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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン
第二章~魔族 VS 勇者~

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魔法の勉強

 「では、今日から魔法の授業を始めましょう」

 今、私はデビトさんと向かい合って座っている。

 そして私の隣にはテオ様が座り、後ろにはセロくんが立っている。


 「えっと……テオ様とセロくんに付き合わせるのは申し訳ないのですが――」

 「自分の物が傷つかないように見張るのは主の務めだ」

 「僕はディアナ様の召使いですので、お傍にいることが務めです」


 2人とも、ずっとここで見守るつもりらしい。

 

 「では、魔法を教える前に、まずディアナ様の力を直接見せていただきたいと思います」

 「力を見せる……怪我している方がいませんが」

 「いなければ、作ればいい」


 作るとは?と聞く間もなく、テオ様は言葉を続けた。

 「――レオード」


 部屋の中央に大きな魔法陣が浮かび上がり、そこからレオードさんが現れた。

 「召喚により、参りました」


 テオ様はレオードさんを呼び出した。

 テオ様は相変わらず、嫌悪のこもった眼差しでレオードさんを睨んでいる。


 そして彼はどこから鞭を持ち出し、それをレオードさんに向かって振り上げる。

 「えっ、はっ!」

 レオードさんは間一髪に、それを避けた。


 「動くな、駄犬」

 「なんだこの状況!なんで俺が打たれなければならない!」

 「テ、テオ様!そこまでしなくても――」


 一生懸命テオ様を説得し、彼は渋々鞭をしまってくれた。

 それからレオードさんにも事情を説明した。


 「なんだ、そんなことか。少しくらいいいぜ」

 彼は自分の裾を捲し上げ、腕を私に差し出す。

 「ディアナになら、傷つけられてもいいぞ、むしろ少しゾクゾクす――」

 「では失礼」

 

 レオードさんが何かを話しているのを待たずに、デビトさんは横からナイフを差し出し、レオードさんの腕に浅い傷をつける。


 「おい、2番!何勝手なことを――」

 「では、ディアナ様。どうぞお触りください」

 「は、はあ……」


 心の中ではレオードさんに申し訳ないと思いつつ、私は傷口に軽く手を重ねる。

 すると淡い紫の光が放たれた。


 光が消えた頃に手を離すと、傷口から血が出なくなった。

 「なるほど、確かに光ってましたね。完全ではないですが、傷口が少し治っている。犬、痛みはどうですか?」

 「あんま痛くねえよ」

 レオードさんは拗ねた顔をしていた。


 「結構。観察するにディアナ様の力は人間の聖女と似た能力と仮定していいでしょう」

 「私が、聖女ですか?」

 「それは違います。聖女の力は魔族に効きませんので、似たようですが性質は違うでしょう」


 デビトさんはソファに座り直し、レオードさんはそのまま床に座り込む。

 「デビトさんは聖女についても詳しいのですか」

 「長く生きていますので、何回か会ったことはありますよ。聖力は空気中の瘴気を浄化し、状態異常を回復する効果を持っています。そして観察した限り、人間の回復機能を促進する効果もあるようですね。しかし魔族は根本的に人間の体のつくりとは異なるので、我々にとって聖女は何の価値も持ちません」


(デビトさんは、人間の私より聖女について知っているみたい)

 

 「まず、魔法の仕組みから説明しましょう。人間が習得する魔法と魔族が使う魔法は、性質上同じものですが、創出の過程に大きな違いがあります――」


 デビトさんの講義が始まり、私は魔法について、色々わかった。


 魔法とは、一時的にあらゆる事象を引き起こす技術である。

 引き起こす事象が持つ魔力によって、その規模と質が変わる。

 そして個人の適性によって、起こしやすい事象が存在する。

 魔族は生まれながら、魔力を使いこなし、息をするように魔法を使える。

 特に魔王であるテオ様は、魔力の多さ故に、基本的にどんな事象も引き起こせる。


 人間も魔力を持っているけど、成長するにつれて、使えなくなることが多い。

 それは魔力を使わずに成長すると、体が魔法を使う方法を忘れていくからとデビトさんが説明してくれた。

 だから優秀な魔法使いは幼い頃から魔法を学んでいる。

 後天的に学ぶこともできるけど、使いこなせるまでにかかる時間が多くなってしまう。

 また、人間が魔法を使う時、基本は魔力操作を学び、起こしたい事象について論理立てて分析することで、初めて使えるようになるらしい。


 「ディアナ様は後天的な学びになるので、ゆっくり学んでいきましょう」

 「はい!」


 デビトさんの話を聞いている間も、テオ様は私の髪をいじり、レオードさんはあくびをつきながら、私の足に寄りかかって寝ようとした。

 そんな自由な2人に構うことがなく、デビトさんは話を続けた。


 「では、魔法操作から始めましょう。ディアナ様、両手を出してください」

 デビトさんは私の両手を握りしめた。


 しばらくしたら暖かい何かが、手から体全体に流れていく感覚がした。

 「何か感じましたか?」

 「はい、暖かい何かを感じました」

 「良かったです。今、私はあなたに少しずつ魔力を流しています。あなたの最初の課題は、同じことを私にすることです」


 デビトさんは説明しながら、徐々に自分の指を私に絡めとる。

 「あの……デビトさん、魔法を流すのに、指を絡める必要は――」

 「いいえ、私がしたいだけです」


 彼はニコニコしながら、さらに指を絡める。

 そしたらテオ様から、横からデビトさんの手を叩き落とした。


 「もう見本は充分だろ」

 「いいじゃないですか。あなたもいつもしてるのでしょう」

 「お前はダメだ」


 テオ様がデビトさんと言い争っていると、セロくんが後ろから私に耳打ちする。

 「ディアナ様、練習は僕としましょう。僕は魔力が少ない方なので、手違いが起きる可能性が低いです」

 「そうなのですか?」

 「それはいい提案ですね」

 デビトさんが話に割り込んできた。


 「個人的許容量以上の魔力を流し込まれてしまうと、体に悪影響を及ぼすので。基本ディアナ様が我々に流し込むのですが、万が一を考えて、セロが相手のほうが良いでしょう。彼の魔力は人間並みなので、ディアナ様に悪影響を及ぼすことはないと思います」


 デビトさんはまたテオ様に向き直す。

 「ですので、万が一にも魔王様がディアナ様に魔力を流し込まないように」

 「……わかってる」


 テオ様はまだ、拗ねた顔を浮かべた。

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