太陽
アルカナによって生まれたものはアルカナ使いにしか見えないことをこれまでの戦いではっきり体感してきた。
だからあの雲は、本来、アルカナ使いにしか見えないはずのものだ。
それを潮は見ている。
つまり、もうあれがアルカナの枠に留まるものじゃないってこと。
間の悪いことにアルカナやヤミニストだけじゃなく、「地獄の窓」が開いた地獄の力が、空にまき散らされてしまっている。
それまで吸い込んでしまったからああなってしまったんじゃないだろうか?
もしかしたら、“世界”自体、予想していなかったことじゃないだろうか。
だって、あそこから新しい世界が生まれるとは思えない。
あれは底なしの闇で、何かを消し去るか呪うかしかできないものだと思う。
あんなもの、アルカナで制御できるものとは到底思えない。
少しざまあみろ、って思うけど、それどころじゃない。
「とにかく、マジキュアの力であそこまで行きましょう」
「ああ、そうだな」
「待ってました!」
「えっ?」
そう言って飛びだしてきたのは、ラビ太だった。
「もー、ひどいなー。僕のこと忘れてない?」
……ごめん。
存在自体、忘れてた。
「とんでもない敵が出てきたね。あれは、ヤミミスターの大首領・ジゴクバーンだよ」
「は?」
「間違いない。空間が破れてジゴクバーンに繋がってしまってる」
「どういうこと? ヤミミスターのボスはリ・ガじゃないの?」
「リ・ガは大幹部だよ。あれはやつらの力の源というか……闇の根源かな。人間が認識できる世界の誕生と同時に生まれた闇のみなもと……九千年前に光の戦士に封じ込められたはずだったのに……」
九千年……どこかで……
えっ?
待って。
待って。
だとしたら。
座王院コレクションの「地獄の窓」から覗き込んでいたあの目は、ヤミミスターの大首領の目ってこと?
人間が世界を認識したのが九千年前……ニムロドが塔から世界を見たから――
あれはその時に生まれた……?
どういうこと?
全部繋がってる……?
信じられない。
だったら、私が受け継いだ3つの力の、大本は一つということになる。
そんなことがあるだろうか?
でも、現実だ。
だったら、受け止めなきゃ、いけない。
「ジゴクバーンの本体を倒さない限り、あの闇は広がり続けるだろう。だから、ボクが力を貸すよ」
そう言ったラビ太の、体が光りだす。
蛍の光のような、肌に染み入る優しい輝き。
「何をするつもり?」
「ボクは光の妖精。だからその体をほどいて、光に還元する。それをキミたちにまとわせれば、あの闇の中でも動けると思う」
「ちょっと待て。そんなことしたらお前は死ぬんじゃないのか」
潮の言うとおりだ。
そんなこと、許せるわけがない。
「大丈夫。長い時間をかけて再生されるよ、きっと」
「きっとって……ちょっと待っ……」
「さよなら」
ラビ太の体が、ほどけた。
まるで十二単でも着ていたかのように、光の層になって消えていく。
「ああっ……」
それは光の帯になって、私と潮に巻き付いていった。
暖かい。
マジキュアの力は太陽の力。
その命を育む温かさが、私たちを包んでいる。
「ラビ太……ありがとう」
今、この街は闇に照らされている。
太陽の加護を持つ私たち以外は、みんな倒れて意識もないだろう。
待っていて、私たちが、また太陽の光を届けるから。
「ピュアフルパワー! フィーリング!!」
「ピュアフルパワー! フィーリング!!」
溢れる太陽の力を纏い、光の戦士が闇の中心核に飛び込んでいった。




