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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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SS 男子会(side勇者)

 「なあ、バルド」

 「なんだ、カイル」


 部屋のソファに座って、剣の手入れをしているバルドに対し、カイルはベッドでくつろぎながら話しかけた。


 「バルドって、皇女さんたちとはどういう仲なんだ」

 「それ、僕も気になっていたよ」

 もう一つのベッドに座り、借りてきた魔導書を読んでいるライアンも、話に入ってきた。


 「突然なんだ、この質問は」

 「いいだろう~毎日寝て食べるだけの生活で、退屈してんだよ」

 「僕は魔導書を読みふける生活もいいけど……そろそろ新しい刺激が欲しいな」

 

 吞気な2人に対し、バルドは思わず溜息を吐く。

 「……ステラ様とは、修行を共に乗り越えてきた仲だ」

 「ふーん。じゃあ、聖女さんのことどう思ってんの?」

 バルドの返答に納得してないのか、カイルはさらに質問を投げつけた。


 「どうって、大事な友人と仲間だけど」

 「それ以外にないのか?」

 「それ以外、とは?」

 バルドは困惑した表情を浮かべながら剣を磨く手を止めた。


 「恋愛対象として見てるかどうかだよ」

 「小さい頃からずっと一緒にいるんだから、そういう目で見ること、一度くらいあるんじゃないかい」

 カイルとライアンはニヤリとバルドをからかうように迫った。

 そんな2人の圧に押されつつも、バルドは堂々と答えた。


 「ステラ様は尊敬すべきお方だ!そんな目で見るわけないだろう」

 「はあー、つまんねんの。あんな美人が近くにいるのに、それでも男かよ」

 「君にはガッカリだよ、バルド」

 正直に自分の考えを告げたバルドに対し、カイルとライアンはただ失望したと言わんばかりに、頭を振る。

(なんで失礼な!ステラ様をこのような目で見るなんで)


 思えばバルドは、人生ほとんどの時間、ステラと共に過ごしていた。

 力を使いこなすための訓練に勤しんだり、お互いに弱音を吐いたりと、両親よりお互いのことを知っているかもしれない。

 だからこそ、相手のこと誰よりも信頼できるし、そういう目で見ることはなかった。


 「じゃあ、ディアナ様はどうですか?彼女もステラ様と負けず劣らずの美人でしょう」

 はっきりと否定したバルドに対し、ライアンはさらに問いかける。

 「ディアナ様は……とても可哀想な方です」

 バルドは思わず、ディアナと初めて会ったその日を思い出す。


 ステラと共に鍛練を終えた後、ステラはかなり疲れたのか、駄々をこねていた。

『もういやだー!ステラ、聖女になりたくなーい』

『ステラ様、お菓子でも食べませんか?食べたら元気になりますよ』

『ひっく……食べる』

 すっかりステラの機嫌の取り方を覚えたバルドは、使用人に甘いお菓子を用意させながら、お茶会に使うテーブルを整えた。

『ステラ、ディアナと一緒にお菓子を食べたい』

『ディアナというのは……』

『ステラ、ディアナを連れてくる!』

 バルドの言葉を待たずに、ステラは部屋を飛び出した。呆気にとられたバルドを残して。

 そして連れて来られたのは、深い紫の髪をした、慎ましく儚い女の子だった。

 この国で暗い髪色を持つ人は初めて会ったから、バルドは思わず珍しさで見つめてしまった。

 そんな視線を受けた少女は、気まずく感じたのか、ずっと俯いていた。

『ディアナ、彼は勇者のバルドだよ。バルド、ディアナは私の双子の姉なの!かわいいでしょう』

『バルド・エルメスと申します。ディアナ皇女殿下』

『……ディアナ、ローランドです』

 名乗ったきり、その少女は口を開くことはなかった。ステラがどれだけ、鍛練の愚痴を口にしても、お菓子が美味しいと満面の笑みを浮かべても、彼女はただ頭を低くしながら頷くばかり。

 そしてお茶会の途中で、ステラは国王に呼び出され、ディアナとバルドだけとなった。

『『……』』

 どっちも声を出すことはなく、沈黙の時間が続いた。

 やがて使用人の1人が、新しいお茶を持って、入室した。

 『勇者様、お茶を新しいお茶でございます』

 使用人はバルドのカップに新しいお茶を注いだ後、すぐ部屋から出ようとした。

 『……ディアナ皇女殿下には淹れないのか?』

 バルドが疑問を口をすると、ディアナはビクッと体が弾み、使用人は困惑した表情を浮かべた。

『えっ、その……』

『彼女のカップにもお茶がないだろう』

『……かしこまりました』

 使用人は渋々ディアナのカップに新しいお茶を注ぎ、すぐ退室した。

 再び2人きりになった空間で、ディアナはようやく声を発した。

『こ、怖く、ないの?』

『怖い、とは?』

『私の、髪……呪われてる、から』

 目の前の少女は何かに怯えているように見えた。

 その顔を見て、バルドはどこかもどかしいと感じた。

『ディアナ皇女は、何もしていないではありませんか』

 バルドの言葉に、ディアナはポカンと、目を丸くした。

 思えば、それをきっかけに、バルドとステラの休み時間に、ディアナと一緒に過ごす機会が増えた。


 「ディアナ様は何もしていないというのに……しようとしていないのに、恐れられている。僕はそれが、とてももどかしい」

 カイルとライアンはただ静かにバルドの話を聞いた。

 「そうか……バルドはやっぱ、真面目だな」

 「む、どういう意味だ」

 「バルドと皇女たちの恋バナが聞きたかったというのに、そんなに真面目な思い出話を聞かされるとは、思わなかったぜ」

 カイルは両手を後頭に回し、ベッドに寝転がる。


 「まったくだ。これでは、バルドとステラ様の仲をからかうこともできないではないか」

 予想外の反応を見せるカイルとライアンに対し、バルドはムッとなった。

 「そういうお前たちは、こういう恋愛話を持っているのか」

 「ねえな」

 「僕もないね」

 あっけないほどの即答だった。


 「俺はずっと戦場にいたからな。そもそも大事な人を作らないようにしている……あ、時々娼館には行ってるぜ」

 「僕は魔法の研究で忙しいんだ。一分一秒たりとも無駄にしたくない」

(それなのに僕の話で花を咲かせようとしたのか、なんで理不尽な!)


 と、バルドは心の中で思わずツッコんだ。

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