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ごちゃまぜヒーロー  作者: がっかり亭
ごちゃまぜヒロイン編
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56/59

愛の戦士マジキュア

 マジキュアダークは絶叫し、両手を放した。

 そして、拳を握り直してファイヤーの顔面に叩き込んだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 ファイヤーは頬に拳が突き刺さったまま、一気に前進した。

 その勢いに吹っ飛ばされるダーク。


「ダークネスハイエナジーチャージドパーティクルズ!!」

「マジカルハイエナジーチャージドパーティクルズ!!」


 距離が開いた瞬間、二人は同時にエネルギーを全開にした。


 燃え上がるは、命の輝き。

 太陽の戦士、マジファイヤー。


 吹き上がるは、死の呪い。

 暗黒の戦士、マジキュアダーク。


 真逆のベクトルが、ぶつかり合う。


「ダークネス崩拳!!!」

「マジカル崩拳!!!」


 拳が正面衝突し、正負の熱量が炸裂。

 膨大な余波がまき散らされた。


 闇の全エネルギーをつぎ込んだ一撃をまともに受けたマジファイヤーの肘から肩から血が噴き出す。

 だけど――


「うあああああああああああああああああああ!!!!」


 ファイヤーは止まらない。

 拳を更にえぐりこんで、腕をはじき飛ばす。


 そしてがら空きの胴体を抱きしめた。

 ロマンチックさの欠片もない抱擁。

 むしろ、それはベアハッグに近かった。


「マジカルサンフラウア!!」


 ファイヤーは足元にひまわりを生み出すと、それを蹴ってマジキュアダークごと飛び上がった。


「いい加減、もう目は覚めてんだろ!!」


 はるか上空まで打ち上がると、関節を極めるとエビ反りのように体をロックして、そのまま一気に地面に落下した。


「マジカルメテオバスターアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


 強烈な断熱圧縮で体が赤熱し、まさに隕石のように燃え上がる。

 そのまま、第一宇宙速度にも匹敵するスピードで地面に叩きつけられる。


「ガハアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 余りの衝撃に、落下地点の道路が消し飛び、四方八方のアスファルトがめくれ上がる。

 そうして生まれた巨大なクレーターの中央に、私は突き刺さっていた。


 マジキュアの攻撃は全て浄化のエネルギー。

 破壊力=浄化力。


 ぐうの音も出ないほど、私は浄化されていた。

 されてしまって、いた。


 もうマジキュアの姿ですらない。

 私は、その場に倒れこんだ。


「殺して……」


 正気に戻った私の願いは変わらなかった。


「なんでだ?」


 潮も、すでにマジキュアの姿ではない。


「……私は取り返せないことを……してしまったから」

「そんなもんはないさ」

「貴方には……わからないわ」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないぞ」

「誤魔化さないで……私は、ダメなの。貴方のように、ホンモノのマジキュアじゃなかった。深く考えもしないでヒーローの席に飛びついただけのミーハー……」


「違うな」


「え?」

「ヒーローってのは、そ(・)の(・)席(・)に(・)座(・)っ(・)た(・)や(・)つ(・)が(・)、そ(・)う(・)な(・)る(・)し(・)か(・)な(・)い(・)も(・)の(・)さ(・)。そこにホンモノもニセモノもない。真白は、マジキュアだよ」


 なぜか、その言葉は体の細胞じゅうに染み渡った。

 言葉に、言い知れない重さがあった。

 だからこそ、振り払う。


「……違う。違う。私がなりたかったのは……私を救ってくれたヒーローだったのよ。きっと。ずっと救われたいと思ってたんだ……あの地獄の焼野原で私を救ってくれたヒーローに……そのヒーローになることで、私を救いたかったんだ……! 最低だ! 私……!」

「そのヒーローっていうのが誰だかわからんが、そんな大層なもんじゃないと思うぜ? そいつだって俺たちみたいに悩んで、その中で真白を助けたのかもしれない」


 いいじゃないか、と潮は言う。


「……え?」

「ま(・)ず(・)自(・)分(・)を(・)救(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)え(・)ば(・)い(・)い(・)ん(・)だ(・)よ(・)。そ(・)し(・)た(・)ら(・)誰(・)か(・)を(・)救(・)う(・)余(・)裕(・)も(・)で(・)き(・)る(・)さ(・)」

「自分を……救ってもいい?」

「ああ、そうさ。もういいだろ。真白はがむしゃらに戦ってきたし、そのことで救われたやつだっていっぱいいる。それは認めても、いいんじゃないか?」

「……もう……!」


 なんで。

 なんでそんなに……


「優しすぎるよ……貴方……」

「ああ、愛の戦士マジキュアだからな」

「ははっ」


 笑ってしまった。

 そうなったら、もう私の負けだ。


 笑っちゃったら、仕方ない。

 全身から力が抜けていくのがわかる。


「暴れたし、すっきりしただろ?」

「……そうかもね」


 潮の差し出した手を掴んで起き上がる。


「じゃあ、残る問題は、アレだな」

「アレ?」

「ほらアレだよ。とんでもない闇のパワーが集まってる」


 潮が指さしたのは、空に浮かぶ雲の塊。

 それは、“世界”がアルカナの力で生み出したもの……のはずだった。


「なにあれ……」


 雲は、マジキュアダークのまき散らした闇を、ヤミニストの力すら巻き込んで肥大化していた。

 とんでもなく巨大な黒の領域が、空を食いちぎり始めている。


 あれは、形を持った暗黒だ。

 一つの街を丸ごと飲み込むくらいに肥大化した「地獄の窓」だ……!!

 人が触れてはいけないものだ。


 だというのに――


「行くだろ?」


 それをまた貴方があんまりにも簡単に言うものだから。


「そうね。私も、ヒーローだものね」


 行くしかない、か。

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