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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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夢か幻か

そろそろディアナとテオ様にイチャイチャさせたい今日このごろ

《ステラ目線》

 抵抗することも出来ず、私とメイリーは牢らしき場所に閉じ込められた。

 緑色の魔族がここから離れようとした時、私は慌てて呼び止めた。

 

「待って!あの子は……ディアナはどうなるの?」

 その魔族は、頭を振り返り、感情を見せない目で、私を見つめた。

「……人間には関係ないことです」

 そして彼は、すぐこの場を去った。


 静かになった空間で呆然と立ち尽くす私は、するすると足が崩れ落ち、さっきの光景をぐるぐると思い返した。


 (さっきの魔王、ディアナを優しい目で見てた?だって……魔族は、残虐な生き物で、実際バルドもカイルさんも魔族にもで遊ばれてて――)

「皇女様、しっかりしてください!」


 いつのまにか目の前に来て私と目を合わせようとするメイリーの声によって、意識が現実に引き戻された。


「メイ、リー」

「皇女様、気をしっかりに。皇女様はディアナ様を救うに来たのです。魔族なんかに心を惑わせられないでください」

 (そうだ。私はディアナを助けたくて……もう一度彼女とお茶を飲んで、他愛のない話で花を咲かせる日々に戻りたくて……)

 でももし、ディアナはここの方がいいと言ったら?

 もし彼女が、あの悪意に満ちた空間に戻りたくないと言ったら?


 そう考えると、目から涙が出そうになった。


「皇女様、ディアナ様を残虐な魔族から救いま――」

「ニャー」

 必死に呼びかけるメイリーの声を遮って、一匹の白猫が、いつのまにか隣まで来ていた。


「猫?さっきまでいなかったのに」

 メイリーは白猫に手を伸ばそうとしたけど、その猫はするりとかわした。


 私とメイリーの間を通り、壁際で足を止めた。

「迷っているのかい」

 男性の細く澄んだ声が響いた。

 信じがたいことに、その声は猫から発されたと感じた。


 次の瞬間、白猫は長身な男性へと姿を変わった。

 彼は国でもあまり見ない、純白で滑らかな長髪を一纏めにして靡かせていた。

 こっちに振り向くことで見えた琥珀の瞳は猫のようだった。

 彼は魔族とは違う、儚さを滲み出していた。


「あ、あなたはいったい、いつ、どこから」

 混乱しているメイリーは、途切れ途切れに問いかけた。

 でもその男性はメイリーを無視し、私と目を合わせた。

 

「片割れを助けたいのだろう。なぜ迷っているんだい」

 彼は柔らかく甘い声で、私に話かけた。

「なんであなたが――」

 ――私の片割れを知っているの?

 そう聞きたいのに、彼は私の話を遮った。


「僕が手伝ってあげようか」

 彼は体を屈め、私に顔を近づけた。

「手伝うって……?」

「僕が、君をディアナに会わせてあげる。僕ならできるよ」


 彼はあまりにも柔らかく微笑むから、強張り体から力が抜けていく。

「あなたは、いったい、何者?」

「僕は白の魔族と呼ばれてね。普通の魔族と違って、嗜虐心は強くないんだ。だから怖がる必要はないよ」


 白の魔族。

 そういえばどこかの文献で、神に近い存在は白を宿うと書かれた気がする。

 彼がそうなのだろうか。


 私はすっかり薄れた警戒心を捨て、彼を真っ直ぐ見上げた。

「お、お願い!私をディアナに会わせて!私は……ディアナと一緒にいたいの」


 彼は満足そうに微笑んだ。

「いいよ、連れでってあげる」

 彼の魔力が放たれた気配が感じた時、ずっと傍観していたメイリーは必死に彼に呼びかけた。

 

「わ、私も連れて行ってください!私には、ディアナ様を救う義務があります!」

「……いいよ。君もついでに連れでってあげる」

 彼は少し間を置いてから、メイリーに応答した。

 なんとなくだけど、メイリーを見る時の目がさっきより冷たく感じた。


 やがて地面に大きな魔法陣が浮かんだ。

 魔王の魔法陣とはいくら小さいけど、それでも強い魔力を感じた。


 次の瞬間、私は白モヤに包まれた。

 モヤが徐々に散っていき、ディアナが寝ているベッドが鮮明に見えてきた。

 部屋の中には、あの魔王の姿がいなかった。


「ディアナ!」

 私はすぐディアナの顔を覗き込んだ。


「……ん……ステラ……?」

 彼女の瞼は少し震え、やがてゆっくりと開かれた。

 その月のような銀色の瞳に、私が映んだ。

 それだけで、鼻がずんとなり、涙が込み上げてくる。

 

「っ!ディアナ!」

 私は思いっきりディアナに抱きついた。

 先まで体調があるかったからなのか、その体は少し冷たかった。


 それでも構わず、私は涙を滲ませながら、しばらくディアナを離すことが出来なかった。

 

「皇女様」

 後ろからメイリーの声が聞こえて、私はすぐはっと、ディアナを離した。

「っ!ごめんなさい、私ばかり喜んじゃって。メイリーもディアナに会いたかったよね――」


 ディアナの上半身を起こし、彼女の表情を覗く。

 彼女はメイリーを見ていた。

 目は大きく開き、顔を青ざめていた。


「……な、んで……」

「……お久しぶりですね、ディアナ様」


 メイリーはとても優しい笑顔を浮かべていた……その目の奥は、ギラギラと光っていた。

 ディアナは瞳と唇を振るわせ、恐ろしいものでも見ているかのように、メイリーを見つめていた。


 私はこの瞬間、自分が今まで誤解してたかもしれないと、気づいてしまった。

 

 どうして誰もディアナに近づこうとしない城の中で、ディアナはいつも戦々恐々としていたのか。

 どうしてディアナは、何かを食べる時に、必ずゆっくり噛んで確かめてから、飲み込むのか。

 どうしてディアナはどこかに座る前に、必ず手でその場所を確かめるのか。

 どうしてディアナは、頑なに私の前に、着替えようとしないのか。

 

 どうして父上は、王族の隠密部隊であるコウモリの1人を、ディアナの専属侍女にしたのか。


 私はある可能性に気づき、声を震わせながら、メイリーを睨んだ。


「メイリー、あなたは――」

「心から感謝いたします、ステラ皇女殿下」


 メイリーは私の言葉を遮り、不気味に微笑んだ

 

「あなたのおかげで私は、まだ親愛なるディアナ様(おもちゃ)に再会することができました」

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