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ごちゃまぜヒーロー  作者: がっかり亭
ごちゃまぜヒロイン編
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34/59

選ばれすぎし者・後

 ……そう、とにかく、私は今3つのヒーローを兼任している。

 それぞれの関係者にバレようものなら、一つに集中しろ、なんて言い出すに決まっている。


 だから、私は誰にもそのことを言っていない。

 “愚者”もラビ太も安康狐も、さほど干渉してこないからバッティングはいまのところ大丈夫。


 ああ、もちろん、一般人に正体をバラすのはもってのほか。

 どれも露見した時点で、力が没収されるって話だった。


 ……正義を守るために、そんなことになったら困る。


 細心の注意を払わないと……って、今はそんな場合じゃなかった。

 アルカナ使いが近くに来ているのだ。


 周囲の気配に感覚を研ぎ澄ませて今は動きを待つ。

 窓の外から見える電柱の上と“愚者”は言っていたけど、そこには朝日があるだけで、敵の姿はない。

 太陽の光の中に隠れているのか、全く動きがない。


 しばらくして、“愚者”は大げさにため息をついた。


「……おっと、アルカナ使いは逃げたみたいだね。ただの偵察だったようだ」

「そう」


 どこか、物足りなさを感じつつ。


「じゃあ、またね」


 笑う“道化師”の顔は、どうにも好きになれない。

 上手く言葉にできないけれど、胸の奥がモヤモヤする。

 すぐに消えてくれて、正直助かった。


 そう感じている自分自身が不思議だった。

 ……こんなにイヤなことを考える人間だったっけ……?


「ふぅ……」


 一息をついて、スマートデッキからカードを抜いて変身を解く。

 自室の中だから、そう気負うこともない。


 ……でも少し気になるのは、寮や学校の近くでアルカナ使いの反応があったってこと。

 ……まさか、学校の生徒ってことはないと思うけど……。

 実際、“隠者”は中年男性だった。


 考えすぎだろう。

 でも、どこかいてもたってもいられず、早朝から寮を出てきてしまった。

 体操服を適当に着てきたけど、まぁこれなら人が見ても朝練だと思うでしょ。


「え?」


 寮の前の道路で、私は意外な人物に出会った。

 真っ赤なジャケットを着た、青年。


「……なぜあなたがこんなところにいるの?」

「おい、普通はまず挨拶だろ」


 げんなりした顔でそう答えたのは、赤井潮。


「そ、そうね。ごめんなさい」


 彼の言うとおりだ。

 転生者が近くにいたからと言って、彼だけはありえない。


 だって――


「それで、あなたがここに来たってことは、アレの件?」

「え? たまたまこの辺りの波動関数……い、いや、なんでもない」

「……?」


 彼はときどき、わけのわからないことを言う。

 大学生だって聞いたけど、まだ中二病が抜けてないんだと思う。


「まぁ、とにかくマジキュアとは無関係だよ」


 言い忘れていたけど、彼はマジキュアの関係者だ。

 もっと正確に言えば、マ(・)ジ(・)キ(・)ュ(・)ア(・)の(・)一(・)人(・)。


 ……魔法少女なのに、なんで青年がやっているのかは、本当に謎。

 ラビ太は適合率が異常に高かったとかなんとか言っていたけど、ともあれ、彼は変身すると中性的な見た目の魔法少女、マ(・)ジ(・)フ(・)ァ(・)イ(・)ヤ(・)ー(・)に(・)変(・)身(・)す(・)る(・)、私(・)の(・)相(・)棒(・)だ(・)。


 どんな敵にも臆することない、頼りになる相棒なんだけど……


「外で軽々しくその名前を出さないで」

「す、すまん。つい……」

「ついじゃありません。死ぬわけじゃないにせよ、大変なことになるんですよ?」

「あ、ああ。死なないだけマシ……いや、ごめんごめん」


 どうにも、軽い気がする……。

 年上だけど、この人の責任感の薄さは気になってしょうがない。

 正義のヒーローの力を預かっている自覚をもっと持ってほしい。


 私だって3つも掛け持ちしてる中、頑張ってるんだから、彼にも頑張ってもらわなくちゃ……


「……もういいです。ところでこの辺りで他に人は見ませんでした?」

「ん? いや、いなかったぞ。500メートル四方、どんな物音もしてなかったし」

「どういう耳よ……冗談はいいから」


 こういう悪ふざけは、私を子どもだと思ってるんだろうな……もう。


「とにかくいなかったのね?」

「ああ。絶対に間違いない」


 その自信はどこから来るの……?


「っていうか何かあったのか? 例えばこう、黒タイツの集団が怪しい儀式をしてるとか」

「そんなわけないでしょ。……不審者に注意しろって先生が言ってたらちょっと聞いてみただけ」

「そ、そうか。まぁ、変なヤツ見かけたらオレに言ってくれ」

「それで言えば寮の前にいるあなたということになるけど」

「て、手厳しいな」


 そのしょんぼりした顔は、嫌いじゃなかった。


「ふふっ……」


 思わず、笑ってしまう。

 何にせよ、彼がアルカナ使いなんてことはないだろう。


 だってそうだとすると、彼(・)は(・)マ(・)ジ(・)キ(・)ュ(・)ア(・)と(・)ア(・)ル(・)カ(・)ナ(・)使(・)い(・)の(・)2(・)つ(・)の(・)力(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)こ(・)と(・)に(・)な(・)る(・)。

 私に3つ力が集まったのだって奇跡的だと思う。

 そんな偶然、そうポンポン有り得ないでしょう。


「……とにかく、あなたもヒーローとしての自覚をもってくださいね。あの、ギガントマン様を見習って」


「お、おう……」


 この生返事。

 ほんとに、自覚が足りないんだから……!

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