアナに押されながら、2人は共にこの場を去った。

 レオードとアイセルを残して。


「君、この魔王城でも信用がないんだね」

「お前ほどじゃねえよ」

「何を言う、僕ほど有能な魔族、なかなかいないよ」

「ふん。お前ほど胡散臭い魔族、2番以外なかなかいねえよ」

「ほー……」


 2人は同時に部屋を出た。

 魔王城の廊下を早足で歩くと、偶然そこにいるステラを捕まえた。

「おい!人間の聖女。俺とこのくそ猫なら、どっちを選ぶ?」

「当然僕だよね」

「何!?何の話!?」

 2人のすごい形相を見て、恐怖を感じながらも状況が掴めないステラは、反射的に聞き返した。


「あー説明するのめんどいな」

「じゃあ犬と猫、どっちが好きでいいよ」

 あまりにも雑な返答に、ステラは困惑しつつも、答えた。

「どちらかというと……猫かな……かわいいし」


 アイセルは満足気に胸を張り、レオードは悔しそうに「くそ!」と怒鳴る。

「まただ!絶対に俺の方がいいと証明してやる!」

「望むところだ。徹底的に君に敗北を刻み込んであげるよ」

 2人はすぐさまその場を去った。頭上にはてなを浮かべるステラを置いて。


 そして今回は庭に来た。

 そこには素振りしているバルドと、最近動けるようになって、体を動かそうとするカイルがいた。

「おい!人間とも!」

 レオードの大きな声に反応し、2人は振り向いた。

「魔族か、僕たちに何の用だ」

「まあまあ、バルド。こうかっかっすんな」

 魔族への嫌悪を隠さないバルドに対し、カイルは軽く宥めた。


 レオードとアイセルはそれに構うことなく、自分たちの質問を投げかけた。

「犬と猫、どっちのが好きだ?」

「犬と猫、どっちの方が好き?」

 突拍子のない質問に、バルドとカイルは呆気をとられた。

「いったい何の話だ」

「いいから答えろ」

 レオードに促され、カイルとバルドはそれぞれ自分の考えを述べた。

「俺は犬だな。戦場でも犬の探索能力はかなり役立つぜ」

「僕は……僕も犬かな。あまり接したことはないから何とも言えないか、犬なら一緒に走り込みに行けるのは嬉しい」

 今度はレオードが誇らしく胸を張った。

「ほら、見たか!」

「ふん。何で品のない人間たちなんだ。君たちは猫の美しさをまったくわかっていないね」

 レオードとアイセルは再び困惑している2人を置いて、この場を離れた。


 最後に来たのは書庫だった。

 中にはカイルと同じく、少しずつ動けるようになったライアンが、魔導書を手にしながら、デビトと熱く議論していた。

 どうやら、ライアンは魔法のあれこれについて、デビトと意見を交わしているらしい。

 最初こそ敵同士だったものの、同じく研究者気質の2人はとても気が合うのだ。


 そこで書庫に入ったレオードとアイセルを、デビトは気がつき、声をかけた。

「あなたたち、ここで何をしているのですか?」

 レオードたちは2人に近づいた。

「人間、君の意見を聞きたい」

 アイセルは問いかける。

「犬と猫、どっちの方が好きかな?」


 アイセルの静かな圧迫に動じることなく、ライアンは悠々と答えた。

 「僕かい?僕は断然猫がいいかな。お世話するのに、研究の時間をあまり割かなくていいのが美点だ」

 アイセルは長い髪を尻尾のように揺らし、ニヤリと笑う。

 「見たかい、犬。品のある人間は猫を選ぶんだ」

 「は!強い人間は犬を選ぶけどね」

 2人は火花を散らすように、お互いを睨みつける。


 デビトは呆れたような顔で、2人の間に入り込む。

 「あなたたち、なに下らないことで言い争っているのですか?暇なのですか」

 「こいつがディアナにデタラメを吹き込むのが悪い」

 「僕はきれいなディアナを、乱暴で汚い犬に近づかせないようにしただけだよ」


 あまりにも不毛な言い争いに、デビトは右目を引きつらせる。

 「あなたたち、こんなことでディアナ様を困らせないように。罰として、3日間ディアナ様に会うことを禁じます」

 デビトはレオードとアイセルを掴み、罰の魔法陣を刻み込む。

 「はあ!おまっ、何勝手なこと!」

 「まったくだ!僕はディアナの使い魔だぞ!」


 キャンキャン喚く2人を置き去りに、デビトは再びライアンへ向き直る。

 「お待たせしました。では、先ほどお話しした、少量の魔力を長時間稼働させる方法について――」

 「それより、お2人の体に刻み込んだ魔法陣について、その原理を――」

 デビトから魔法陣を解かせることはできないと悟り、レオードとアイセルは苦痛な3日間を過ごすことになった。

レオードが登場してから、ずっとやりたかった話です。

この話のために、アイセルというキャラを入れたと言っても過言ではない!(←過言です)

ちなみになぜ魔族に聞かなかったかというと......魔族は基本自分以外には無関心だからです!

犬猫より自分です!

よろしければ皆さんはレオード派かアイセル派かもお聞かせください(笑)

筆者は猫が好きですが、レオードがバカかわいいと思ってます。


ちなみに魔法陣の効果→ディアナが視界に入ると体に激痛が走ります(ご愁傷様!)

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― 新着の感想 ―
私は、犬派です。 とは言っても、ハムスターを飼っています。
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