表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/68

傷跡のわけ

《ステラ目線》

 何が起きているのだろうか。

 頭が壁にぶつかって、とても痛い。

 ぼんやりだけど、目の前のメイリーとディアナの姿を捉える。


 「どうですか~ディアナ様。久しぶりに可愛がられる感想は~?」

 「やめ……やめて、っください……痛いっ、痛い」


 メイリーは鞭を取り出し、容赦なくディアナに向けて振り下ろす。

 ディアナは頭を手で抱えながら、それを何度も受け止める。

 鞭に当てられる度、聞くに絶えない悲鳴が響く。


 「くっ、あっ……あああ!」

 「くふふふ、とてもいい声ですよ、ディアナ様。それこそ私の親愛なるおもちゃです」


 メイリーは心底愉悦そうな声で、ディアナをいたぶる。

 森で遭遇してきた魔族と同じような、声で。


 私は痛む頭を抑え、声を振り絞る。

 「メ、イリーっ……やめ、なさい」

 

 メイリーの頭が、こちらに振り向く。

 「ステラ様……まだ意識があったのですか」

 彼女は私に近づき、髪を力強く掴み上げる。

 

 「いたっ!」

 「思いっきり壁にぶつけて差し上げましたのに、ステラ様は案外しぶといようですね」


 顔を近づけるメイリーは、今まで見たことのない表情をしていた。

 不気味なほどに、その瞳は闇を孕んでいた。


 「なんで……こんな、ことを」

 「なんで?そんなの決まっているでしょう」


 彼女は歪な笑みを浮かべる。

 ディアナは呪われた存在だからか、望まれない皇女だからか。

 理由はいくらでも思いつく。

 しかしメイリーが口にした言葉は、そのどれでもなかった。


 「王族が、死ぬほど嫌いだからですよ」


 徐々にクリアになっていく視界に、憎しみに満ちたメイリーの瞳が映り込む。

 「憎くて憎くて仕方ないのに、王には手も足も出せない……なら、この恨みはディアナ様で晴らすしかないでしょう」


 彼女は私の頭を掴み、思いっきり壁にぶつける。

 「ああっ!」

 激しい痛みが、後頭から伝わってくる。

 

 「ああ、でも、今は魔族の森にいますから、ステラ様が何かあっても咎められることがありませんね」

 痛みで力が入らない私の体に、メイリーは力強い蹴りを入れる。

 「くっ!」


 そして彼女はディアナに向き直す。

 「でも、せっかくディアナ様に再会できたので、やっぱりもっとかわいがらないと」

 彼女はディアナの顔を掴み、無理矢理自分に向けさせる。


 「どうでしたか?ディアナ様。私のいない魔族の城で、楽しく過ごせましたか?それとも昔より酷い目に遭いましたか?」

 ディアナの服を引き裂き、あっちこっちにある傷跡が、空気に晒される。

 「魔族にいたぶられましたか?それとも、奴隷としてこき使われましたか?ああ、そのきれいな顔で、あの魔族たちの慰み者にでもなりましたか?」

 メイリーは聞くに絶えない言葉を、次々と並べる。

 ディアナはすすり泣きながら、体を震わせているように見える。


 私はただひたすら、この状況の打開策を、思考に巡らせる。

(どうすれば、メイリーを止められる?私じゃ、メイリーにかなわな――)

 ふっと、あるものが脳によぎる。

(そうだ!あれを使えば!)


 私は服のポケットから、あるものを取り出す。

 体の痛みを耐え、おもむろに立ち上がる。


 「メイリーっ、今すぐ、やめなさい!」

 私はそれを掲げ、いつでも壁にぶつけられるように構える。


 「っ!あれは」

 メイリーはこちらに振り向き、私が手にしている物を捉えた瞬間、彼女の表情から緊張が一瞬走った。

 私は彼女から受け取った手鏡、彼女の『命』を見せつけるように持つ。

 「これ以上ディアナに何かをすれば、あなたを殺すわ」

 

 彼女の表情は最初こそこわばっていたけど、すぐ余裕を取り戻した。

 「……心優しいステラ様に、こんなことができるのですか」

 「できるわ!私は、ディアナを一番に思っているもの!」

 「ふーん、そうです、か!」


 彼女は私に向かって、飛びついてきた。

 私は思わず驚いてしまい、手鏡が手から滑り落ちた。

 「あっ!」

 私はそれを受け止めようと手を差し伸べたが、酷い眩暈に襲われ、足元を崩した。


 「いたっ!」

 私は地面に転げ落ち、手鏡は私の目の前で、ガランと地面に衝突して割れた。

 「くっ!」

 視界の片隅に映り込んだメイリーは、苦しそうに心臓のあたりを掴み、呻いた。


 「……メイリー?」

 頬に冷や汗が伝い、私はメイリーを観察する。

 彼女の『命』である手鏡が割れたせいなのか、彼女はとても苦しそうだ。


 「ぐっ……くふふふ……ふははは!」

 しばらくすると、彼女のうめき声が笑い声へと変わっていった。


 「な……なんでっ?!」

 手鏡は割れているのに、彼女は笑っている。


 「あははは!ステラ様は本当に、甘いですね」

 次の瞬間、彼女は顔を上げた。

 その表情には、苦しみがひとかけらもなかった。


 彼女はゆっくりこちらに近づき、手鏡を拾い上げた。

 そして跪き、私にそれを見せびらかす。

 「ステラ様は最初こそ人を疑うのに、肝心なところはすぐ信じてしまうのですね」

 

 「まさかっ!」

 彼女の言葉から、私はある可能性に辿り着いた。

 そしてメイリーの次の言葉が、私の考えを裏付けた。

 

 「どうしてこの鏡を渡されてすぐ、壊してみなかったのですか?王はすぐそうしたのに」

 冷や汗が止まらない。

 自分の甘さが、今はとても恨めしい。

 「これは……あなたの『命』では、なかったのね」

 「そう簡単に『命』を渡すわけないじゃないですか~」

 彼女は手鏡をしまい、再びディアナの方に戻る。


 「ステラ様、後でたっぷり可愛がってあげますので、大人しくしてくださいね。ディアナ様、お待たせいたしました。楽しいことの続きをいたしましょう」

 彼女は再び鞭を持ち上げ、それを振り下ろそうとした瞬間、部屋中に白いモヤが現れた。

 そしてそれが散った後、私たちは、さっきまでいた部屋とは違う空間にいた。


 パチパチパチパチ。

 拍手音が響いて来た。

 私は辛うじてあたりを見回す。

 壁際に、あの白い魔族が拍手しながら立っていた。

 そして少し上の方に――玉座に魔王が座っていた。


 私たちは、なぜか謁見室にいた。


 「はあ!?なにこれ!?」

 メイリーは大きな声を出した。

 彼女は、掴んでいた()()()()()()()()()()()()()()()を、地面に倒した。

 

 「いいショーを見せてくれたよ。君もそう思うだろう、魔王?」

 白い魔族は魔王を見上げる。

 魔王はゆっくり階段に降り、メイリーの首に手をかける。


 「俺の所有物を傷つけたのは貴様だな。死ぬより苦しい罰を与えてやろう」

 魔王からは、空気を一気に凍りつくような威圧感が放たれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ