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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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混乱に陥る魔王城、そして白猫の目的

《テオボロス目線》

 最近、魔族が続々と殺されていると聞き、俺とデビトはそのことを確認するために、魔王城から出た。


 「そこらへんの魔族から聞くに、5人ほどの人間が魔族を討伐しているらしいです」

 「……そうか」

 「どうしましょう?先に捕らえますか?」

 「……いや、必要ない」

 

 魔族が多く殺される分は問題ない。

 そもそも魔族は弱肉強食の世界、人間に殺されたのなら自業自得だ。


 「しかし5人がパーティーを組んで魔族の森に入り、魔族を殺せたということは、勇者の可能性もあると思われます」

 「勇者か……初めてになるな」


 俺が魔王になったのは100年ほど前、その時にはすでに『調和協定』が存在しているから、人間側から何かしてくることはなかった。

 我々も、特に人間に関わることはなかった。

 だからその5人が勇者パーティーというなら……対策が必要になるかもしれない。


 「デビト、お前は勇者にも会ったことがあるんだろう。知っていることを教えろ」

 「ええ。では魔王城で、対策するとしましょう」


 俺たちは転移魔法を使い、魔王城に帰った。


 魔王城の謁見室にたどり着いた瞬間、ディアナの召使いが青ざめた顔で走ってきて、跪いた。

 「っ、も、申し訳、ありません、魔王様」

 「……何があった?」

 嫌な予感がする。


 「ディアナ様が……連れ去られました」

 「……は?」


 体の奥の魔力が暴れまわり始める。

 それを抑えきれず、黒い何かになって、外に漏れていくのを感じる。


 「相手は誰だ」

 「っ……白い、猫がおりました……レオード様と同等の、魔力を感じました」

 召使いの彼は体を震わせ、頬から冷や汗が次々と流れ落ちた。


 「魔王様、少し抑えてください」

 「……」

 体の中で暴れている魔力を、蓋をするように、強引に抑え込む。

 

 「白い猫……白の魔族ですか、面倒ですね」

 「知ってるのか」

 「ええ。白の魔族は魔族の中でも謎に満ちた存在ですから。前代の魔王でも、白の魔族だけには、手も足も出ませんでした」

 何かを知っている様子のデビトに、さらに迫る。


 「そいつは強いのか?」

 「……いいえ。戦うこと自体はあまりしない奴らですが、彼らの能力がかなり面倒で」

 デビトにしては、珍しく言い淀んでいた。

 

 彼の次の言葉を聞き、俺はすぐに次の行動を取った。

 「レオード!」


 駄犬が魔法陣から出てきたのを確認すると、続けて言い放った。

 「ディアナが攫われた。ここにいる全員で探しに出る。特に駄犬、お前は匂いをたどれ。すぐにでも見つけ出せ!」


 ――――――――――――

《ディアナ目線》

 夢を見た。

 大きな月を背に、美しい女の人が崖の上で座っていた。

 彼女は悲しそうに、崖の下を見下ろした。

 「ああ、かわいそう。ごめんなさい、ごめんなさい」

 彼女は、謝罪の言葉を口にしていた。

 「あたしのせいだわ、ごめんなさい」

 彼女の目から一滴の涙がこぼれた。

 彼女はその涙を手で拭き、崖の下へ落とす。

 「愛しい子らにやすらぎを……あたしの、せめての贖罪を」


 そこで視界がぼやけていった。

 「あなたが、あの子らの救いになれますように」

 最後に、この一言が聞こえた気がした。


 徐々に意識が戻り、私は目を開ける。

 周りは暗く、洞窟の中にいるようだった。

 「こ、ここは……」

 「やっと、目を覚ましてくれた!」

 私をここまで連れて来た男の人が、ベッドの傍に座り、私の顔を覗き込んだ。


 「あなたは、確か……アイセルさん」

 「さん付けなんてよそよそしい、どうか僕のこと、ただのアイセルと呼んで」

 彼は目に熱を籠らせ、甘く笑いかけた。

 「……ここはどこですか?」

 「僕の今の住処だよ。ぜひ僕の女神を招きたいと思って、連れて来た」


 私は上半身を起こし、アイセルさんに視線を向ける。

 「どうして、私をここに?」

 「僕の女神を、魔王城のような野蛮な場所にいさせるわけにはいかないから」

 彼の目から悪意が感じ取れず、本当に善意で行動しているように感じる。


 「私を、魔王城に帰していただけますか?」

 長い間いないと、テオ様達が不機嫌になる気がする。

 それにテオ様は強い嗜虐心を抑えるために、私を傍に置いている。

 すぐにでも帰らないと。


 「……理解できない。女神もあの日でわかったんだろう。魔王城の魔族は、人間を発散の道具にし、暴れ回る野蛮な奴らだって」

 彼は心底不可解そうに首を傾げた。

 「あの日?やはりあなたは、闘技会の日にあった白猫さん?どうしてあんなこと?」

 「覚えてくれたんだね!」


 彼はすぐぱっと嬉しそうに笑った。

 「あの日は、僕と女神が出会った運命の日!僕は気まぐれに魔王城に入り、有象無象の魔族たちを眺めてやろうと思い、木の上に登った時!女神の美しい姿を見つけたんだ」

 うっとりした表情を浮かび、彼はあの日のことを語り出した。


 「一目で、僕は君の虜になったんだ。しかし君はかわいそうに、魔王城に閉じ込められている。ここは僕が救い出さなければと思い、あなたを闘技会まで導いたんだ。彼らの正体を知れば、君はきっと目を覚まして、彼らから離れようとすると思って……でも、君は彼らを捨てなかった」

 嬉しそうだった彼の顔は、少し暗くなった。


 「わかっている。女神は心が広いから、あの者たちから離れられないんだ。だから、僕が囚われた女神を救うんだ」

 彼は私の両手を強く掴んだ。


 「もう心配いらない。あなたを、二度とあそこに帰さないから」


 困った。

 話からして、彼は良かれと思って、私を連れだしたんだ。

 なら、簡単に帰してくれなさそうだ。

 

 「女神よ。僕と2人で、ここで暮らそう。大丈夫、誰も僕らを見つけることができない。魔王でさえも」

 彼の声はとても甘く、思わず聞き惚れそうだ。

 しかし、彼の言葉を聞き、私の心は不安で蝕まれていく。

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