アルカナコレクター・2
「ようこそ、“アルカナコレクター・カディンギル”!!」
加えてどこからか“愚者”の声と拍手が響いてきた。
“愚者”の姿は、もう見えない。
瞬間、モノクロの世界を、胸から溢れ出した色が彩った。
セーラー服の青が翻り、その背中側に広がる襟がまるで気流を生み出したかのように、私の体は舞い上がった。
そこに飛んできた剣が世界を切り裂き、この手の中に収まる。
気づくと、元の世界、公園のそばに私はいた。
正確には、その上空まで飛び上がっていたのだ。
真下では、あのトラックが通過していた。
きっと、轢かれたと思った瞬間、私はあの世界に飛ばされ、全く時間が経過していなかったんだと思う。
そして無意識に舞い上がったことで、トラックを飛び越えたのだ。
眼下に、止まったトラックから運転手が出てきたのが見えた。
どうやら、私をハネたと思ったらしい。
きょろきょろとトラックの周りを調べ、何もないのを確認して去っていった。
「良かった……のかな?」
そのまま、ゆっくり滑空して地上に降りていく。
その中でもはっきり感じるのは、全身に満ち溢れる鋭さ。
腕を振れば、たやすく空気を切り裂くスピードを生み出せるだろう。
あまりにも急な出来事だったけど、これが私が初めてカディンギルになった瞬間だった。
「おっとすまない」
「!?」
腰のあたりから声がして、ギョッとする。
慌てて腰を見るとスマートデッキがホルダーに収納されていて、そこから投影された“愚者”が喋っていたのだ。
「さっき相手は近くにいないと言ったが、どうやら違ったらしい」
「は?」
「“隠者”のアルカナ使いエテメンアンキだ。“隠者”の気配はほとんど掴めない」
「ちょ、ちょっと、じゃあどうすれば」
「ボクは基本的には中立だよ。さすがに成りたてのキミが不意打ちされるはフェアじゃないから、サービスで教えてあげただけ。あとは自分で頑張りなよ」
言うやいなや、“愚者”は消えてしまった。
エテメンアンキとの戦いは、正直詳しくは語りたくない。
結論から言えば、私は勝った。
彼は、私をアルカナ使いに成りたてだと侮っていた……。
でも、マジキュアとしてすでにいくつも死闘を超えてきた経験は、相手のそれを上回っていたんだ。
……だから、追い詰められた彼は卑怯な手ばかり使ってきた。
命こそ奪っていないけど、彼はもう表舞台には戻ってこれないと思う。
卑劣な彼に、ふさわしい報いだと今でも思っているけれど、気持ちは良くない。
……とにかく。
私は、すっきりしない気持ちのまま、寮に戻ることにした。




