正体不明! 摩天楼に消えた宝石・2
さて、問題は。
あのビルにどう潜り込むかだけど。
実際に現地に来て、真下から見上げてみたんだけど、でかい。
東京に行ったことがない私の人生の中で一番巨大な建造物だ。
もし、怪盗なんてやってなかったとしたら、普通にミーハーに騒いでいたと思う。
長方形に長いビルは、周りに高層建築が全くないために、場違いなほどに目立っている。
窓には青空が反射して、それ自体が巨大なサファイアに見えた。
話を戻すと、問題なのは「周りに高層建築が全くない」という部分なのだ。
祭木美術館は最上階にあるため、もし他に高層建築物があったなら、そっちから飛び移れば侵入は容易だ。
でも、これじゃ幽玄七つ道具の叛逆の翼では侵入できない。
あれは滑空の能力しかないので、高い所から飛ばないと意味がないのだ。
「参ったな……」
「何が?」
無意識の呟きを拾われて、口から心臓が飛びだすかと思った。
振り向くと、そこにはシックな黒スーツを着て、胸元の白シャツを大胆に開いた少年がいた。
長い黒髪でも清潔感を感じさせるあたり、こんなピーキーな服を着こなせている。
「え、だ、誰?」
「ひっどいなあ……僕を忘れたの?」
「し、知らない」
こんなイタリアの伊達男みたいな恰好をする知り合いなんていない。
「やだなぁ、斜道倉見だよ。覚えてない? 真白ちゃんでしょ?」
「え?」
言われてみれば。
身長が急激に伸びてわからなかったけど、小学校のころ、家の隣に住んでいた子じゃないか。
「くらみん……?」
「あっはっはっ! 懐かしい呼び名だ。よく遊んだよね」
確かに、幼少期、いつも一緒に遊んでいたはずだ。
おかげでだいぶ男の子っぽい趣味になってしまった気がする。
「ずいぶん変わったように見えるけど……」
「ああ、中学は海外にいてね」
海外……
確か母子家庭で生活は苦しいって言ってた気がするけど、再婚とかだろうか。
「キミもスカイロウを見に来たの?」
「う、うん。ってことはくらみんも?」
「そうと言えばそうだね。正確には、僕の店がテナントに入ってるんだよ」
「え?」
店?
「ああ、説明をすっ飛ばしすぎたね。僕は海外でパティシエの資格とってさ、そこそこ有名になって日本にも支店ができたんだよ。S-AIDってお店。知らない?」
傍から聞いたら自慢にもほどがあるような内容だが、不思議と嫌な気はしなかった。
「聞いたこと……あるかも」
「今度おいでよ。招待するからさ」
「は、はは……考えとく」
あんまりにも現実感のない話に、頭が回らない。
考えてみれば、いまからこのビルにどうやって忍び込もうか考えている方が、よっぽど現実感がないんだけど。
そんな時に知り合いと会ってしまって考えがまとまらなくなってしまった。
私は、くらみんに適当に話を合わせると、その場を後にした。




