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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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一時休戦

「――離れてください、ディアナ様」

 バルドは鋭い眼差しでテオ様を睨みつけながら、剣先をテオ様に向けている。

 思わず息を飲んでしまう。

 (バルドのこんな怖い表情、初めて見るわ)


 緊張でテオ様の胸元に当てている手をぎゅっと握り締めると、それに応えるようにテオ様も、私の背中に回した手に力を込めた。

 

「続きをしたいというのか、人間の勇者」

「仲間を傷つけた魔族を、見過ごすわけにはいかない」


 バルドの言葉を聞き、私は今いる空間を見回す。

 扉の隣にレオードさん、デビトさんとセロくんが見物しながらこちらを眺めている。

 その足元に傷だらけの男性が2人いる。

 意識こそあるものの、痛みで体を起こすことができず、悶えている様子だった。

 そして反対側では、ステラが心配そうにこちらを見ている。

 倒れている男性たちほどではないけど、彼女にも所々、打撲の跡がある。


「これは……テオ様たちがやったのですか?」

 その痛々しい状況から目を逸らしたく、私はテオ様に目を向ける。

「俺はただ、侵入者を捕らえただけだ」

 さも当然のように、テオ様は言い放った。


「じゃ、なぜ必要以上に傷つけた!お前たちの実力なら、無傷で捕えることもできただろう!」

 テオ様の言葉に納得できなかったのか、バルドは怒鳴りつけた。

「なぜ無傷で捕らえる必要がある。殺さずに捕らえただけ、ありがたく思え」

「っ!もういい!無意味に人間をいたぶる魔族は全員滅ぼすべきだ!」


 バルドは剣を構えた。

「立て魔王!今度こそお前を――」

「やめてください!バルド」

 私は立ち上がり、テオ様を庇うように手を広げた。


「なぜですか、ディアナ様!?あなたも長らく魔族の元で酷い目に――」

「あっていないわ!」

 バルドの言葉を遮り、私は言い放った。

「テオ様も、魔族のみんなも、私によくしてくれた!だからバルドがどうしても彼らの存在を許せないというなら……私が相手になります!」


 私の言葉に、この場の全員が息を飲んだ。

「な、何を言いますか、ディアナ様!僕にあなたを傷つけるなど……」

 バルドは酷く狼狽えた。

 それを見て、私は畳み掛けるように交渉した。

「そちらの殿方とステラは私が責任を持って、完治するまで面倒を見るわ。だから、私に免じて、剣を下ろしてくれる?」


 バルドが剣に込める力が弱まっていく。

 それでも、彼はそれを放さない。


「ぼ、くは……」


 ここで私たちの会話に、ステラが割り込んだ。

「バルド、ここは一時休戦しよう。魔王を倒せても、私たちに勝ち目はないわ」

 ステラは一瞬、扉のそばで控えているデビトさんたちを見やる。


「しかし……ステラ様も酷い目に遭われたではありませんか」

「違うの!これは魔族たちにつけられた傷じゃないの」


 ステラの言葉に、バルドも私も驚きを隠せない。

「では誰か!?」

 ステラは謁見室のあちこちを見回す。

「これは……メイリーにつけられた傷なの」

「メイリーが!?」

 バルドも一緒になってこの部屋を見回す。


 (メイ、リー……?)

 その名前を聞いた瞬間、全身が本能的に震え出した。

 蓋をした過去の記憶が、溢れ出す。


 『ほーら、ディアナ様〜食事の時間ですよ』

 嘲笑うような表情で差し出された、ガラスの破片が散りばめられた食事。


 『寝室の準備ができましたよ〜』

 強引に座らされ、寝かされた、小石が撒かれたベッド。


 『随分楽しかったですね〜ディアナ様。わかってますか?自分の立場』

 ステラたちと楽しくお茶会をした後、必ず行われる、鞭で打たれる時間。


「あ……いや……」

 記憶に呑まれ、目の前まで真っ暗に染まっていく。


「ディアナ様?どうしましたか?」

「ディアナ?ディアナ!ごめんなさい!私が彼女の名前を出したばかりに――」


 バルドとステラが何かを話している。

 それすら聞き取れず、私は自分を守るように、体を抱く。

 (いやだ……いやだ、いやだ……怖い)

 ふと、体全体を包み込む温もりを感じた。

「ディアナ、大丈夫だ。俺がいる」

 この心地良い声と共に、私の震えが収まっていく。

 視界も徐々に戻っていき、目の前で慌てているバルドとステラの姿を捉えた。


 そして肩に回された、テオ様の手に気がつく。

 私は今、テオ様に背後から抱かれている。

 さっきまでの恐怖が一気に霧散し、その代わりに気恥ずかしさが一気に込み上げてくる。


「あ、あの、テオ様……もう大丈夫なので、手を……」

 暗に放してくださいと伝えたいのに、テオ様は不可解そうに私の顔を覗き込む。

「無理すんな、気がついたばかりだろう。これ以上体に負担をかけるな」

「いや、あの、本当に大丈夫なので」

 目の前のバルドとステラがきょとんとこちらを見ている。

 視線が痛い。

 思わず両手で顔を隠す。


「どうした?まだめまいがするのか」

 テオ様が耳元で囁く。体が熱くなってきて、爆発しそう。


「えーと?これは、どういう状況ですか?」

「な、なんか、ディアナが可愛い……」

「何を言っているのですか、ステラ様」

「だって、こんなディアナ、今まで見たことないもん!」


 しばらく私たち4人であーだこーだしていると、息を潜めていたアイセルさんが会話に割り込んだ。

 

「ごほん。そろそろディアナを解放してくれない、魔王。この状況をどうにかしたいのだけど」

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