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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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ディアナ、覚醒

 「協力してください、アイセルさん」

 「この瞬間を待っていたよ。やっと僕を頼ってくれたね、親愛なるディアナ。僕はどうすればいいのかな?」

 「私に、力の使い方を教えてください。あなたならわかるでしょう」


 アイセルさんは私の言葉を聞いて、目を細めた。

「……あの方の声が聞こえたんだね」

「……ええ」

 あの方というのは、おそらく夢に出て来た女性のことだろう。

 夢で『あの子が教えてくれるわ』って聞こえた時、なんとなくアイセルさんの顔が思い浮かんだ。

 2人は深い仲かもしれないと思った。

 だからきっと、アイセルさんなら、この力を使いこなす方法を教えてくれる。


「そう……力を使うのは簡単だ。魔力交換を行うように肌を合わせ、力を流し込む。その時に祈りを込めるんだ」

 アイセルさんは私の元まで来て、手を持ち上げる。

「一度やってみてご覧」


 私は言われた通りアイセルさんの手を握り、体に感じる力を彼に流し込む。

 (――助けたい)

 そう強く念じた時、手元から強い紫の光が放たれた。

 セロくんとレオードさんたちを癒す時より、遥かに強い光が。


「これは……!」

「え、なんで?」


 背後から驚くバルドとステラの声が聞こえる。

 微かにデビトさんたちの息を飲む気配も感じる。


「上手だ。もっと強く願えば今の魔王にも通じるだろう。うまくいくように、僕もサポートしよう」

「ありがとうございます……デビトさん、私とアイセルさんを、結界の中に入れてください」

 私はデビトさんの方に振り向いた。

 彼は真剣な表情を浮かべていたが、やがて柔らかい笑みに変わった。

「これがディアナ様の策ですね……わかりました。魔王様の元までエスコートさせていただきます」


 デビトさんは魔王がいる方向へ歩き出す。私はその後を追う。

「ディアナ!」

 ステラが心配そうな声で、私を呼び止める。

 私は立ち止まったけど、振り返らなかった。

 

「……これは、ディアナがやらないとならないことなの?」

 ステラの質問に対し、私は少し思案してから、ステラのほうへ顔を向け、息を吸う。

「……これは、私がやりたいことだよ」

 彼女にほんのりの笑顔を見せてから、私は再び歩き出した。

 ステラは今度、呼び止めることなく、ただ不安そうに私を見守る。


 結界の手前まで来て、アイセルは私の手を取りながら、耳打ちする。

「中は魔王の魔力が充満しているから、僕と手を繋いでいてね。しばらくは中和できるから」

 私は返事の代わりにアイセルさんの手を握り、デビトさんに合図をする。

「では、結界に隙間を開けます。魔王様の魔力が漏れ出ないようにすぐ塞がなければならないので、速やかに入ってください」


 デビトさんは説明を終えてから、指で結界の表面をなぞる。

 そこから細い線が現れた。


 デビトさんはその線から結界に人が通れるくらいの穴を開き、私とアイセルはすぐそこを潜る。


 結界の中は高濃度の魔力に満ちて、漆黒に包まれている。

 少し息苦しさを感じたけど、アイセルさんが魔力を流し込んでくれているおかげで、なんとか耐えられている。

 光がない中、私はテオ様を探すために手探りながら前に進んだ。


 (どこ?どこにいるの?テオ様!)

 結界の範囲はそう広くないのに、暗闇のせいで方向感覚が狂わされている。


「あ゙あ゙……ぐっ」

 どこから苦しそうな喘ぎが聞こえる。

 でもその音の主の居場所がわからない。

 焦燥感に襲われ、私は思わず歩みを早めようとするが、アイセルさんによって引き止められる。

 

「焦らないで、落ち着いて。魔力の流れを読んで。今の君なら見えるはずだよ」

 彼の言葉通り、私は一旦立ち止まる。

 一回深呼吸してから、魔力を観察する。

 (……これは……これが、流れ?)

 今まで霧のように見えた魔力だけど、注意深く見ると、それは波を打っているかのように動いている。

 私はその流れを辿り、やがて蹲っているテオ様の姿が見えてきた。


「テオ様!」

 私はすぐ彼の元へ駆けつける。

「ディ、アナ……なぜ……ここに」

 テオ様は胸元を抑えながら、なんとか私の姿を捉える。

 私はすぐテオ様の手を両手で包む。

 そして力を流し込みながら、祈る。

 (テオ様を助けたい!お願い、助ける力をください!)

 手から紫の光が放たれ、乱れていたテオ様の息が少しずつ整っていく。


「ディアナ……お前、何を……?」

 結界内の魔力濃度も少し薄れているのを感じる。

 (よかった……ちゃんと効いて――)

「ぐっ!」

「ディアナ!?」

 強すぎる魔力に悲鳴を上げるように、動悸が激しくなっていく。


 それでも祈りを止めるわけにはいかず、私は痛みに耐えながら、テオ様の手を握り締める。

 しかし体の限界を訴えるかのように、光は弱まっていく。

 (お願い、お願い、お願い……!)

 視界がくらくらする。

「ディアナ!無理するな!」

 テオ様の声が聞こえる。

 それだけでなんとか意識を持ち直す。


 ふと、私の両手が、温もりに包まれた。

「ディアナ、焦らなくていいよ。僕がサポートするから」

 アイセルさんの柔らかい囁きとともに、両手から彼の魔力を感じた。

 その魔力に促され、私の体に秘められていた力もまた、増幅していくのを感じた。


 私はもう一度深呼吸し、集中する。


 (お願い……テオ様の苦しみを払ってください)


 そう祈った瞬間、光が眩しくなり、結界全体を包み込む。

 

 しばらくすると光が収まり、周りに漂っていた魔力が跡形もなく消えていた。

「――で、きた?」

 無事にテオ様を助けられたとわかった途端、体から力が抜けて、私はテオ様の懐に倒れ込んだ。


「ディアナ、平気か?」

 頭上からテオ様の低く心地良い声が聞こえる。

 背中からテオ様の手の温もりを感じる。

 久しぶりに感じたその温もりは、とても心地よくて、安心する。

 私は少し見上げ、テオ様のきれいな赤い瞳を見つめる。

「テオ様……よかった、ご無事で」

 目から涙が溢れそうになるところ、テオ様は優しく私の頬に手を添える。

「ああ……よくやった」

 彼の瞳がとても優しく、見たことないくらいの熱が孕んでいるように感じ、静まったばかりの心臓が、今度は違う意味で高鳴り始めた。


 お互いなんとなく目を逸らさずにいると、すぐそばから気配を感じた。

 

「――離れてください、ディアナ様」

 そこには鋭い眼差しで睨みつけ、剣先をテオ様に向けている、バルドの姿があった。

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