トラック(転生ではない)
こうして、マジキュアとなった私は、ヤミニストと戦った。
ヤミニストは、負の想念から生まれる。
それは存在するだけで周囲の人を極度に落ち込ませ、動けない状態にしてしまう上に、破壊活動まで行う。
特徴としては、人々が月曜に向かいたくないという想念によって、日曜に生み出される事が多いこと。
現代人……疲れてるんだなあ。
今日も今日とて、日曜の早朝から近所の公園で、パワハラから生み出されたヤミニスト・パワハラーと戦った。
ヤミニストは基本的には真っ黒なスライムのような姿ながら、基になる想念、つまり「人の心の闇」によって姿が変わる。
パワハラーは、ふんぞりかえった権力者を模していて、ディテールはないけれど逆三角形の人型だった。
そのバランスの悪い体形のせいか頭にパンチを当てたら、ひっくり返るように地面に叩きつけられ、すぐに倒すことができた。
自分でも驚くほどのパワーが全身から拳へ伝わっていたこともある。
さすが、拳闘魔法少女……。
マジキュアの五体には浄化の力が備わっているので、攻撃することがそのまま浄化になる。
心の闇は光の粒子となって消えてゆき、人々にも笑顔がもどっていく。
だから、パワハラーを倒した私も、笑顔だった。
マジキュアとして戦うようになってから、これまでに感じたことのない充足感を覚える。
なんだか、欠けていたピースが埋まったような……そんな感じ。
その高揚感で、私は完全に油断していた。
信号が赤になっているのも気づかず、公園前の横断歩道に踏み出してしまっていたのだ。
次の瞬間、大型トラックが突っ込んできているのが見えた。
もちろん、変身はとっくに解いている。
ああ、死んだな。
痛くないと、いいけれど。
そのときはひどく冷静にそう思い、目を閉じていた。




