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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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儚き白猫

 デビトさんに魔法について教えてもらってから、私は毎日セロくんと魔力操作の練習をしていた。

 「……行きます」

 「はい、いつでもどうぞ」


 私が緊張して息を飲んでいるのに対し、セロくんは優しい眼差しで私を見守っている。

 セロくんの手を握り、目を閉じる。

 体の中から暖かい何かを探る。


 感じ取れた瞬間、その何かを動かし、手に集中させる。

 セロくんに触れているところから、それを流し出す。


 「どう……ですか?」

 「微かですが、感じました」

 「良かった~」

 数日練習して、やっと少しずつ魔力を動かせるようになった。

 そのことに、思わずほっとする。


 「少し休んでから、もう一度やってみましょう。今度はもう少し多く流し込んでみましょう」

 「わかった、練習に付き合ってくれてありがとう」

 「いいえ。お役に立てて嬉しいです」


 セロくんはお茶ポットを取り出し、お茶を入れようとした。

 私が雑談でお茶が好きだって言ったら、彼はすぐ勉強してくれたらしい。

 出されたお茶は普通に美味しくて、セロくんの器用さに何とも驚かされる。


 「セロくん、今日は天気がいいので、外でお茶しませんか?」

 魔族の森は基本的に暗いけど、たまに太陽が差し込むから、その時は外に出たくなる。

 「かしこまりました」


 私達は部屋から庭に場所を移した。

 最近はテオ様と一緒にいることが多いけど、今日は珍しくどうしても魔王城から出ないとならない用事ができたらしい。

 デビトさんも一緒に出たらしいから、今日はセロくんだけ魔王城で留守番している。

 レオードさんは神出鬼没だから、いつの間にいることが多い。


 セロくんがお茶にお湯を入れ、ポットを温める。

 「セロくんも、一緒にお茶飲む?」

 「えっ!いいえ、僕は……」

 セロくんは目に見えるほど慌てていた。

 多分、従者として一緒に座っていいのか悩んでいるのだろう。


 「私、お茶しながら雑談するのが好きだったの」

 思わず、ステラとバルドと一緒にお茶会した日々を思い出す。

 あの時は、周りにどう見られるのかびくびくしてたけど、ステラ達と話せる一時は楽しかった。


 「……わかりました。お茶菓子も持ってきます。先にお茶を飲んでてください」

 セロくんはお茶を私の前に置き、魔王城まで早足で帰った。


 私はカップを持ち上げ、一口啜る。

 「やっぱり、セロくんはお茶を入れるの上手ね」

 心まであったまった気がする。


 「ニャー」

 横から猫の鳴き声が聞こえた。

 そこを見てみると、一匹の白猫がいつの間にか私の隣で座っていた。

 「あら、どこから来たの?」

 「ニャー」


 その子は体で私に擦り付け、膝の上に乗ってきた。

 「……撫でていい?」

 「ニャー~」

 まるで私の言葉が理解できるように鳴いた。

 私は恐る恐る、その子の頭に手を置く。

 レオードさん以外の動物に触るのは初めてだ。

 どうしても慎重になってしまった。


 「あなた……もしかして私の部屋に入ってきた猫?」


 闘技会の時、どこからともなく現れた白猫。

 私のチョーカーを咥えて去った。


 「グルグル」

 猫は気持ちよさそうに寝転がり、喉を鳴らす。


 「魔族の森にも、普通の動物がいるのかしら」

 狼さんはレオードさんだったから、ここにいる動物も魔族かなって思ってしまう。

 でも、この子はどこをどう見ても、普通の猫に見えてしまう。


 「でもあの時、壁をすり抜けて――」

 「ディアナ様!」


 セロくんは私の名前を叫びながら、走ってきた。

 セロくんの顔は、今まで見たことがないほど青ざめていた。

 白猫は私の膝から離れ、優雅にセロくんに向けて座り直した。

 次の瞬間、濃い霧が現れ、私とセロくんの間を遮った。


 「やれやれ、せっかく僕の女神と二人きりになれたのに、とんだお邪魔虫だ」

 「……えっ」

 どこからか、心地のいい澄んだ男性の声が聞こえてくる。


 あたりが霧に包まれ、どこから声が聞こえたのかわからない。

 そしたら白猫が地面に飛び降り、その姿は大きくなっていった。


 長く滑らかな白髪を、後ろで一纏め結び。

 目は琥珀の、猫を彷彿させるキャッツアイ。

 猫だったそれは、人型の男性に変化した。


 「女神よ、僕と行きましょう、2人しかいないところまで」

 彼は目を細め、柔らかい笑顔を浮かべながら、こちらに手を差し出す。

 「あ、なた、は?」

 「僕はアイセル。君を迎えに来たんだ」

 「迎え?」


 私が戸惑っているのを見て、彼は私を抱き上げる。

 「戸惑っているあなたも美しいけど、今は話している時間がない。魔王が戻ってくるまでにあなたを連れ去らなければ」

 また霧は濃くなり、いつの間にかテーブルすら見えなくなった。


 視界が白に染まり、アイセルと名乗った男はゆっくりと歩き出す。

 「待ってください!私は魔王城から離れるわけにはいかないのです」

 「大丈夫だよ、僕は愛しい君を傷つけない。魔王城なんて野蛮なところにいさせないからね」

 「何を言っているのですか。私を魔王城に戻して――」

 「んー、もっと君の声が聞きたいけど、今は少し眠っていて」


 彼は額を私の額に当てる。

 そしたら徐々に、意識が薄れていく。


 (寝ちゃ、ダメ……帰らないと……テオ様たちの元に……)


 せめてもの抵抗も虚しく、私の意識は完全に消え去った。

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