キラキラ☆彡 女子高潜入大決戦!・4
結局、潮と美人さんの謎は解けないまま、始業前の教室を急いで覗いて回った。
とりあえず、一般の教室に不自然な点はなし。
職員室はバレるとまずいので後回しにして、2階の美術室や音楽室を見てみることにしたんだけど……
「ビンゴ」
思わず声が漏れてしまう。
理科室のドアから、黒いモヤのようなものが這い出るように漏れ出していた。
火事の煙じゃない。
あれは、もっと上に上がる。
私には、これが火事の煙とは全く別のものだとはっかりわかる。
白黒市壊滅の際の大火災を、這いつくばって地面近くの酸素を吸って生き延びた私には。
「……突っ込むか?」
「まずは様子見」
窓を開けようとしたけど、開かない。
カギがかかっているというより、固定されている感触。
これはヤミニストの出現時によくある現象で、確か……現実停滞とかいうやつ。
停滞をもたらす闇の気が溢れ、疑似的に時間が止まったような状態になるヤミ空間特有の現象――
「こりゃ、とにかく行くしかねえな」
「そうね」
是非もないので、一呼吸してドアを開く。
意外に簡単に開いたけど、ヤミ空間の出入口は入る分には邪魔しない。
仮に開かなかったとしても力づくで開けるけどね。
中には、濃厚な闇の気配。
とはいえ、闇は下にたまるから、完全な漆黒というより、薄暗い程度。
中央に、ろうそくの炎がいくつか揺れていた。
その炎に照らされているのは、真っ黒なローブ姿の女生徒。
まるで漫画に出てくる魔法使いのような、いかにもにすぎる姿に、一瞬面食らう。
女生徒はこちらに気づき、ビン底眼鏡の奥から鋭い視線を向けてきた。
「……なに? 入部希望者?」
だみ声で、女生徒は言う。
ただその言葉の意味が、わからなかった。
「入部? どういう意味だ?」
「……なんだ。やっぱりそうか」
声が、さらに一段トーンが落ちる。まるで呪いの言葉のように。
「そうヨ……あいつらは、あなたたちの友達じゃないノ」
突然、女生徒の背後に人影が現れた。
顔面まで含めた全身を左右で白黒に塗り分けている長身に麦わら帽でワンピース姿の女――
私たちは、こいつを知っている!!
「ヤミミスター!!」
ヤミニストを生み出す元凶たる組織ヤミミスター!
こいつはその幹部・デキリコ!!
「あなたノ孤独は、ずっと癒えないノ。誰も黒魔術部になんか入らないんだカラ……」
「耳を貸しちゃだめ!」
ヤミミスターの囁きは、追い詰められた人の心をヤミニストへ変えてしまう!
デキリコの言葉に合わせて、ただのスライムが人型に盛り上がっていく。
「友達のいないアナタはこう思ったデショ? 学校なんかなくなればいい。月曜なんて来なければいいって」
「そう……月曜なんて……月曜なんて来なければいい!!」
「だめ……っ!!」
瞬間、彼女の周囲のろうそくの炎が、吹き上がり、そのまま周囲の闇とまじりあって、赤と黒のスライムに姿を変えた。
そして、ローブの女生徒を包み込むように、スライムが覆いかぶさり、一気に膨れ上がった。
「生まれるノ、ヤミニスト・コドクロマジュツ!!」
それは小屋ほどの大きさに膨れ上がると、ぬいぐるみでできた魔法使いとでもいうような姿になった。
その巨体は天井に届くどころか、上半身をくの字に折り曲げてやっと室内に収まっている。
巨大な洋服ボタンの目が輝き、雑に縫われた口を大きく開いて叫び声を上げた。
『シューキューナノカァァァァ!!』
闇のオーラが噴き出し、あっという間に学校を飲み込んだ。
ヤミ空間の現実停滞が拡散したのだ。
「くっ……!」
濃厚な闇の大気が、全身にまとわりついて思考を奪っていく。
こうなると、太陽の加護を持つ日曜の使者・マジキュアしか動けない。
私たちは変身前でもその加護のおかげで動けるが、今ごろ生徒たちは石像のように固まっているだろう。
「……許せない」
マジカルホルンを上着のポケットから引き抜く。
「行くよ! 潮!」
「……お、おう!」
「ピュアフルパワー! フィーリング!!」
二人で向かい合い、掌を重ねると温かい光が降り注いだ。
この光は、天井があっても関係なく、天からもたらされる祝福。
光はドレスとなって私たちを包む。
溢れんばかりの太陽のエナジーを全身にまとい、それを拳に込める。
「拳闘魔法少女マジキュア!! マジホワイト!!」
「同じく? マジファイヤー!」
自然と私が太極拳のような円、潮が八極拳を思わせる拳を突き出した直線の構えをとる。
二人の体を通して放たれる太陽の輝きが、相乗効果でよりその輝度を上げていく。
これが、単体ではなく二人で戦うべき理由。
私たちの力は独りではそう大きくない。
だけど、二人分の光の力は、2倍どころかその何倍もの威力になる!




