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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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茶番劇

《ステラ目線》

 何が起きているのだろう。

 さっきまでディアナの部屋にいたはずなのに、いきなり霧に包まれて、次の瞬間には謁見室にいた。

 そしてメイリーに掴まれていたはずのディアナの姿はどこにもなく、代わりに大きな人形が転がっていた。

 さらにメイリーは今、魔王によって首を絞められている。


「あ゙……が……」

 メイリーは必死に体を捻り、魔王の手を剥がそうとしたけど、魔王の前では無駄な足掻きでしかなかった。

 そしてメイリーの動きが止まった瞬間、魔王はその首を解放し、彼女は地面に倒れた。


「メイ、リー?」

 目の前の光景が恐ろしく、私はただ呆然と眺めるしかできなかった。


「その人間は生きているよ」

 耳元に、甘い男性の声が流れてきた。

 あの白い魔族はいつのまにか、私のそばに来ていた。

 私はビクッと体を弾ませ、距離を取ろうと体を反対側に移そうとしたが、体の痛みで思い通りに動かすことが出来なかった。


 目の前で甘く微笑む魔族が、段々と恐ろしく見えて、私は声を震わせていた。

「な、なんで、私たちは、ここに……?さっきまで、ディアナの部屋に……」

「いや、君たちは最初から、この謁見室にいたよ」

 彼は表情を変えることなく答えた。


「ディ、ディアナは?」

 恐怖を抑えながら、私は魔族に問いかける。

 彼は面白そうに音を立てて笑った。

「君たちがさっきまで見えていた"それ"なら、地面に転がっているよ」

 彼はメイリーの隣にあった人形に、指差す。

 確かにあれは、ディアナと同じくらい大きさだけど、髪も顔の作りも、ディアナと似たところなんで1つもなかった。

 なのにこの魔族は、それが私たちが会ってたディアナだという。

「どう、いうこと?」

「まだわからない?君は頭が悪いんだね」

 彼は指からモヤを放ち、人形に纏わせた。

 そしてモヤが散り、そこにはディアナと瓜二つの人間が寝ていた。


「つまり……さっきのディアナは、人形?」

 さっきまで私が必死に守ろうとしたディアナは、ただの人形だった。

 じゃあ、私は何のために、メイリーに抗ったというのだろう。

 いや、それ以前に――

 

「なんで……あなたが言ってくれたよね、自己は他の魔族と違うって!あなたがディアナに会わせてくれるって!それなのに、なんで!?」

 さっきまで恐怖に染めていた心は、じわじわと怒りに変わっていった。

 私はただ、ディアナに会いたいだけなのに、なんでこの魔族たちは邪魔してくるのか。

 しかし私が怒りをぶつけたにも関わらず、白い魔族はますます笑顔が広がった。

「ふーん、僕の言葉を信じてくれたんだね。人間の聖女って、とーても素直で……バカなんだね」

「……は?」

 彼は踊るように体をぐるりと動かし、とても機嫌が良いように目を細めた。

「確かに僕は他の魔族と違って、嗜虐心は強くない……でも、ないわけではないよ。僕はね――」

 歩みを止め、彼は私に背を向けながら、視線だけをこちらに向ける。

 彼は顔を赤らめ、うっとりと言い放った。

「人間が騙され、絶望する瞬間を見るのがだーい好きなんだ」


 絶望だった。

 この状況に対してではない。

 自分に対してだった。

 私は今日、何回自分の無力さを思いしればいいのだろう。

 メイリーに騙され、魔王にいいように使われ、挙げ句に魔族を信じてしまうなんで。

 心が黒く染まっていく気がした。


「そもそも君たち人間に、ディアナを会わせるわけないのに」

「おい、猫、その人間の聖女を牢に戻しておけ」

「倒れてる人間はどうするの?魔王」

「これは別の場所に置く」

「はいはい。約束、忘れないでね」

 白い魔族は私の元に近づき、手を伸ばした――


 バタン!

 扉が勢いよく押し開かれた音がした。

 そこに目を向けると、息が乱れているバルドがいた。


 彼はざっと場を見回した。

 私とメイリーの姿を捉え、彼の表情はより一層、強張った。

 そして中央に堂々と立っている、魔王に剣を向けた。

「……お前が魔王か」

「……貴様が勇者か」

 臨戦状態に入っているバルドと対照的に、魔王はただ威圧感を放ちながらそこで立っていた。


 バルド険しい表情のまま、魔王に怒鳴りつけた。

「お前か?ステラ様とメイリーを傷つけたのは!」

 どうやらバルドはこの状況を見て、私とメイリーは魔王によって満身創痍になったと思ったらしい。

 そう考えるのも無理はない。

 彼は、メイリーが裏切り者だと、知らなかったから。


「違うの、バルド――」

「許さない!お前も!人間を自分の欲のために痛めつける魔族も!全部僕が粛正してやる!」

 バルドにメイリーのことを訴えようとするも、彼は聞く耳を持たなかった。

 ただ目の前の魔王に憎しみの眼差しを向けていた。

 そして彼は魔王に向かって走り出し、剣をぶつけようとした。

 しかしその刃先は、魔王に届くことはなかった。

 

「……これが人間の勇者か……まだ弱いな」

 魔王の周りには見えない結界が貼ってあり、バルドの剣をぶつけてもびくともしなかった。

「正々堂々戦え!魔王!」

「貴様に構えるほど、暇ではない」

 魔王は手をバルドに向けた。

 そこから小さな火種が集まっていった。

 

 バルドは咄嗟に遠くに跳ねた。

 次の瞬間、魔王の手から青い炎が放たれた。

 きっとバルドが一瞬でも遅れていれば、灰になっていたのだろう。

 それほどの熱が、こちらまで届いた。


「これほどの差があっても、貴様は戦うというのか」

「僕は……戦わないとならないんだ!魔族によって苦しめられた人たちのために、そして僕のために戦っている仲間たちのために!」

「……そうか、だが貴様の仲間たちはもう戦えないそうだ」

 魔王の視線はバルドの後ろに向けた。

 バルドもその視線を辿り、扉の方へ振り向いた。


「魔王様、勇者御一行を捉えました」

「魔王、言われた通り、死なないように手加減したぞ」

 見たことない深く紺色髪の魔族と、正門で会った灰色髪の魔族がそこにいた。

 そして彼らは……傷だらけのライアンさんとカイルさんを、地面に放り投げた。

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