燃えてヒーロー・5
ヱゐモセズは、首都まで既に迫っていた。
人の多いところは即ち公害が集中している箇所。
奴にとっては格好の餌場だった。
有害物質を吸収しながら、用済みの土地をマグマで焼き払っていく。
東京まで続く炎の道。
首都が、炎に包まれている。
指をくわえていたら、ここは灰と化す。
無論、指をくわえているつもりなんてない。
その災禍の中心へ、ヒリュウが飛ぶ。
ゴリュウロボを構成する五機の龍が直列に合体したそれは、日本や中国の龍を思わせる長い胴体を持ち、ゴリュウジャーの持つ最高速の機体だ。
音速を優に超えるそれは、光の矢となって大魔獣に接近する。
『プルルル……!』
あと1㎞といったところでこちらに気づいたヱゐモセズは、唸りを上げてマグマの塊を次々吐き出し
た。
まるで炎の雨である。
しかし――
「バカが! オレの操縦ナメんな!」
アオイが恐るべきハンドルさばきで火球の群れを回避していく。
こいつは元F1レーサーで、とんでもない動体視力と反射神経を持ち、その操縦テクニックは世界一だ。
炎をかいくぐり、ヱゐモセズに肉迫する。
そしてかわしきれないような炎を――
「それそれっ!」
エニシが機銃で次々と撃ち落していく。
こいつはこいつでシューティングゲームの世界王者だ。
「こんな難易度じゃ、いまどき売れないよ、と」
すももは動くだけでも相当に苦しいだろう大怪我を負いながらも、その豊富な機械知識で内燃機関が焼けつかないように上手くエネルギーをコントロールしているし、そもそもヒリュウの飛行プログラムを組んだのは天才プログラマーのチャンドラだ。
ギガントマンの力を使ってすら近づけなかったヱゐモセズにどんどん迫っていく。
ヒリュウの操縦席には、レッドを一番奥として、ブルーとピンク、イエローとグリーンの席が扇型に配置されている。
仲間たちの背中を見ながら、強く強く思う。
ああ、オレはなんて頼りになる仲間を持っていたんだろう。
いや、何でこいつらが居る事を忘れていたのだろう。
何でこいつらをオレは信じられていなかったんだろう、と。
そうなんだ。
誰より仲間を信じられていなかったのはオレだ。
自分に与えられた強大な力だけしか見ていなかった。
それでも、そんなオレをこうしてみんな信じて一緒に戦ってくれる。
なら、オレはその信頼に応える時だ。
「みんな、オレを信じてくれるなら……この戦いが終わるまで絶対に振り向かないでくれ」
返事は、要らなかった。
四つの腕が、親指を立てて上がる。
――変身!
心の中で呟くと、オレの体は光の粒子となり、ヒリュウの天井を抜けてその背の上に降り立つ。
そう、ギガントマンが、ヒリュウの背に立ったのだ。
まるでサーフィンボードに乗るように前傾姿勢を取る。
そんなオレの動きを知っているかのように、ヒリュウが頭を下げ加速する。
もう、二〇〇メートルほどの距離まで接近していた。
『プルルル!』
それが気に食わないのかマグマ弾をまき散らすヱゐモセズ。
だが、無駄だ。
仮面ホッパーのライディングテクニックと、アオイの操縦テクニックが完全にシンクロし、マグマの弾などかすりもしない。
『プルルォアアアアア!!』
しびれを切らし、膨大なエネルギーの波動を放つヱゐモセズ。
それは波となって広がり、いかな操縦技術をもっても回避不能な壁となって押し寄せた。
「だからバカって言ったろ怪獣野郎」
そんなアオイの声が聞こえた気がした。
ヒリュウの背が、まるでトランポリンのようにたわみ、そのままギガントマンを宙に打ち上げていた。
しかしヒリュウはまともにエネルギー波をくらい、吹っ飛ばされる。
だが、おかげでオレはそのエネルギー波を飛び越え、ヱゐモセズの頭上に迫っていた。
『プルルル!!』
泡を食ったヱゐモセズが特大の火球を直上に放つ。
東京ドームなど丸ごと収まるほどの巨大なマグマの塊が、オレ目がけて飛んでくる。
少々のマグマ弾などこの落下速度には無意味と判断したか。
――上等だ!
今更そんなものに、負けてたまるか!
『デェアアアアアアアアアアアア!!』
オレはキックの体勢を取った。
そう、それは仮面ホッパー、三十八の必殺技の一つ!
――ホッパースクリューボルト!!
風と重力を味方にし、猛烈な回転で相手を貫く必殺技だ!
『デアアアアアアアアアアア!!』
『プル……ッ』
『エアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
巨大なマグマ弾をぶち抜き、そのままキックがヱゐモセズの腹に突き刺さる。
それでも回転は止まらない。
鏡のように光る表皮を抉り割り、体ごと背中へ突き抜ける。
そしてそのズタズタの体目がけ、
『シェアッ!』
アンチナトリウム光線が炸裂した――




