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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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話し合い

次で第二章の最終話です。

「ごほん。そろそろディアナを解放してくれない、魔王。この状況をどうにかしたいのだけど」


 彼の一言に、テオ様がやっと渋々と手を放してくれた。

 デビトさんたちは倒れている男性たちを抱え、私たちに近づく。

 今後の話し合いをするために。


 私は気を取り直し、この場を仕切ろうと口を開く。

「えっと、とりあえずこの場は私が仕切ろうと思います。改めて、ディアナと申します」

 満身創痍でいながらも、なんとか上半身だけ起こし、話を聞こうとする2人の殿方のために、一応名乗った。

「元軍人のカイルだ」

「宮廷魔法研究者のライアン・ブルックスです」

 唯一私と面識がないカイルさんとライアンさんを初め、とりあえずこの場の全員が簡潔に名乗ってから、私は改めて状況を整理した。


「つまり、ステラたちは私を助けようと魔王城に乗り込んで、レオードさんたちと交戦した。テオ様たちは私の瘴気をどうにかしようとステラを誘拐し、ついでにバルドたちを迎撃した、ということですね」

 声を上げる人がいない。訂正はないということだろう。


 私は少し考え、全員に向かい、頭を下げた。

「まず、謝らせてください。この場にいる全員、私のせいで争うことになって、怪我人まで出してしまいました。申し訳ありません」

 

「ディアナが謝ることじゃないよ!」

「そうです!元はというと、ディアナ様は不適切に処刑した国王が原因ですし」

 ステラとバルドは慌てて訂正する。

 それでも、私は頭を横に振った。


「それでも、この争いは私が原因で起きたのです。だから、私が責任を持って、カイルさんとライアンさんの治療にあたります。ここでひとつ提案があります」


 私は全員の顔を一通り見回してから、テオ様に向ける。

「テオ様、勇者パーティを一時的に魔王城に留まることはできますでしょうか」


 勇者パーティの4人がざわついた。

「どういうことでしょうか、ディアナ様」

 その筆頭であるバルドが問いかける。


「見るに、カイルさんとライアンさんの傷はとても深い。治療するのに時間を要すると思われます。魔王城を出てしまったら、瘴気が漂う森です。その弱まった体では、余計に体調を崩してしまいます。なら、完治するまで、ここにとどまった方がいいでしょう」

 私は当事者であるカイルさんとライアンさんに目を向ける。

 2人とも、とても冷静に、話を聞いていた様子。

「俺は構わないぜ。この体じゃ、魔族に遭遇したらひとたまりもない。休戦してくれるってんなら、お言葉に甘えたい」

「僕も同意見です。長い間研究室を空けてしまいますが、特に急いだ用事はないですし。それに――」

 ライアンさんはステラを見やる。

「聖女様を連れ出したことで、どんな処罰を下るのかわからないですし。今のうち体の調子を取り戻さないと」


 ここでステラは一瞬、はっとした表情を見せた。しかし、すぐ表情を取り繕い、厳しい表情で話を聞く。

 私はテオ様に向き直す。

「いかがでしょうか、テオ様。しばらくの間だけ、勇者たちをここに置くわけにはいかないでしょうか」

 少し緊張しながら、テオ様の返事を待つ。


「……ディアナがそういうなら好きにしろ。ただ――」

 彼はバルドを睨みつけた。

「出ていく時、ディアナを連れ帰ることは許さん」

 (テオ様、ずっとこのことを気にかけていたのかな)

 そう考えると、胸の奥がドキッと高鳴った。

 

 しかし、バルドはすぐ返事をせず、探るように私を見た。

「……ディアナ様、ここに残りたいのですか」

「ええ……テオ様たちは、私にとても良くしてくださっているわ。私はそんなテオ様たちと一緒にいたいの。それに、城には私の居場所はないでしょう」

「……」

 バルドは少し沈黙してから、テオ様に言い放った。

「わかりました。しばらくここに滞在し、ここにいる魔族を見極めます。もしその間に、僕の仲間が傷つけられることがあったら、その時こそ魔王を倒し、ディアナ様を連れて帰ります」

「ふん。できることならやってみろ」

 2人はパチパチと、お互いを睨みつけていた。


 私はそんな2人から目を逸らし、今度はアイセルさんに目を向けた。

「それから……アイセルさん、あなたについてですが――」

「ディアナ、話はなんでも聞くから、僕のこと"アイセル"と呼んでくれないかい?」

 彼は熱がこもった瞳で、私を見つめる。

 その視線で、思わず体が固まってしまう


「……ディアナ、お前はこの猫をどう罰したい?」

 テオ様が私に問いかけた。

 (確かに、アイセルさんが原因で私が瘴気に侵され、最終的にステラにまで危険が及んだ……このことをうやむやにするわけにはいかない)

「……デビトさん、アイセルさんを私に逆らえないようにする方法はありますか?」


 名を呼ばれたデビトさんは、少し考える素振りを見せた。

「あるにはありますが……どうしてそれを?」

 今度はデビトさんたちが、不思議そうな表情を見せた。

(罰するなら、もっと直接的な方法を考えると思ったのだろう)

 

「アイセルさんは……アイセルは私の力について深く知っています。この力を使いこなすには、彼が必要なんです」

「……理解しました。では、使い魔契約を結びましょう」

 常に冷静に状況を把握するデビトさんは、一瞬で私の意図を汲み取り、提案した。


「使い魔契約って、テオ様とレオードさんが結んでいる契約のこと?私にもできるの?」

「もちろんです。魔力を扱える者であれば、誰でも扱えます。通常は双方の同意を得た上で結ぶ契約ですが、魔王様と犬のような、圧倒的実力差がある場合は、ゴリ押しで契約を結ぶこともできます」


 デビトさんは手から魔法陣を生み出した。

 「さて、そちらの白の魔族は、大人しくこの契約に了承するか、あるいは……」

 ――力づくで契約させるのか。

 全員の目線がアイセルに集中した。

 

 当の本人は片手で顔を覆っていて、表情を見せない。

 「ふっ、ふふふふ」

 やがて彼から、小さな笑い声が聞こえた。

 「ああ!いいよ!ディアナが望むなら、僕はディアナの飼い猫として、可愛くお利口に鳴こう」

 彼は恍惚した表情でこちらを見る。

 心なしか周りの人から密かに『この人ヤバい』って思われている気がする。


 「……さようですか。では契約の魔法陣を展開させます」

 デビトさんの手にある魔法陣はアイセルの胸元に移動させた。

 「ディアナ様、その魔法陣に手を当ててください」


 私は言われた通り、アイセルの胸元にある魔法陣に触れた。

 「私の言葉を復唱してください。『汝、我がしもべとなり、我が心に従えることを、誓いますか』」

 「汝、我がしもべとなり、我が心に従えることを、誓いますか」


 アイセルは楽しそうに、私の手に手を重ねる。

 「もちろん、誓うよ、我が主」


 この瞬間、魔法陣がアイセルの体に入り込み、胸の奥から奇妙な感覚を覚えた。

 「はい、これで契約が成立しました。ディアナ様が彼の名前を呼んだ時、彼はあなたの言葉に逆らえません」

 案外、あっけなく契約が成立したことに、私は呆然と立ち尽くす。


 「話が終わったな。じゃデビトは人間どもを案内してやれ。俺はディアナを休ませる」

 「えっ!」

 テオ様は私を強引に抱き上げ、その場を去った。

 部屋を離れる前に、なんとなくステラたちのきょとんとした表情が見えた気がする。

 消えたい。


 なお、後から聞いた話によると、バルドたちは魔王城のあちこちを探し回ったけど、一緒に来たはずのメイリーの姿がどこにも見当たらなかったらしい。

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